ZUU onlineが開催している、経営者が知っておくべき「新型コロナウイルス後の○○」をテーマにしたZoomによるウェビナー。5月7日(木)13時からは、マーケットリバー 代表取締役、元楽天IR部長の市川祐子氏に「有事のIR・コーポレートコミュニケーションー楽天IRの戦いから得られたことー」を聞いた。

※本記事はウェビナーの収録内容をそのまま書き起こしたものです。

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市川祐子 氏
(画像=市川祐子 氏)

ゴールは共感の資本主義

斎藤暢人(司会進行ZUU online社,以下斎藤):定刻となりましたので始めさせていただきたいと思います。皆さんこんにちは。今日はありがとうございます。本日司会を務めさせていただきます株式会社ZUUの斎藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

市川:宜しくお願いします。

斎藤:画面を共有します。4月からZUU onlineでは「経営者が知っておくべき新型コロナウイルス後の○○」をテーマにZOOMによるウェビナーを毎日開催をしております。本日はマーケットリバー代表取締役であります市川さんをお招きしまして有事の IR・コーポレートコミュニケーションについてお話を頂ければと思っております。また書籍で「楽天 IR 戦記」を書かれておりますのでそのあたりについてもぜひ知見であったり、お話を聞かせていただきたいと思います。

斎藤:市川さんのご紹介に出しておりますように楽天であったり、NEC グループだったり IR・資金調達などを担当してこられたIRのプロフェッショナルでいらっしゃいますので、今のタイミングでIRの担当者か、あるいは経営者の方はどのように動いて行けばいいのかについて本日はお聞かせいただければと思います。それでは市川さんにバトンタッチしましてお話を伺いできればと思います。

斎藤:すいません、機能について1つだけ補足で説明いたします。下の方にQ & Aというボタンがあると思います。市川さんにご質問がある方はQ & A ボタンを押していただいて、ご自身で気になることについて Q & A にお尋ねになりたいことについての記載をしてください。できるだけタイムリーなタイミングで市川さんに情報をお聞きしたいと思いますので、ぜひお気軽に何でもお聞きいただければと思います。市川さん、自己紹介を含めてお願いいたします。

市川:市川祐子と申します。今日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。先程ご紹介にあずかりましたように私は3年前まで楽天の IR の責任者を務めていました。その前のNECエレクトロニクスも含めて15年間資本市場との対話の窓口におりまして、その間には東日本大震災もありましたし、リーマンショックもありました。ライブドアショックもありました。どういった情報開示が求められているのかということについてお話ししたいと思います。よろしくお願いします。

市川:ではまず先ほどご紹介してくれたことに加えて、今の仕事の領域についてお伝えしたいと思います。「楽天 IR 戦記」という本を昨年出しました。株を買ってもらえる会社の作り方という副題を日経BP の方につけて頂いております。ご覧になっていただけるには、まずその第一章と特別編をノートで無料公開しておりますので、そちらから入って頂けるといいかなと思います。このノートの URL はノート. com スラッシュマーケットリバーと言います。

市川:マーケットリバーというのは実は私の個人の会社でございましてちょうど1年前令和元年5月7日に設立致しました。ちょうど記念の日でありがたいです。斉藤さん、ありがとうございます。その他に2つの会社で社外取締役を務めておりまして1つはアライドアーキテクツというマザーズ上場の会社、ソーシャルメディアを活用した企業のマーケティングを支援しております。もう1つはスタートアップ・ストローリーと言いまして GPS とイラスト地図を連動させてオンラインのプラットフォームを提供しています。お出かけしながら紙の地図を持ち歩くのではなくてデジタルでやるというものなんですけれども今この時代ではむしろバーチャルな旅、バーチャルマップを提供するような会社です。以後、よろしくお願いします。

市川:それでは本題に入りたいと思います。本日のアジェンダです。まずシチュエーションとゴールの設定。有事のコミュニケーションの基本。今伝えたい5つのポイント。そしてゴール。ゴールを共感の資本主義としました。そしてクロージングです。

コロナ危機下でも株を買ってもらうには?

市川:まずシチュエーションのところからお話したいと思います。この状況、新型コロナウイルス下、その影響をどう開示するか、取材を受けているという設定にしたいと思います。ここでちょっと参加者の皆様にご質問なんですけれども、このズームの機能を使って手を挙げるって事がたぶんできるんだと思うんですけれども、あなたの属性は企業の IR や広報担当者という方、手を挙げられますか。見えますかね。斉藤さん分かりますか。ミュートになってますけど。

斎藤:左下に参加者っていうボタンが見えると思うんですけどそれをポンと立ち上げていただくと手を挙げて頂いてる方が、人数は言えないですが、約半分ぐらい。

市川:分かりました。ありがとうございます。すいません、画面共有をしているとしづらいみたい。また経営者の方、挙手してもらえますか。何割ですかね。

斎藤:10%ぐらい。

市川:あと役割にかかわらず上場企業にお勤めの方、そんなに多くないですかね。半分ぐらい。では未上場の方も半分ぐらい。ありがとうございます。そして大体6割ぐらいが企業側の方で、それ以外の方もちょっといらっしゃる。上場企業の方が半分ぐらいいっていうことですね。ありがとうございます。そしてそのゴール、このシチュエーションのゴールを株の保有。株主であれば株の保有を継続してもらうこと。そしてあわよくば買ってもらうということに設定したいと思います。

