新型コロナウイルスによる経済的な被害は、いまだ全世界的に拡大している。感染者数は相変わらず増加傾向にあり、先行きは不透明だ。そうした時代、富裕層は資産運用についてどのように考えればいいだろうか。日本、米国、スイスのプライベートバンクに11年間在籍、現在は独立して富裕層の資産形成サービスを手掛ける「ウェルスパートナー」代表の世古口俊介氏をナビゲーターに、具体的なノウハウをご紹介する連載「富裕層の資産運用マル秘テクニック」。第3回は「債券投資」について見ていこう。

キャピタルゲインとインカムゲイン

富裕層の資産運用マル秘テクニック#3
(画像=CORA/ pixta, ZUU online)

債券投資といえば、株式と並び富裕層が必ず投資する2大金融資産の1つであるにもかかわらず、詳しい人は意外に少ない。そこで、債券という金融資産を理解してもらうために株式と比較することから始めてみたい。

まずは株式投資と債券投資の最大の違いは「投資目的」だ。株式は、保有資産が2分の1や3分の1になるリスクをとって、2倍、3倍にするリターンを狙う、いわゆる「キャピタルゲイン(値上がり益)」が主な目的となる。一方の債券は、2倍、3倍になることはほぼない。その代わりに年間4%、5%という安定した「インカムゲイン(定期収入)」を得るのが目的だ。

そのため富裕層は、株式よりも債券に多く資産を配分することが多い。というのも、すでに10億円規模の資産がある富裕層は、大きなリスクをとって資産を殖やしたいと考えないからだ。

世古口氏は、「例えば保有資産が10億円ある場合、債券運用で4〜5%の利回りを確保すれば、毎年4000万〜5000万円を手にすることができ、十分生活できる。つまり富裕層は、無理をして資産を殖やす必要がないので、債券投資の割合が多くなる」と指摘する。

株式は業績、債券は倒産確率で価格が決まる

価格の決まり方も、株式と債券とでは大きく違う。株価は、会社の売上高や利益といった業績に加え、今後の成長性によって価格が形成されるのに対し、債券は投資する会社がどのくらいの確率で倒産するかという倒産確率で決まる。

わかりやすい例が、ソフトバンクグループの株価と債券価格だ。ソフトバンクGは、米ベンチャーでオフィススペースを個人や中小企業などに小分けにして貸すコワーキングスペース事業を展開していたWeWorkに投資していたが、不正会計などが明るみになり創業者の一人が辞任、上場も取りやめになった。

そうした事態を受けて、ソフトバンクGが2018年に投資した際に5兆円だった株価評価は2兆円まで一気に下がった。それに伴ってソフトバンクG自身の株価も、一時、ピークから25%も下がった。

ところが債券価格は、なんと2〜3%しか下がらなかったのだ。つまり市場関係者は、「WeWorkの件でソフトバンクの業績は悪くなるが、倒産まではしないだろう」と考えているわけだ。だからこそ株は大幅に下がったものの、債券はそこまで下げなかったのである。こういった株式との比較からも、安定投資を好む富裕層が債券に投資する理由がわかるだろう。

金利はすでに死んでいる

ここまでで債券が株式と異なり、安定的な運用に向いていることはわかっていただけただろう。しかし最近は、債券投資家を困らせる大変な事態が起きている。金利がないのだ。

リーマンショック以降、各国が進めた低金利政策が理由なのだが、それにコロナショックを乗り切るために各国がさらなる追加緩和を行ったことが拍車をかけている。以下のグラフは2006年から2020年までの各国の10年国債の利回り水準、いわゆる代表的な「金利」だが、利回り0%台の国が皆無だった2006年と比較すると、2020年は半分近くまで増えているのがわかる。

このように金利がないということは、インカムゲイン(定期収入)が発生しないことを意味する。そのため、債券に投資する意味がなくなってしまっているのだ。

10年国債利回り
(出典:日本経済新聞)

金利を生み出すことは不可能ではない

だが、この低金利で債券に投資することは無意味なのだろうか。世古口氏は「そんなことはない」と断言した上で、「金利を生み出すことは可能だ。たとえ低金利でも債券に利回りを生み出す2つの方法がある」と指摘する。その1つは「ハイブリッド証券」、そしてもう1つは「新興国通貨建て債券」だというのだ。