(本記事は、牧野剛氏の著書『社員は1分で変わる! ──儲かる会社をつくる「できました」の魔法』自由国民社の中から一部を抜粋・編集しています)
1分でできる「叱らない」教育
部下が何か失敗した時、上司は部下を叱るのが一般的です。ですが、わが社では、できるだけ部下を叱らずに教育効果を上げる工夫をしています。この「叱らない」教育は、たった1分でできます。一般的な「叱る」教育に比べて、指導効果が高く、上司と部下の双方のストレスも少なく、さらに粗利率もアップするのです。
では、叱る代わりに、いったいどうすればいいのでしょうか?
その答えはやはり「質問すること」です。このメソッドは、本章の冒頭で紹介した「4クエスチョン」を発展させたものです。
「4クエスチョン」は、「今、なんて教えたかな?」で現状を把握させ、「具体的には?」で内容を掘り下げ、「他には?」で取りこぼしをふせぎ、「つまり?」でまとめるという流れでした。
「叱らない」教育は「4クエスチョン」の流れに従って、4つの短い質問を繰り返すことで、部下に現状を把握させ、最終的には部下自身で解決への手順を導き出せるようにします。
上司が部下を叱るのは、上司から指示されたことを部下がその通りやっていなかった場合がほとんどです。こんな時、「叱る」教育を行う上司は「なんで言われたことができないんだ!」と怒るでしょう。ですがその内実は、自分の命令に部下が従わなかったことへの怒りがほとんどです。叱責の目的は、問題点の分析ではなく、不快な状況への謝罪を求めているだけなのです。
こういう上司の下では、部下は委縮し、改善策を深く考えることができません。そしてまた同じ過ちを繰り返すのです。
しかしわが社では、部下が仕事をやっていなかった時には「○○はどうしたの?」と質問し、沈黙で間を取って部下に考えさせます。
これは、「4クエスチョン」の最初の質問である、「今、なんて教えたかな?」のバージョン違いともいえます。
「今、なんて教えたかな?」と質問する代わりに、「○○はどうしたの?」と質問することで、現状を把握していきます。
「叱らない」教育の流れは以下のようになります。
- 1「○○はどうしたの?」と質問し、問題が発生している現在の状況をおおまかに把握させます。
2「具体的には?」と質問することで、問題点の理解を深めさせます。
3「どうしたらできるようになると思う?」と質問をして、部下自身に、改善点を考えさせます。
4「他には?」と聞いて、取りこぼした情報がないかの確認を行います。
「叱らない」教育が進められている職場での建設的なやりとりはこんな感じです。
- 上司「仕事(A)はどうしたの?」
部下「申し訳ありません。忙しくて手が回りませんでした」
上司「忙しかったんだね。それで、具体的にはどんな感じなの?」
部下「お客様へ送らなければいけないメールが多く、Aにまで時間を回しきれませんでした」
上司「大変だったね。じゃあ、どうしたら期限内にできるようになると思う?」
部下「仕事の優先順位を整理して……(以下略)」
上司「なるほど、他には?」
部下「午後3時に、仕事の進み具合を一度チェックします」
上司「できそう?」
ここでのコツは、部下の言葉を「忙しかったんだね」と共感のフレーズで受けとめることです。ただの言い訳だと思っても、いったん共感することが大事です。部下は、自分の発言が頭ごなしに否定されないことがわかると、ようやく安心して自分の問題点や改善策をしっかりと考え始められるようになるのです。
「叱らない」教育は、どの質問も1分で完了するので、どんな上司でもスムーズに部下の指導を行うことができます。
「4クエスチョン」の手法を応用すれば、叱責という手段に頼らなくても、部下は自分の頭で改善策を見つけ、粗利アップに向けて行動を開始できるようになるのです。