市川:それでは本ちゃんの内容で有事のコミュニケーションの基本、まず速さ。先日スチュワードシップ研究会に参加しました。これは機関投資家と投資先の関係を研究する会なんですけれどもイギリスの機関投資家が言っていたのは完全さよりもタイムリー性を重視して欲しいということでした。つまり分かったことからぱっぱ、ぱっぱ出して欲しいっていうことなんですよね。

市川:これから5つのポイントを申し上げますけれど、1つの仕様で全部をカバーする必要はないです。事実については素早く発表して、事実とそうでないもの、計画であったり予想は分けてお伝えする。これは2つ目です。これ当たり前の事なんですけれども意外と情報を受け取る側も混乱していることがあるので気をつけてコミュニケーションすると良いです。それから業績予想を出す場合、私は出さない派なんですけれども、出す場合には、ある仮定を置いて修正を恐れずに柔軟に変更できるつもりで出すといいんじゃないかなと思っております。

今起こっている事実を伝える

市川:それでは今伝えたい5つのポイントを1つずつお話しいたします。1つ目、今起こっている事実を伝えること。そしてそれを数字で伝えることです。株式市場が既に知っていることっていうのはたいてい月次のマクロ情報なんですね。例えば失業率の推移であったり、日銀短観の推移であったり、マクロ情報っていうのは皆さん収集しているんですが、もしくは自分の身の回りの体感ではありますが、企業の内側にある日々のミクロ情報っていうのは実はやっぱり分からないんですね。外から見たら。それはとても貴重なデータであることをまず知っておいて欲しいです。そしてそれが企業価値につながる数字であればなおのことありがたいので先行指標そして見栄えが良い数字よりも生々しいことでポジティブな情報だけではなくネガティブな情報も出すと回復の時の参考になります。そしてデータでだあって出すことによって分析する事っていうのは見る人にある程度委ねることができます。ですので、まずデータを出す。そうするとちょっと冷静に分析しようというような気分に投資家さんがなりますのでそれをやりましょう。

サイバーエージェントは年初来高値を更新

市川:1つ事例としてサイバーエージェントさんを挙げさせていただきます。 AbemaTV は巣ごもり需要が非常に発生して20%から30%ぐらいのベースアップになったそうなんですね。これをウィークリーアクティブユーザーの生データではこちらのチャートにあるようなものを出されました。非常に鮮明に表現できていて元々IRが非常に良い会社なんですけれども、年初来高値を更新することができています。

斎藤:ご質問してもいいですか。今の話の中で生データでも出していいんじゃないかっていう話がありましたけど IR データってどちらかっていうと加工したデータの方が多いイメージがありましてね。ここであえて生データを出すという意味みたいなものってあるのですか。

市川:例えばこのサイバーエージェントの場合にはもともとマンスリーアクティブユーザーを出しているんですね。それだとちょっとこう変化が見えないので少し細かく刻んだウィークリーを出すと。もともとアクティブユーザーというのが価値に関連するからということで経営指標として出していることがベースにあります。

市川:そうでない場合、例えばですね JR東海さんであれば新幹線の旅客数っていうのを毎月開示しています。4月26日に決算発表されたんですけれども9割減だったんですよ。それでも出した方がいいという風に判断されて非常に素晴らしいなと思ったんですけれども9割減であっても将来戻る時っていうのはそれで参考になるじゃないですか。なのでまあちょっと生データって言い方があまり良くなかったかもしれないですけれども、常日頃開示しているデータか、それに近い指標というのは非常に理解しやすいので業績を例えば4月に出すと4月1か月間の業績っていうのを出すことは難しいですけれども4月1か月間ウィークリー・デイリーの数字っていうのお見せするっていうのはかなり参考になるので、それをやってやるといいという風に思ってます。

斎藤:タイムリーで生々しいっていうことですね。

市川:1か月の PL 出すのはちょっと無理じゃないですか。それよりはこういう指標の方が日々の変化、特に緊急事態宣言が入ったのが4月の途中からですから、1―3月では全然影響がないよっていうところもあるんですよね。

斎藤:視聴者の方からちょっと Q & A で2つあるので簡単な方から先に話をしていくと本日の資料は後ほど共有とかダウンロードとかできますか。

市川:はい。

斎藤:どこかに公開しますか。

市川:そうですね。スライドシェアが良いですかね。

斎藤:そうですね。ノートでスライドシェアとか、後ほどアーカイブする時にメールアドレスを出すことはできるんですけど、市川さんのメールに届いてもご迷惑にならないですか。

