総務省が発表した「高齢社会白書」 (2019年版) 内で示されたデータによると、60~64歳の男性の就業率は81.1%、女性の就業率は56.8%となっている。「人生100年時代」と言われるようになり、定年後の第二の人生は着実に長さを増すことになる。年金を受け取るまでの期間、今まで通り働くことを考えるシニア世代の数は今後も増えていくと予想される。

しかし定年後に引き続き同じ会社で再雇用されたとしても多くの場合、給与は減少するだろう。かといって定年後に一度退職し、失業保険 (雇用保険の基本手当:以下、基本手当) を受け取りながら、じっくり転職先を探そうと考えていても定年前と同等の条件の職場が見つかるとも限らない。

60歳以降に給与が減少した場合に備えて知っておきたい「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」について解説しよう。

高年齢雇用継続基本給付金とは ?

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(画像=PIXTA)

高年齢雇用継続基本給付金とは、基本手当を受け取らず定年後も労働を続ける65歳未満の人を対象に、60歳時点に比べ賃金が75%未満に低下した場合に支給される給付金である。同じ会社に引き続き雇用される場合だけでなく、退職後すぐ別会社に就職した場合も、基本手当を受け取っていなければ支給の対象となる。支給される期間は60歳になった月から65歳になる月までだ。

●【支給額の求め方】

支給額は、賃金の低下率に応じて次の計算式で求める。

低下率= (支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時点の給与) ×100

イ) 61%以下の場合:支給対象月に支払われた賃金額×15%
ロ) 61%超75%未満: (-183÷280) ×支給対象月に支払われた賃金額+ (137.25÷280) ×賃金月額 ※
 ※原則、60歳に到達する前6ヶ月間の平均賃金

●【支給上限額と最低限度額】

支給額には支給上限額と最低限度額が設定されており、それぞれ次の通り (令和元年8月1日時点) 。なお、支給限度額は毎年8月1日に変更される。

支給上限額
・支給対象月に支払われた賃金が36万3,359円以上の場合には給付されない
・支給対象月に支払われた賃金額と算定された給付金の合計額が36万3,359円を超える場合、36万3,359円からその賃金を差し引いた金額が給付される

最低限度額
・算定された支給額が2,000円以下である場合には支給されない

●【60歳到達時の賃金月額の上限額、下限額】

60歳到達時の賃金月額にも上限額と下限額が設定されている (令和元年8月1日時点) 。こちらも同様に、支給限度額は毎年8月1日に変更される。

・上限額:47万6,000円
・下限額:7万5,000円

60歳到達時に上限額を上回る給与を貰っていた場合は、上限額が60歳到達時の給与として、逆に下限額を下回る場合は、下限額が60歳到達時の給与として計算される。

支給額の計算例

60歳到達時の給与が30万円だった場合の高年齢雇用継続基本給付金の額を、いくつかの例で見てみよう。

(例1) 支給対象月に支払われた賃金額が26万円の場合
【低下率=80%】75%を上回っているので支給されない。

(例2) 支給対象月に支払われた賃金額が20万円の場合
【低下率=66.67%】75%を下回っているので支給される。支給額は1万6,340円。

(例3) 支給対象月に支払われた賃金額が18万円の場合
【低下率=60%】61%を下回っているので支給される。支給額は2万7,000円。

(例4) 支給対象月に支払われた賃金額が8,000円の場合
【低下率=97.33%】75%を大きく下回っている。計算上は支給額1,200円だが、最低限度額2,000円 (2019年8月時点) に達していないため、支給されない。

高年齢再就職給付金とは ?

高年齢再就職給付金の支給対象者は、基本手当を受給した後、再就職した人を対象に支払われる給付金のこと。支給要件は基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となっている必要がある。その他、以下の要件がある。

・再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
・1年を超えて雇用されることが確実と認められる、安定した職業に就いている
・再就職の際に再就職手当の支給を受けていない

支給期間は、基本手当の支給残日数によって変わる。残日数が200日以上の時は、再就職の翌日から2年を経過する日の属する月までとなり、100日以上200日未満の時は同様に1年となる。この期間にかかわらず、65歳になると支給はその月までとなる。金額の算定などは高年齢雇用継続基本給付金と同様である。

再雇用時の給与については、これらの給付金も含めて考えたいが、どちらの給付金も雇用保険の加入期間が通算5年以上必要だ。その間1年以上の空白があった場合には、支給対象とならないことも覚えておきたい。(提供:大和ネクスト銀行


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