(本記事は、安東隆司氏の著書『元メガバンク・外資系プライベートバンカーが教える お金を増やすなら この1本から始めなさい』ダイヤモンド社の中から一部を抜粋・編集しています)

「まともな」ファンドラップを見分ける方法

見分ける
(画像=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

●フィーベース型でも注意が必要な場合も

従来の販売者はノルマを達成しようとしてきました。「高い手数料」、「頻繁な売買手数料」(これらをコミッションといいます)を受け取ることで収益を勤務先にもたらすように動いてきたのです。

しかし、今や世界的な動きは「フィーベース型」に移ってきています。フィーベース型というのは。例えば、「お客様の契約資産額×報酬率」で報酬を計算するのです。ファンドラップは、残高に対して信託報酬を受け取る、フィーベース型です。

どういうことかというと、ファンドラップの運用が成功すると、お客様の財産が増加します。お客様の契約資産額×報酬率というフィーベースで金融機関が報酬を受け取るので、「ファンドラップの運用成功」=金融機関の報酬も増加、という形になるのです。

投資家の運用の成功によって、運用者の報酬が増えるフィーベース型は、顧客と運用者の目指す方向が、資産増加ということで一致しています。利益相反が少なくお客様目線=「顧客本位」の業務運営を行うことができる可能性があると言えるでしょう。しかし、注意して欲しいことがあるのです。

●ラップ・フィー+信託報酬で合計2%以上は高すぎる

乗り換え手数料がなくても、お客様が高いコストを負担するのであれば、運用で成功する確率を下げることになります。フィーベース型では、以前の「乗り換え」による販売手数料はなくなったのかもしれません。

しかし、有名な俳優を使ってのコマーシャルで有名な某大手証券のファンドラップの実質コストは年率2.5%強でした。10年運用した場合にはなんと25%以上のコストを払うのです。

金融庁が出した2017年10月「平成28事務年度金融レポート」によると、主要大手証券(5社)の主なファンドラップ(11コース)の平均手数料(加重平均)は、なんと2.2%。つまり10年で平均22%のコストを支払わされることになります。

なぜ、このセールストークに乗ってバランス型を買ってはいけないのか?

●金融機関が「バランス型」をセールスするカラクリ

「日本債券」が多くコストが高い「バランス型ファンド」に投資をしてしまうと、日本債券部分の運用がマイナスになってしまうという事例についてお話ししました。

復習ですが、バランス型ファンドというのは、株式・債券だけでなく、商品によっては、不動産投資信託など、ほかの商品が入っている投資信託です。ですから、一口にバランス型といっても千差万別。それぞれのファンドの投資対象をちゃんと確認すべきです。

さて、ここでは、金融機関の「バランス型ファンド」のセールストークの裏の カラクリについて、ご説明しましょう。

投資の初心者が、バランス型のファンドを選んだのは、次の理由が多いのではないでしょうか。

・分散投資で複数の資産クラスへの投資が有効だと言われた(書いてあった)
・リスクはあまり取りたくない人向けとされている
・わからないなら、「バランス型がおすすめ」と言われた(書いてあった)

ひとつの資産カテゴリーに集中した商品セールスは金融機関としては危険です。そのカテゴリーの価格が下がった場合には、すすめた理由を問われるからです。また企業向け無料運用研修を頻繁に開催することは通常ありません。お客様への定期的なフォローが行える体制ではないともいえるでしょう。

すると金融機関にとって無難な商品セールスは株式と債券が入っているバランス型ファンドです。大きく儲かることはまず見込めないけれど、大きく損をしない「無難な」商品を選んでもらうのが良いと判断するため、この商品をおすすめすることになります。

・ランキングで良く選ばれているのがバランス型だった

金融機関が熱心にすすめる商品が「手数料の高いバランス型」で、金融機関が儲かる商品だった、という理由は考えられないでしょうか?

そして、金融機関が「売りたい」と思って、セールスにチカラを注いだ結果、その商品のセールスが伸び、売れている商品として上位にランクされるのです

そのランキングの記事や表示は、中立な立場で書かれたものでしょうか?

「売れ筋ランキング」などを表示することで、さらにその商品の販売を広げるための宣伝にもなるのです。

そして、最近多いのが、確定拠出年金での選択です。

・勤務先の確定拠出年金のセミナーで最初に取り上げられていた

勤務先で確定拠出年金の制度を導入している大きな企業も多いでしょう。企業型の確定拠出年金は、投資信託や保険、預金など、金融商品を自分で選んで運用する仕組みです。

大企業の場合でいえば少なくとも1年に1回ぐらいは従業員に向けて、会社の福利厚生制度についての説明が必要になります。この説明を担当しなければいけないのは、人事部や総務部といった部署でしょう。しかし、普通に考えて「社内に年金制度や運用商品の解説をできるプロがいる」ことは通常ありません。年金制度の説明や、運用商品の解説をするべく、その会社に入った人などいないでしょう。たまたま現在が、人事や総務の担当なのです。

するとどうなるのでしょうか。

「取引のある金融機関が研修をしてくれているから、今年もお願いしよう」

そして、今までに研修の実績がない場合には、

「取引のある金融機関が年金制度の研修講師をタダで引き受けてくれると言っていたな」

と考えることは普通です。

●「タダ」で年金制度の研修を引き受ける目的は?

金融機関は慈善事業で年金制度の研修を引き受けているのでしょうか?そんなことはありませんね。

「できれば、収益性が高い(つまり手数料が高い)商品をたくさん買ってもらいたい」、これが金融機関のホンネなのです。タダで研修を引き受け、金融機関にとって儲かる商品セールスにチカラを入れるのが狙いなのです。

ですからセミナーで最初に取り上げられていた商品がアナタのためになる商品だとは限りません。

しつこいようですが、もう一度言います。セールストークによって、安易にバランス型を選んではいけません。購入する前には必ずコストの確認をしてください。金融機関としては、大きく損しない、手数料の高いバランス型ファンドを選んで欲しい、がホンネだからです

元メガバンク・外資系プライベートバンカーが教える お金を増やすなら この1本から始めなさい
安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN おカネ学株式会社 代表取締役。CFP、日経CNBCなどTVコメンテーター、海外ETF専門家、立教セカンドステージ大学講師。三菱UFJ銀行で17年、三菱UFJメリルリンチPB証券(出向)、ソシエテ・ジェネラル信託銀行勤務という、メガバンク、外資系証券・信託銀行で約26年の勤務を経験。その後半はプライベートバンカーを務め金融商品の運用について熟知。販売手数料(コミッション)を目的にしない、世界的潮流である「預かり資産管理」(フィーベース)のビジネス(RIA)を行う、独立系・投資助言業(内閣総理大臣登録)を2015年立ち上げる。著書に『個人型確定拠出年金iDeCoプロの運用教えてあげる!』(秀和システム)など。

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