市川:そうですね。

斎藤:いくつかの経路でノートでスライドシェアとか使われるか、当社このページに Eメールアドレスを挙げるか。

市川:はい。ありがとうございます。

斎藤:もう1つの方が継続開示の観点から新しいことを出すことに不安を感じます。次回以降の開示の工夫をどうしたらいいかというところを気にしています。現時点ではそれを考えなくてもいいというふうにお考えか、継続開示の観点もちゃんと考えるかですね。

市川:先ほどJR東海のように毎月出しているのならいいんだけれどもそうじゃない場合ですよね。1つの手法としてはこれは今回限りですっていうようなことを口頭で説明しながらお伝えするのであったり、これは今回だけのご参考のためにだったり、今後も必要であれば継続して開示します。どちらかというと今回だけって言った方がいいのかもしれないですね。おっしゃる通り同じ指標をずっと出すことが望ましいことは確かではあるんですけれども、それに必ずしもとらわれなくてもいいんじゃないかなという風に思っております。

市川:今の1つ目のポイント、データで伝えるって言うことはお互いにちょっと冷静になるっていう効果があります。

キャッシュ・イズ・キング

市川:そして2つ目のポイントは、キャッシュです。キャッシュ・イズ・キングと言います。平時には現金持ってないで還元せよとか、もっと投資リターンの高いものに使えと言われたりします。しかし今はどのぐらいキャッシュがあって、どのぐらい続くのかって言うことを聞かれます。でもこれは矛盾していないですね。いつもいつも還元ばっかり言うじゃないかっていう方がいらっしゃるかもしれませんが、配当してもしなくても会社の現金は株主のものです。なので平時にはその現金をどう使うかを聞いていますけれども今のような状況、そもそも会社がなくなってしまったら株主としては取り返せないわけですから、とにかく会社が続くっていうことがもう必要最低限の事なので、それを聞いているって事なんですね。

市川:手元現金がどのような状況で追加で資金調達したら、それも未実行であっても、借り入れ枠を設定しましたよっていうのも必要な情報です。ベンチャーであれば、いわゆるランウェイというような、あと何か月事業継続が可能なのかという情報、そこまで逼迫していなかったとしても参考資料でいいので自己資本比率・流動性比率、どのような考え方で追加の資金調達行おうとしているのか。流動性比率、一般的には200%と言われていますけれども250、300まで上げますというような言い方だったり、格付けはこの辺まで行けるというようなことでもいいんじゃないかなと思います。

オリエンタルランド、厚い手元現金をアピール

市川:事例オリエンタルランドさんです。東京ディズニーリゾート休園中です。再開の目処も立っていません。しかし日経新聞だったり東洋経済であったり、もともとこの会社の厚い手元現金っていうのはニュースになっています。日経新聞の言い方だと1年程度の休園でも無借金で持つということを分析されています。これに加えて500億円の社債発行、1500億円の借入枠設定を発表しています。コアなファンがあること、そして財務基盤が盤石であるということからオリエンタルランドの株価は1月末とほぼ同じ水準に回復しています。2つ目のポイント、手元現金があるって言うことで安心感を与えることができます。

市川:それから3つ目、ここが一番あの大事なんですけれども事業戦略、変化への対応力。今本当に人と物も両方移動できなくて事業遂行が困難になっている部分もあると思います。逆にオンラインなんちゃらっていうのが急激に進展して機会の獲得になっている企業もあると思います。この数か月どう対応するのか、ここはまず皆さん考えてることを定性的にでいいのでお伝えするっていうことが非常に重要だと思っています。そしてその先 With コロナ、Afterコロナ、政府も新しい生活様式と言っていますけれども、もう明らかに社会の変化っていうのが起こっています。価値観であったり働き方であったり、行動パターン。新しいビジネスのチャンスだというふうに思う方もいらっしゃると思います。コスト構造を抜本的に改革したり、今が M & A の機会だったという風に後から思うかもしれないですし、今やっておかなきゃと思う方もいらっしゃるかもしれません。こういったことは価値創造のシナリオですから株価の評価に効くんですよね。でこれをこうしっかり言っていただきたいと思います。もちろんあの完璧でなくていいと思います。

日本電産は10年に1度の大掃除のチャンス、ピンチをチャンスに

市川:まず1つ目の事例、日本電産です。永守CEO、今までの50年間、全部考え方が違ってたみたいなことをおっしゃってましたよね。決算説明会資料のまず初めの方で地域別の日本電産の生産工場の操業率のトレンドっていうのを開示されていました。そのデータを見せた上で操業率の低い拠点が欧米に多く、その欧米拠点の抜本的なコスト構造改革を列挙しています。それが右のスライドですね。サプライチェーンの見直しとか色々なことを含んでいます。永守さんによれば、この状は最低1年続く、10年に1度の大掃除のチャンス。まさにピンチをチャンスと捉えていらっしゃいました。昨日のNHK のインタビューもあったので、とても興味深く拝見しました。

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後編へつづく

Withコロナウイルス時代の「大」資本改革