(本記事は、鳥飼重和氏の著書『慌てない・もめない・負けない経営』日本経営合理化協会出版局の中から一部を抜粋・編集しています)
見極めるには費用と時間がかかる
弁護士との出会いは、やはり縁です。何かの会合で出会ったり、信頼できる知人からの紹介、ウェブサイトでの広告、あるいは、著書や掲載記事を読んだり、セミナーに参加した際の講師だったり、中には紛争の相手方弁護士という場合もあるかもしれません。自分にふさわしい経営参謀と、いつどこで巡り合うかわかりません。だからこそ、経営参謀を求める気持ちを失わず探し続けてください。そうすると自然に良縁ができるものです。
良縁が感じられる弁護士と知り合えたら、次は、落ち着いて話ができる場を設けてください。事務所でもいいですが、食事を一緒にするのもおすすめです。人柄や、どのような考え方で仕事をしているのかなど、多様な情報が手に入ります。また、話題になっている経営的な質問をして、その応対をみれば、経営もわかる人かを判断できます。
さらに今は、インターネットでその先生の名前を検索してみてください。ブログをやっていたり、SNSに投稿していれば、その投稿内容も判断の材料になりますし、Twitterや掲示板などで叩かれているかもしれません。
その上で「この人なら」と思ったら、いま抱えている簡単な案件を相談してみてください。その対応の仕方で、実力が見えます。能力が高いか低いか、面倒見がいいか、親切か、仕事が早いのかなどもわかります。また、「できます」と言っていることが本当にできるのか、より確実に成果を上げるために他人を巻き込める人か、抱え込んでしまう人なのか……そういうことも実際に仕事をやってもらうとわかります。
そしてその仕事ぶりをみて、引き続き信頼して他の仕事も依頼したいと思えるかを判断すればいいのです。もし、そのためにお金が必要なら、それは未来への投資と考えてください。明るい未来を期待できる効率性の高い投資です。
徒手空拳から一代で、当時の世界一企業のUSスティールを創ったアンドリュー・カーネギーの次の言葉は、現代でも通用します。
「人間、優れた仕事をするためには、自分一人でやるよりも、他人の助けを借りるほうが良いものができると悟った時、その人は偉大なる成長を遂げるのである」
「他人の助け」のうち社長にとってもっとも重要なのが、経営参謀なのです。
以上、弁護士を例に経営参謀の選び方をお伝えしましたが、士業やコンサルタント、官僚OB、医者など他の参謀も同じような考えで選ぶと間違いはないと思います。
依頼する時の料金体系と相場
弁護士に仕事を依頼する時のハードルの一つに、「料金がわからない」ということがあると思います。一般的には次の4つの料金体系があります。
(1)「相談料」=一時間程度の相談をする時の費用です
(2)「月額制」=顧問料として月にいくらという支払い方
(3)「タイムチャージ制」=案件ごとに一時間いくらという支払い方
(4)「着手金」+「成功報酬制」=案件に取り組む費用と、成果を上げた時の利益分配
最終的には、依頼者と弁護士との自由な契約で、金額と支払い方法などを決めます。
ただ便宜上、弁護士ないし法律事務所で支払い方法を決めていることが多いのは確かです。最近では、インターネットで弁護士を探す人が多くなっているので、ホームページなどに、報酬体系を明示している法律事務所も多くなってきました。あるいは、ある業務については、標準的な報酬体系ができあがっている場合もあります。
もっとも、費用は依頼者と弁護士との自由な契約といっても、有能な弁護士は、報酬額は自分への価値評価と考える傾向がありますので、その弁護士が適切に評価されていると思える金額を提示するほうが、喜んでやってくれると思います。
弁護士費用の目安としては、日本弁護士連合会が二〇〇九年に実施した弁護士へのアンケートを集計した「市民のための弁護士報酬の目安」「中小企業のための弁護士報酬の目安」という資料が、日本弁護士連合会のホームページ( https://www.nichibenren.or.jp/ )にあるので、その抜粋を次ページに掲載しておきます。(図表15)
まず社長が優秀な参謀を強く求める
正直、現状では社長の参謀が務まるような、経営も法律も統合的に活用できる弁護士はそれほど多くはないので、出会うのに苦労するかもしれません。
それは、需要と供給の関係から説明できます。社長側に経営参謀としての弁護士を求める需要がないので、経営参謀に相応しい弁護士の供給準備がないのです。
本来、「供給が先」か「需要が先」かはどちらでもいいのですが、弁護士の頭が柔軟で実践的であれば、弁護士のほうが供給の準備をして、社長の需要を喚起することも可能です。
しかし、恥ずかしながら弁護士の大多数は、法律を使うのは裁判が必要な案件が起こった後だと思い込んでいる人たちです。その常識を変えるように、弁護士側から改革をするのは困難といわざるを得ないのが正直なところです。
ですからまず社長のほうから、「私を補佐する経営参謀としての弁護士がほしい」と声をあげてください。「ほしい」という需要があるところには、必ず経営参謀に相応しい弁護士たちが育っていきます。
また外部から見つけてくるだけでなく、育てることも考えてみてください。
今お願いしている顧問弁護士や顧問税理士に、経営参謀としての能力に不足があるとしても、「このようなアドバイスがほしい」「こういうことはできないのか?」「法的に問題あるか調べてほしい」「この件を法律で守ってほしい」と要望を出し続けてください。そうすることによって、社長にとって役に立つ経営参謀として育っていきます。
その気になれば、それほど難しくはありません。弁護士、税理士がすでに身につけている知識や技術を「先手で使う」という発想に切り替えればいいだけですから。
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