(本記事は、ブレント・アダムソン氏、マシュー・ディクソン氏、パット・スペナー氏、ニック・トーマン氏の著書『隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法』実業之日本社の中から一部を抜粋・編集しています)

モビライザーのポテンシャルを引き出す3つのカギ

ポテンシャル
(画像=Jirsak/Shutterstock.com)

「モビライザー」と、顧客の購買プロセスで彼らが果たす役割を5年近く調査した結果、われわれは次のような結論に達した。サプライヤーはモビライザーの可能性をフルに引き出すため、3つのことを正しく実行しなければならない。

(1)「モビライザー」に、どこで学べばよいかを「指導」する。
(2)「モビライザー」への関与のしかたを、それぞれのタイプに「適応」させる。
(3)「モビライザー」が合意形成プロセスを「支配」できるように導く。

なぜ「指導」「適応」「支配」か?

本書のフレームワーク──「指導」「適応」「支配」──は『チャレンジャー・セールス・モデル』の読者にはなじみ深いだろう。「モビライザー」調査の分析に同じフレームワークを用いるのには、3つ理由がある。

第一に、本書は「チャレンジャー」のいわば「鏡像」である。最初の何ページかでわかるように、本書はソリューションの販売ではなく、ソリューションの購買について述べたものだ。「チャレンジャー」販売員ではなく、顧客のなかの「チャレンジャー」がテーマである。したがって、(サプライヤーの視点ではなく顧客の視点から)同じフレームワークを用いるのは理にかなっている。多くの点で、本書は「チャレンジャー」的アクションに対する顧客のリアクションについて述べている。

第二に、継続的な変更管理の取り組みをサポートできる。「チャレンジャー」モデルに思いきって取り組んだ販売リーダーは、ここまでの変更管理の努力とは無関係な、新しい別のフレームワークを望んでもいないし、必要ともしていない。『チャレンジャー・セールス・モデル』でも述べたように、この新しいアプローチは一朝一夕に導入できるものではない。

変更・変革は一筋縄ではいかないし、進捗は(日や週ではなく)月や年の単位で測定される。ほとんどの組織は「チャレンジャー」による最初の変化の波を、まだ消化しきれていない。競合する別のフレームワークを採り入れることは、販売員、マネジャー、マーケター、CSO(最高戦略責任者)、CMOなど、誰のためにもならない。

われわれの目標は、ものごとをもっと難しくすることではなく、「チャレンジャー」モデルをめざす組織が新たな「モビライザー」インサイトを導入しやすくすることである。「指導」「適応」「支配」という考え方について、『チャレンジャー・セールス・モデル』のとき以上に詳しく読者にお伝えしたい。

すでに同モデルを追求中の企業には、さらなるデータ、分析、視点、助言を提供し、同モデルの効果についてまだ様子見のリーダーには、追加のデータを提供する。その意味では、これは「チャレンジャー2.0」と考えてもらってかまわない。「チャレンジャー」とまったく異なるものではない。

第三に、このフレームワークは道理にかなう。われわれはチームとしてこれを長らく論じてきた。そしてそのたびに、ここで起きているのは「指導」「適応」「支配」にほかならない、という必然的な結論に行き着いた。本書を読めばきっと同意してもらえると思う。

これらの必須原則をひとまずざっと確認しておこう(追って詳しく検討する)。

第一に、「指導」について。『チャレンジャー・セールス・モデル』では「(コマーシャル)インサイト」という考え方を紹介したが、コンセンサスや「モビライザー」について調べるなかで、思わぬインサイトこそが、新世界の「チャレンジャー」モデルの中核に存在するという事実を再確認できた。

残念ながら、「チャレンジャー」モデルの実践に際して企業が最も苦労するのもこの点である。インサイトの構築は販売員個人のスキルではなく、組織の能力であると理解できていない(インサイトの生み出し方に関する営業研修が巷にいろいろあるにもかかわらず)のも理由のひとつであるし、思わぬインサイトは「ソートリーダーシップ」(革新的な哲学や考え方で業界をリードすること)と同じだと誤解している(実はこの2つはまったく別物)のも理由のひとつである。

また、直近の調査により、「指導」は販売員だけの仕事ではないことが確信できた。マーケティングも、インサイトの構築、さらにはその展開に関与しなければならない。なぜか?顧客はいまや自力で学べるからだ。「モビライザー」関係者が学びたいとの気持ちを持っているのは間違いないが、あなたの会社の販売員から学びたいと考えるかどうかはわからない。

少なくとも最初の段階では、その保証はない。だからインサイトの種をまいてモビライザーをまずつかまえるのが重要である。ただしそれは、彼らがどこで学ぶ可能性が最も高いかがわかっている場合に限る。もし営業(販売員)から学ばないのなら、マーケティングがどうにかして、しかるべきチャネルにそのコンテンツを仕込まなければならない。

第二に、「指導」の次はモビライザーへの「適応」について。『チャレンジャー・セールス・モデル』でも説明したように「適応」はやはり非常に重要だが、とくに、モビライザー個人を説き伏せるための最初の移行時(図1・9または図2・6を参照)に、その重要性は増す。

