(本記事は、豊田 圭一氏の著書『人生を変える単純なスキル - センスよりスキルを信じよう 若手社員からプロフェッショナルまで大切にしたい7つのスキル』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

成功
(画像=PIXTA)

人は「やらない人」を信用しない

インド人のビジネスパートナーから、こう言われたことがあります。

「これまで何百人もの日本人がインドにやってきて、ここで『何かやりたい』とか、『一緒にやりましょう!』と言ってきたけど、本当にやったのはあなただけだった」

何百人はちょっと誇張が過ぎるかなと思っていますが、でも、彼の言葉はあながち嘘ではないでしょう。海外にビジネス視察に行く日本人が現地の人たちからNATO(No Action,Talk Only)と揶揄されているように、「日本人は口だけで行動しない」とはよく聞く話です。そして、その一方で中国人や韓国人たちは、その場で決めるから、ビジネスのスピードが圧倒的に早く、日本企業がいざ決断して実行しようと思うときにはすでにマーケットは取られているなんて話も聞きます。

これはそれぞれの国民性や会社の風土もありますし、急ぎ過ぎて判断を誤るなんてケースもありますから、必ずしもスピードが良いとばかりは言えませんが、信用という点から考えると問題です。つまり、問題は「スピード」と言うよりも「行動を起こさないこと」なのです。日本人の私たちは、相手が「善処します」や「前向きに検討します」と言ったとき、ほぼやらないのではないか? と心では思ったりもしますが、それを知らない外国人たちは「前向きなんだから、やるのだろう」と期待をしてしまうかもしれません。

つまり、日本人的な感覚で言えば、「一応、検討しましたけど、結果的にはやらないことになりました」ということになるのかもしれませんが、先方にしてみたら、期待していたのに期待外れだったとなってしまいます。そして、その期待外れが続いた結果として、NATOという言葉が生まれたのは事実。人は口だけでやらない人を信用しないのです。

例えば、私のインド人のビジネスパートナーの言葉。私はやりたくないことをやれと言っているわけではありません。でも、「一緒に何かやりたい」と言っておきながら何もしないってなんでしょうか? その場で大して考えもせずに言ったリップサービスだったのかもしれませんが、「前向きに検討します」も同様、人によっては期待を裏切られたと思ってしまいます。

ただ、ということは、どうすればいいのかは自ずと見えてきます。つまり、やりさえしたら信用は上がるということです。そんなに難しいことではありません。やると言ったことはやるということです。

小さなことで言えば、「この件、あとでメールします」と言ったら、なるべく早めにメールするとか。事業を立ち上げるなんて大ごとではなく、ほんの些細なことですよね? でも、これができない人がたくさんいます。びっくりするくらいたくさんいます。

あるいは、「あなたの本、読ませていただきますね」と言ってくれたのに読まない人だってたくさんいます。別に買って欲しいと言っているわけではなく、図書館で借りてきたって、知り合いから借りたっていいじゃないですか。もしくは、興味なければ「読みます」なんて言わなければいい。それに、読み始めてから、もし面白くなかったら途中で読むのをやめてくれたって構わないのに。

世の中はびっくりするくらい「やると言っておきながらやらない人」がたくさんいるんです。でも、だからこそ、逆に「やる人」の信用はどんどん上がっていくとも言えます。そういう視点で考えると、やらない人が多いことを嘆くのではなく、やらない人が多いおかげで「やる自分」の信用が上がるのだと考えてもいいかもしれません。

もし、「やります」とか「やりたい」とか言って、本当に実行に移す自信がないなら、変にリップサービスをしなければいいと思います。そして、本当にやりたいのであれば、別に「やる」と言わなくてもやればいいじゃないですか。不言実行ってやつです。ダメなのは有言不実行でしょう。

ただ、なんでも「すぐに」できるわけではないこともわかっています。私が「ラジオ番組を持ちたい!」と言ってから、本当に持てるまでは10年くらいかかりました。だって、ラジオ番組を持つなんて、自分がやりたいからできるわけでもありません。でも、言い続けたらチャンスが回ってきたんです。それだってはじめからうまくいくわけではありません。最初のオーディションは落ちましたし、次のチャンスもいざ番組が始まる直前でキャンセルされてしまいました。そして、今はようやく巡ってきたチャンスを掴んで番組を持っていますが、ラジオ番組を持てた私に対して、古くからの知り合いは「そう言えば、ラジオやりたいって昔から言ってたよね。本当に持ったんだね」と言います。

繰り返しになりますが、人はやらない人を信用しません。些細なことからでもいいから、言ったらやること。やりたくないことをやりたいだなんて言わないこと。すぐにできないことだとしても、やるために何か行動を起こし続けることです。

少なくとも、私はNATO(口だけで、何もしない奴)とだけは言われたくありませんから。

POINT
世の中はびっくりするくらい「やると言っておきながらやらない人」がたくさんいます。
だからこそ、「やる人」の信用はどんどん上がっていきます。

人生を変える単純なスキル
豊田 圭一(とよだ けいいち)
(株)スパイスアップ・ジャパン 代表取締役。1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。92年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。15年以上にわたり、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、主にアジア新興国でグローバル人材育成のための海外研修事業を行なっている。また、グループ会社を通じて7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営している。18年、スペインの大学院IEで世界最先端と呼ばれるリーダーシップのエグゼクティブ修士号を取得。著書「引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術」「自分がいなくてもまわるチームをつくろう!」など多数。

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