(本記事は、豊田 圭一氏の著書『人生を変える単純なスキル - センスよりスキルを信じよう 若手社員からプロフェッショナルまで大切にしたい7つのスキル』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

SKILL
(画像=PIXTA)

今、最も求められる力

私は2018年から2019年にかけて、スペインのマドリードにある「IE」という世界トップクラスの経営大学院(ビジネススクール)で、世界最先端のリーダーシップ修士プログラムというものを受けてきました。

16ヶ国から集まった22人のクラスメイトは、ほとんどがCEOやCOO、CFOという肩書きの企業の幹部たち、あるいは起業家やコンサルタントなどで、正直、このメンバーの中でついていけるのだろうかと初日にドキドキしたことを思い出します。

ところで、「世界最先端のリーダーシップ」と聞いたらどんなイメージを持ちますか?

私は人材育成の仕事をしており、「(将来の)リーダーをどう育成するか?」というテーマは人事の大きな課題の1つですから、最先端のリーダーシップってどんなものだろう? と、すごく興味を持ちながらも、たぶん、なんだかカッコいいリーダーシップなんだろうな、と思いながら受講を決めました。

ところが、15ヶ月間のプログラムの初日、アカデミック・ディレクターがゆっくり話し始めた一言目は「世界のリーダーたちが疲弊している。リーダーシップのあり方が変わってきた」というものでした。(全然、カッコいいとかじゃない!)

VUCAという言葉を聞いたことある方もいると思います。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から取った言葉で、今、世界は「変化が激しい」「先が見えない」という状況にあるということです。もちろん、昔からいつだって時代は変化していますし、先だって見えなかったかもしれませんが、今はそれがさらにスピードアップしているということなのでしょう。

でも、いかに変化が激しく予測できない状況にあるとはいえ、「社長、我が社の方向性を決めてください。ビジョンを示してください」とか「課長、これはどうすればいいですか? 決めてください」と、リーダーの仕事はいつだって意思決定の連続です。

でも、「決断してくれと迫られても、どうしたらいいのか、私にだってわからないよ」と悩んでしまうビジネスリーダーたち。それが「リーダーたちが疲弊している」の背景ということでした。

これはいわゆる社長や部長、課長という肩書きの人たちだけの話ではありません。誰にとっても、人生は常に「決断」の連続です。仕事においても、人間関係においても、何をするにも、毎日のようになんらかの決断はあります。

私が大学生だった時代、それは30年も前の話ですが、当時はまだ年功序列や終身雇用が色濃く残っていた時代ですから、なんとなく「良い大学に入って、良い会社に入る」のが良いような考え方がありました。今となっては、その“良い”というのも、何が良いのかすらよくわかりませんが、当時は何も考えず、つまり何も決断することなく、ただひたすら受験勉強したり、就職活動したり、そして、会社に入ったら上司の言うことを聞き、という時代でした。

高度成長期からバブル経済期にかけてはそれでも良かったかもしれません。なぜなら、経済は伸びていたし、こうすればこうなるのではないかという予測がつきやすかったからです。ところが、時代は大きく変わり、今や、安定した企業に入ったと思ってもそこが倒産してしまうとか、人気有名企業に入社しても3年以内に辞めてしまう人が多いとか、あるいは最初からそんな企業は狙わずにベンチャー企業に就職したり、あるいはいきなり自分で起業してしまったり、と選択肢が増えています。

選択肢が増えるということは、「自由度が高まった」とも言えますが、別の見方をすれば、決断をしなければいけない場面が増えたということです。何がしたいのか、明確にわかっている人にとっては良い時代とも言えますが、そうでない人たちにとっては、何が正解かわからない中で、自分の将来を自分で選択しなければいけないというのはストレスかもしれません。

そんな変化が激しく予測できない世界において最も求められる力とは? それは「自分は何がしたいのだろう?」「自分はどういう人間なんだろう?」「自分の強みは何なんだろう?」を知ることができる力。正しいとか、間違っているとかではなく、自分らしい決断をするための前提となる力。それをセルフ・アウェアネス(自己認識)と言います。

ちなみに、私が学んだIEのリーダーシップ修士プログラムでは、「将来を考えるリーダーやすべての個人にとって、まず考えるべきは戦略である」ということで、ストラテジック・アウェアネス(戦略的な認識力)という言い方をしていました。

仕事に必要なスキルは業種や職種、立場などによっても異なります。でも、正解がなく、予測できない変化の激しい時代に「誰にでも持っていてほしい力」あるいは「求められる力」、それこそが「わからないから決められない」「近視眼的に見てしまって、大局的に判断できない」から脱するための、「自己認識・自分を知ること」であり、「他者・相手を知ること」であり、「(自分を取り巻く)状況を俯瞰すること」という、戦略的な認識力です。

POINT
正しいとか、間違っているとかではなく、自分らしい決断をするための前提となる力。
それをセルフ・アウェアネス(自己認識)と言います。

人生を変える単純なスキル
豊田 圭一(とよだ けいいち)
(株)スパイスアップ・ジャパン 代表取締役。1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。92年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。15年以上にわたり、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、主にアジア新興国でグローバル人材育成のための海外研修事業を行なっている。また、グループ会社を通じて7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営している。18年、スペインの大学院IEで世界最先端と呼ばれるリーダーシップのエグゼクティブ修士号を取得。著書「引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術」「自分がいなくてもまわるチームをつくろう!」など多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)