(本記事は、牧野剛氏の著書『社員は1分で変わる! ──儲かる会社をつくる「できました」の魔法』自由国民社の中から一部を抜粋・編集しています)
辞めてもいい社員の条件はたった一つ、素直でない社員
私は、辞めてもいい社員の条件は、たった一つだと思っています。それは、「素直でない社員」です。
素直な人は遅かれ早かれ仕事ができるようになります。しかし素直でない人はいつまで経っても、できるようになりません。素直でない人は、指示を受けても、「本当にこのやり方でいいの?」「これは自分がやるべきこと?」などと、余計な事を考えて、仕事に取り掛かろうとしません。これでは仕事の基礎も覚えられないのです。
上司が具体的な指示を出しても、初めての仕事だったらうまくできないこともあるはずです。その時、素直でない社員は「できません」と報告に来ません。
素直に、「できなかったのでもう一度教えてください」と言えないので、自己流に変えてしまうのです。勝手にやり始めて、1時間ぐらいしてから「僕なりの方法でやってみました」とトンチンカンな結果を出してくることが多いのです。
そうするとこの1時間が完全な無駄になって、すべてが振り出しに戻ります。仕事はできあがっていませんし、間違ったやり方を直して、もう一度教え直して、今度はちゃんとやるかどうかを見張っていなくてはならなくなり……、と、上司からすると二度手間以上の時間が掛かってしまいます。
こういうタイプの人は、できなかった言い訳もセットでついてくるので、その言い訳にも対応しなければなりません。なんだかんだと、素直にやってくる人の5倍ぐらいの時間と手間が掛かり、最悪の場合、納期に間に合わなくなったりします。
逆に、素直な社員ができなかった時はすぐに「できません」「ここがわかりません」と報告に来るので修正が早いのです。修正して正しいやり方を身につければ、どんどん次のステップに進んでいくことができます。
こうした差が毎日積み重なっていくと、素直な社員なら1日で仕上げられるような仕事も、そうでない社員は1週間経っても終えることができずにいます。これぐらいのパフォーマンスの差はすぐに出てしまうのです。
素直でない社員は、言われたことを素直にやることもできませんし、疑問点も素直に上司に聞けません。失敗しても、素直に上司に報告して修正のチャンスを得ることもできません。素直でない人は退職率も高いです。まず上司が求めているのは、言われた通りにすぐ行動することだけなのですが、それを実行したくないタイプの人には、「どうしたらできるようになるの?」「どうしてすぐ行動できないの?」と解決法を求められる環境は居心地が悪いのです。こういう人は、自分で勝手に状況を悪化させ、職場に居づらくなって辞めていってしまいます。
「素直な人」を「デキる人」に変えるのがこれからの採用スタイル
今の時点で、優秀な社員は採れなくても、このような視点で人を見れば、入社してから仕事ができるようになる社員は採用することができます。それには、とにかく素直な人を採用することです。
素直な人は学んだことをぐんぐん吸収できますから、入社後にきちんとした教育を行うことで、どこの会社にも負けない優秀な社員に育てることができるのです。
では、どうしたら素直な人を採用することができるでしょうか。ここで、「素直な人」を一発で見抜く方法をお教えしましょう。
それは面接の場で、志望者に何か作業を指示し、それを実際にやってもらうことです。作業自体はなんでもいいのですが、多少は相手に心理的な負荷が掛かることの方が、結果がわかりやすくていいと思います。
わが社の一部門で実際に行っているのは、最終面接に残った応募者に、謝罪の練習に付き合ってもらうことです。
「ウチの会社では、仕事でお客様に謝ることがあります。社員はその練習として、自分の謝っているところを撮影して見返したりします。今から謝り方のコツを教えるので、私が撮影していいですか?」と聞いてみます。
これを受けて、すぐさま「ハイ!」と応え、カメラの前で「申し訳ございませんでした」と頭を下げられる人は、素直な人です。
逆に、「え、ちょっとそれは……」と抵抗する人は素直ではありません。
この方法で、志望者が素直かどうかは、すぐに見抜くことができます。
こうして、無事に素直な社員が採用できれば、あとは「できました」教育の出番です。「できました」教育はたった1分で完了します。部下の業務報告を、最後は「できました」の言葉で締めるようにするだけだからです。
たったこれだけですが、「できました」教育は、粗利脳の発想から生まれているので、「できました」と言い続けていくだけで、社員の発想や行動が、儲かる会社づくりに適した方向に大きく変わるのです。