(本記事は、豊田 圭一氏の著書『人生を変える単純なスキル - センスよりスキルを信じよう 若手社員からプロフェッショナルまで大切にしたい7つのスキル』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

疑問
(画像=PIXTA)

なぜ「実力」を発揮できないのか?

「彼、力はあるはずなんですけどね……」
「実力さえ出せれば、もっと結果を出せると思うんだけど……」

学校でも会社でも、どこかで誰かが言っているような言葉です。あるいは、言われたことがある人もいるかもしれません。かくいう私も言われたことがある1人でした。いわゆる、「本番に弱い」というやつです。

私の場合、実力があったかどうかも怪しいですが、例えば、人前で話す前など、緊張感で頭は真っ白になるわ、手は震えるわ、顔は痙攣するわで、もう少し話せる内容はあったはずなのに、まともに話すことができませんでした。そして、そういう人は私の他にも大勢いるのではないでしょうか。

それ以外にも、例えば、新しい部署に移ったばかりのときや転職した会社で仕事を始めたばかりのときなど、自分にとってアウェイな環境になったとき、人はなかなかすぐに実力を発揮することができません。私が仕事で実施しているグローバル人材育成はまさにそのあたりがテーマになってくるのですが、人種も言語も商習慣なども異なるグローバルな環境でもそれは同じこと。でも、どんな環境においても、本番で実力を発揮できなければ、結果的にはそれがその人の力ということになってしまいます。

いくら仕事に必要な専門的なスキルや知識などがあったとしても、本番で実力を出せなければ、仕事ができるとは言えなくなってしまいます。結局、仕事の力とは、スキルや知識、経験値など、本来持っている実力を本番環境で発揮できることと言えます。

では、本来持っている実力を発揮できたら出せるであろう仕事の成果と、実際の仕事の成果との差異はなぜ起こるのでしょうか?

これはもう言うまでもなく精神的なものですよね。緊張してしまって持っている力の半分も出せなかったなんていう「緊張」だって、緊張する人としない人がいるのですから、それを分けるのはメンタルです。スキルや知識の差異ではありません。

わかりやすいのは、スポーツ選手の例でしょうか。一流スポーツ選手ともなれば、誰もがフィジカルの強さや高い技術を持っています。フィジカルや技術が重要なのは当たり前の話。それ以上に重要だと言われているのがメンタルで、試合の結果に影響を与えるのはそこです。そして、だからこそ多くのスポーツ選手がそのためのメンタルトレーニングをしていることは周知の事実です。

ビジネスパーソンだって、スポーツ選手と変わりはありません。私の会社では、日本人がグローバルな環境で活躍するための土台となる「グローバルマインドセット」を測定するアセスメントツールを開発・運営していますが、なぜ、このようなツールを開発しようかと思ったかと言うと、スポーツ選手のメンタル同様、決して実力は低くないはずの日本人ビジネスパーソンの中で、環境が異なる(アウェイ度が増す)ほど、本来の成果が損なわれてしまう人が結構いて、その要因は何だろう? と思ったからです。そして、その要因こそが「グローバルマインドセット」にあるということから、そのアセスメントツールを開発しました。

つまり、敵は私たちの外にいるのではなく、自分の中にいるのです。だからこそ、私たちは仕事に必要な専門的なスキルや知識を高めることも大切ですが、もっとマインドセットやメンタルに意識を向ける必要があります。

では、どうしたら、実力を発揮するためのマインドセットを持つことができるようになるのでしょうか? それもまたスポーツ選手のやり方が1つのヒントになるはず。それは、スポーツ選手がいつも通りの安定した実力を発揮するために、同じような行動を取る「ルーティン」です。

例えば、昨年引退したばかりの野球のイチロー選手は、ルーティンとして、日々の食事や就寝などの行動パターンが時間単位で決まっていたそうですし、また、打席に入るときに毎回同じようにやっていた動作はよく知られています。あるいは、体操の内村航平選手が演技を始める前に腕を前に伸ばして狙いを定めるような動作をするのもルーティンですし、ラグビーの五郎丸選手が人差し指を合わせて拝むようなポーズを取ってからボールを蹴るのもルーティンです。人によっては、グランドに入るときに必ず右足から入ると決めているとか、走り始めるときは必ず右足からというのもあるでしょう。

では、なぜルーティンを行うことで実力を発揮できるのか? それは、以前うまくいったときと同じ動作をすることで、自分に対して「この動作をしたら自分は大丈夫!うまくいく!」という暗示をかけるということでもありますし、単純な同じ動作をすることで、目の前のことに集中することができるそうです。

実力があるはずのスポーツ選手がそんなことをするのですから、結局、実力を発揮できるかできないかは「心の持ち方」にかかっています。つまり、コントロールすべきは自分の心です。

POINT
仕事の力とは、スキルや知識、経験など、本来持っている実力を本番環境で発揮できることと言えます。
そのためには、自分の心をコントロールするルーティンの動きを取り入れてみましょう。

人生を変える単純なスキル
豊田 圭一(とよだ けいいち)
(株)スパイスアップ・ジャパン 代表取締役。1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。92年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。15年以上にわたり、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、主にアジア新興国でグローバル人材育成のための海外研修事業を行なっている。また、グループ会社を通じて7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営している。18年、スペインの大学院IEで世界最先端と呼ばれるリーダーシップのエグゼクティブ修士号を取得。著書「引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術」「自分がいなくてもまわるチームをつくろう!」など多数。

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