キャッシュレス決済を可能にするクレジットカードには、ビジネス専用のカードもある。さまざまなメリットが得られるので、企業のオーナーや個人事業主は作って損はないだろう。今回はビジネスカードの概要をはじめ代表的なメリットなどを解説していく。
ビジネスカードの事前知識
ビジネスカードの特徴を知るためには、法人カードの概要を知る必要がある。
法人カードとは、株式会社や有限会社、合同会社などの企業に対して発行するクレジットカードだ。また、法人格を取得していない個人事業主も対象に含めるカードもある。
カードの名義は個人事業主や企業に属している個人である。したがって、カードを使用できるのは、表面に氏名が記載されている者に限られる。
法人カードの支払いでは、法人口座や個人口座を利用する。法人カードを利用する個人事業主のほとんどは、個人口座からの決済を選択する。
企業によっては経費の精算用に社員名義の個人口座を作り、そこから引き落とすケースもある。
法人カードは、個人名義のカードと比べて利用限度額が高く設定される傾向にある。ただし、個人カードと違って一括払いが原則となっており、個人事業主以外はキャッシングを利用できない。
個人事業主の場合、法人カードにおいてショッピング枠とともに、キャッシング枠を設定できる。
法人カードは個人カードと同様に、VISAやMastercard、American Expressといった国際ブランドと提携しており、海外でも幅広く使用できる。アップルペイなどの自動決済サービス機能を搭載しているカードもある。
ビジネスカードとは?
カード会社によっては法人カードを区別している。中小企業や個人事業主などを対象としたカードをビジネスカード、中堅・大手企業を対象としたカードをコーポレートカードと呼ぶ。
ただし、中小企業・個人事業主向けを法人カード、大企業向けをコーポレートカードと称するケースもある。呼び方は違うが、機能が大きく異なるわけではない。
ビジネスカードには、個人カードと同様に利用額に応じてポイントが貯まるものがある。ポイントの分だけ経費や税金の支払い負担が実質的に軽くなる。
ビジネスカードを活用するメリット
ビジネスカードを使うメリットについて、個人事業主と中小企業のケースに分けながら検証する。
個人事業主がビジネスカードを活用するメリット
個人事業主が個人カードを用いると、プライベートと業務上の出費が混在してしまう。個々に明細を確認しなければならず、区別しづらい。
業務用にビジネスカードを作成すれば、支払い時点で公私を区別できる。
カード利用料金の引き落とし日に各経費の支払いを集約すれば、経費の状況も容易に把握できる。
さらに、カード利用料金の引き落とし日が月末だとすれば、本来なら月初に支払う経費について時間的猶予が得られる。つまり、支払いの繰り延べに結びつくケースもある。
中小企業がビジネスカードを活用するメリット
中小企業の場合も、経理作業を効率化できる点がメリットだろう。出張費の仮払いや精算手続きも不要になるほか、利用明細をデジタルデータで処理できる。
また、従業員が個人カードで経費を負担していると、個人事業主のケースと同様に公私の判別が困難になる。その点、ビジネスカードを使い分ければ経費の管理が容易になるだろう。
また、事務処理の煩雑さを解消し、手数料負担を抑えられる点も見逃せない。カード利用料金は預貯金口座から一括で引き落としされるため、経理担当が金融機関に依頼していた振込が不要になり、振込手数料を削減できる。
そのほか、個人のゴールドカードやプラチナカードと同様、ビジネスカードにも特典が付帯されることがある。優待サービスや海外・国内旅行傷害保険サービス、空港ラウンジサービスなどが良い例だろう。
コーポレートカードを活用するメリットとは?
コーポレートカードを活用するメリットは主に4つある。具体的なメリットは導入を検討する際に役立つだろう。
メリット1.経費の精算が楽になる
ビジネスカードと同様、コーポレートカードを活用すれば経費の精算や事務処理にかかる手間を大幅に省ける。
法人口座からの決済であれば、従業員が利用した代金はすべて法人口座から引き落とされるので、経理を一元管理できる。
メリット2.不正利用を認識できる
会社経営では、従業員の不正利用にも目を光らせなければならない。ビジネスカードであれば、利用者や利用日時、目的に関する記録が残るので、経費の透明性は高まる。
経費の精算用に社員名義の個人口座を作れば、不正利用のリスクは低下するかもしれない。しかし、精算手続きが発生するため、法人口座からの決済と比べて少々煩雑になるだろう。
メリット3.ビジネスに役立つサービスを利用できる
コーポレートカードには、従業員が出張する際の航空券手配や、タクシーチケット購入、企業間決済など、ビジネスをサポートするサービスが付加されている。
国内・海外旅行傷害保険が付帯されていれば、従業員の出張時に保険費用を軽減できる。
法人カードとともにETCカードを発行できるカード会社もある。自動車で営業する従業員の業務などを効率化できるだろう。
メリット4.利用条件を交渉できる
コーポレートカードの場合、年会費や利用可能枠の設定について、企業とカード会社が交渉できる。社会的に信用力の高い企業であるほど、より有利な条件を引き出せるだろう。
ビジネスカードの与信調査
ビジネスカードに入会を申し込むと、個人カードと同様に与信調査が行われる。個人カードの場合は、利用者の職業や収入、借入の有無などが調査される。
法人カードでは代表者の信用力とともに、企業や個人事業主が実施する事業の状況も審査の対象となり、決算書や登記簿の提出が求められることもある。
したがって、設立直後で最初の決算期を迎えていなかったり、業績が芳しくなかったりすると、与信審査を通過できずにカードを作れない恐れもある。
ただし、設立直後の企業を対象とするビジネスカードもあり、作成できないわけではない。
支払い方法によって、与信審査が異なるケースもある。法人口座からの決済だと、企業の代表者やビジネスの状況が審査される。個人口座からの決済であれば、従業員ごとに与信調査が実施される。
過去に携帯電話料金の支払いを延滞した場合、その事実が信用調査機関に記録されることもある。したがって、従業員によっては発行できない場合もあるだろう。
中小企業・個人事業主の49%超がカード決済を利用
ビザ・ワールドワイドが実施したカード決済に関するアンケート結果が2016年12月に公表された。対象は従業員規模300人未満の中小企業・個人事業主であり、ビジネス系クレジットカードの認知度は70.0%に達していた。
調査対象の49.3%が業務上の支払いに個人用を含むカード決済を利用していたこともわかった。
ビザでは、2014年からB2B(企業間取引)専用決済システム「Visa Business Pay」を展開しており、こうした個人事業主や中小・中堅企業向けのクレジット決済サービスも普及しつつある。
参考:ビジネスデビットカード導入意向は27.4%
(VISA公式ホームページ)
ビジネスカードを作って業務を効率化しよう
キャッシュレス決済を用いれば経理処理を迅速化できるほか、別部門のデータを一元管理することも可能だ。
業務の効率化という観点では、ビジネスカードを作って損はないだろう。会計ソフトや顧問弁護士サービスを優待価格で利用できる特典が付くカードもある。ビジネスカードを上手に活用してみてはいかがだろう。(提供:THE OWNER)
文・大西洋平(ジャーナリスト)