実は前回の原稿を書き上げて以降も別途「ESG投資」についてインタビューの依頼が来た。なぜ今そんなに「ESG投資」が話題なのか、正直筆者にはピンとこない。察しの良い読者の皆さんには、主題である「ESG投信を個人投資家は買うべきか?」の答えが見えてしまったかも知れないが最後までお付き合い頂きたい。

企業調査はディープに、徹底的に行ってきたが…

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(画像=ElleAon / pixta, ZUU online)

筆者は現役のファンドマネージャーの頃、企業調査の為に直接企業に足を運び、その施設内に入れて貰って、多くの人にインタビューをさせて貰うことが楽しくて仕方なかった。一方、多くの運用会社の企業調査のやり方は、証券会社のIR専属チームなどを頼り、投資先(候補先を含む)等の会社社長やCFO(最高財務責任者)、或いはIR関係者を自社に呼びつけたり、証券会社が主催するホテルの小部屋などで行われるスモールミーティングに出席する形で、インタビューをするほうが多い。今でもこの傾向は変わらない筈だ。何故なら、そうしたIRイベントの開催件数が次期の発注シェアに関わるので、証券会社もミーティング獲得に必死だからだ。だが、筆者は面倒でも、移動時間が無駄だと言われても、現地に自ら赴くことを好んだ。勿論「インタビュー回数」という実績を稼ぐには呼びつけたほうが効率は良い。だが筆者は日本でも米国でもドイツでも、自ら足を運ぶ方法を選んだ。

なぜ現地に自ら赴くかと言えば、実際に企業の本社、或いは工場などに立ち入ることで、その場の「風」や「におい」を感じることが出来たからだ。皆さんも経験がある筈だ。三井住友銀行とみずほ銀行の店内、どちらも基本は同じサービス内容にもかかわらず、違う「風」や「におい」を感じる筈だ。極端に言えばそれが「社風」だ。それを肌で感じ分けることが好きだった。時には社食やカフェテリアでランチをご馳走になったりもした。物見遊山ではなく、食事時のリラックスした社員の雰囲気に、その企業をより感じることが出来たからだ。

残念ながら1998年にテレビのレギュラーコメンテーターを務めるようになってからは、徐々に面が割れていき、あまり日本企業で隠密調査は出来なくなったが、欧米の企業なら全く影響は無かった。何をお伝えしたいかと言うと、筆者が企業調査をする時は、相当ディープにその企業に入り込んで何度も調べあげて回ったということだ。

ならばESGに関して真の姿を把握出来たか?