結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想を下回る

米国,個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

2月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.6%(前月改定値:+0.1%)となり、+0.2%から下方修正された前月を上回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%も上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%)と、こちらは+0.3%から上方修正された前月、市場予想(+0.3%)を下回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月:+0.1%)と、こちらは前月に一致した一方、市場予想(+0.2%)は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は7.9%(前月:7.5%)と、前月から+0.4%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.2%)を下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も前月比+0.1%(前月:+0.2%)と前月、市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.7%(前月値改定値:+1.5%)と+1.6%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+1.8%)は下回った。コア指数も+1.6%(前月値改訂値:+1.5%)とこちらも+1.6%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+1.7%)は下回った(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:個人所得は堅調も、個人消費は冴えない結果

個人所得(前月比)が19年2月(+0.6%)以来、可処分所得(同)では18年12月(+1.0%)以来の水準に加速した一方、個人消費(同)は19年10月(+0.2%)以来の水準に低下した。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

この結果、貯蓄率が7.9%と19年4月(8.0%)以来の水準に上昇するなど、1月は所得対比で消費が冴えない状況となった。

一方、2月以降世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。米国でもサービス業の企業景況感悪化や、株式市場の大幅下落がみられており、消費マインドの悪化が懸念される。また、感染が長期化することで物流が滞ることも懸念されており、新型コロナウイルスの感染拡大が消費に与える影響が注目される。

FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、前月から小幅ながら伸びが加速したものの、依然として18年11月以降は物価目標の2%を下回る状況が持続している。また、物価の基調を示すコア指数は、19年2月以降概ね+1.5%~+1.7%のレンジに収まっており、インフレの加速はみられない。

財所得動向:賃金・給与や移転所得の伸びが加速

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.2%)と19年10月(+0.5%)以来の伸びに加速した(図表2)。また、政府による社会保障関連の補助金などの移転所得も消費者物価指数の年次改訂の影響に伴い+1.6%(前月:横ばい)と前月から伸びが加速した。さらに、自営業者所得も農業部門の所得は小幅に減少したものの、それ以外の業種で増加した結果、+0.6%(前月:▲1.4%)と前月からプラスに転じた。一方、利息・配当収入は+0.4%(前月:+1.0%)と前月から伸びが鈍化した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、1月が+0.6%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した(図表3)。さらに、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.5%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じ、19年8月(+0.5%)以来の伸びとなった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:自動車関連が増加も、非耐久財消費が減少

1月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.1%(前月:+0.2%)、サービス消費が+0.3%(前月:+0.4%)と、小幅ながらいずれも前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、耐久財が+0.6%(前月:▲0.4%)と前月からプラスに転じた一方、非耐久財が▲0.2%(前月:+0.6%)と前月からマイナスに転じ財消費の足を引っ張った。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+0.3%(前月:▲1.0%)、家具・家電が+0.5%(前月:▲0.6%)、自動車・自動車部品が+1.3%(前月:▲0.2%)と、いずれも前月からプラスに転じた。とくに、自動車・自動車部品で顕著と増加となった。

非耐久財では、食料・飲料が横ばい(前月:横ばい)となったものの、衣料・靴が▲1.7%(前月:+0.8%)、ガソリン・エネルギーが▲1.6%(前月:+1.5%)と前月からマイナスに転じた。

サービス消費は、外食・宿泊が+0.9%(前月:+1.2%)、娯楽サービスも+0.7%(前月:+0.8%)と前月に続いて好調を維持した一方、住宅・公共料金が横ばい(前月:横ばい)となったほか、交通サービスが▲0.9%(前月:+0.9%)と前月からマイナスに転じた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:エネルギー価格が前月比で4ヵ月ぶりに物価を押し下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.7%(前月:+1.7%)と4ヵ月ぶりに物価押し下げに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:▲0.1%)と僅かながらプラスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+5.6%(前月:+3.0%)とこちらは2ヵ月連続でプラスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.7%)とこちらは17年7月以来31ヵ月連続のプラスとなった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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