ここで言う適応とは、あなたが思うモビライザーのタイプに内容を合わせることだ(モビライザーには「ゴー・ゲッター」「ティーチャー」「スケプティック」の3タイプがあったことを思い出そう。それぞれのインサイトとの関わり方は少しずつ違う)。

4-1
(画像=『隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法』より)

われわれが学んだのは、個人レベルでの適応はその人を説得するのにきわめて重要だが、質の高い取引を勝ち取るにはまったく不十分だということである。どこかの時点で、個人を説得するための適応から、集団を説得するための適応へ、大きく舵を切らなければならない。集団を説得するための適応には、個人の場合とはまったく違う適応術が必要となる。

この2種類の適応は中身が違う。最初の適応だけして第2の適応を怠れば、モビライザー個人は説得できても、取引の質は低くなってしまう(または取引がまったく成立しない)かもしれない。なぜなら、その関係者とわれわれをつなぐことに成功しても、その人(モビライザー)と残る4.4人をつなぐことに失敗するからだ。

では、どうするか?われわれがひとつ学んだのは、モビライザーもよくわかっていないかもしれないということだ。モビライズ(動員)の意向があるからモビライズできるとはかぎらない。そこで、こちらが一役買おうというわけだ。合意形成プロセスを実質的に「支配」し、集団を合意に導くのである。

幸い、マーケティングも営業も、コンテンツやアプローチの「適応」を通じて合意形成プロセスの「支配」をサポートし、第2の矢印(図2・6)で勝利を得るために、大きな役割を果たすことができる。ここは重要ポイントである。個人の賛同を得てもしょせんお金はもらえない。5.4人が合意して初めてお金をいただける。それは「ソリューションの墓場」から抜け出すためのチケットである。

では次いで、第2の長い矢印の「支配」に移ろう。第1章での議論はここからスタートした。サプライヤーの営業活動の第2の移行時(1人の個人を迎え入れる段階から、集団の合意をとりつける段階への移行時)に何が起きるかという話である。集団の多様性(と、そこから生じる5.4人の機能不全)ゆえ、取引の多くは、たとえ出だしが何もかも正しくても、最終的には「ソリューションの墓場」行きとなる。

なぜそうなってしまうのか?すでに見たように、それぞれの関係者にはそれぞれのメンタルモデルがあり、その重なり部分は非常に小さいからだ。合意プロセスに臨む際の各人の思惑には違いがある。何が重要か?何を提案に盛り込んでほしいか?「勝利」の意味は?それぞれの裁量に任せていたら、彼らは協力するどころかばらばらになる。

個人レベルのみの適応によって生じる(または悪化する)現象であり、結果的に集団はほとんど意思決定ができない状態に陥る。サプライヤーにすれば、最初は複雑かつ長期的で利鞘の大きなソリューションだったはずが、利鞘の小さい単純な陳腐化製品が買われておしまいとなる。集団があれこれ言い争ううち、もはや合意できなくなるからだ。

これをどう克服するか?ここで「集団的学習(コレクティブラーニング)」というコンセプトを詳しく見ておこう。コンセンサスについて調べてきたこの5年間で、われわれを最も大きく啓発した考え方のひとつである。「コレクティブラーニング」は合意プロセスを「支配」するための技法である。

具体的にはサプライヤーが、多様な(機能不全を起こしている)購買集団を共通のビジョンにつなぎ止めるフレームワーク──新しい集団的なメンタルモデル──を提供することで、合意形成の促進を手助けする。共通のビジョンとは言い換えれば、集団の関係者全員がまとまることのできる大きな願望である。

先述のように、これはわれわれとモビライザーを結びつけるという意味ではなく(われわれと個々の関係者を結びつけるという意味でもなく)、他の4.4人を互いに結びつけるという意味だ。関係者一人ひとりから同意をとりつけ、彼らがひとつの決定でまとまるのを期待するという従来のやり方から、ひとつの共通合意を集団から引き出すやり方へ、営業・マーケティングアプローチを変更することである。

だがモビライザーは、合意形成に欠かせない資産ではあるものの、サプライヤーのソリューションの購入となるとなにがしかの支援を要する。そこで次に、2つ目のコンセプトを紹介したい。それは「支配」にも近いもので、「コマーシャルコーチング」という。つまり、(顧客に売り方をコーチしてもらう従来の方法とは逆に)モビライザーに買い方をコーチするのだ。

隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法
ブレント・アダムソン(Brent Adamson)
CEBの金融サービス&顧客コンタクト・プラクティスのグループリーダー。『チャレンジャー・セールス・モデル』(海と月社)、『おもてなし幻想』(実業之日本社)の共著者。
マシュー・ディクソン(Matthew Dixon)
CEBの金融サービス&顧客コンタクト・プラクティスのグループリーダー。『チャレンジャー・セールス・モデル』(海と月社)、『おもてなし幻想』(実業之日本社)の共著者。
パット・スペナー(Pat Spenner)
CEBのセールス&マーケティング・プラクティスの戦略イニシアティブリーダー。
ニック・トーマン(Nick Toman)
CEBのセールス・プラクティス・リーダー。『おもてなし幻想』(実業之日本社)の共著者。

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