(本記事は、越川慎司氏の著書『新時代を生き抜くリーダーの教科書』総合法令出版の中から一部を抜粋・編集しています)
会議パワハラ
こんな会議を経験したことはありませんか?
会議出席者の中で一番偉い人から「何か良いアイディアを出せ!」と言われて、会議室がシーンとなったこと。その後に、偉い人と目が合ったメンバーが指名されて、勇気を出して発言したものの否定されてしまうケース。「インスタで拡散して集客すれば良いと思います!」と若手のメンバーがアイディアを出し、「そんなの競合他社がやっているから意味がない」とマネージャーがダメ出しをするケースです。
「では、既存の顧客にメールで招待するのはどうでしょうか?」と他のメンバーが勇気を出してアイディアを出したのに、「それは前回やったから無理」と間髪入れずにマネージャーが返す……。段々と発言数が減り、アイディアが採用されることもないので、次の会議に持ち越されるといったパターンです。このような進め方では、アイディアを出す人はいなくなります。これが会議パワハラです。
クロスリバーではクライアント企業の会議を総計7000時間以上記録して分析しています。成果が出ていないチームは、このようなアイディア出し会議をしがちであることが分析結果からわかっています。
では、どうすれば良いのでしょうか。それは会議の種別とファシリテーション(仕切り方)を理解することで解決できます。会議の種別は、「情報共有」「アイディア出し」「意思決定」の3つの目的に集約できます(図2)。
先ほどのように、アイディアを出したら否定され、またアイディアを出したら否定されという会議は、「アイディア出し」と「意思決定」の会議が同時に行われてしまったことで成果が出ていないのです。この問題を解決するのはシンプルです。「アイディア出し」と「意思決定」の会議を分けるだけです。そうすれば、アイディアの量が増え、会議時間自体も11%節約することができます。
「アイディア出し会議」は、アイディアの量にこだわるのです。「何か良いアイディアを出せ!」ではなく、「何でも良いからアイディアを出してみよう」と問いかけ、最初に「くだらない意見」を取り上げるのです。
そして、最初の意見に対して称賛や歓迎のコメントをすれば、参加者は「そんなアイディアでも良いのか」と思い、次々にアイディアが出るようになります。アイディアがたくさん出れば、意思決定のための材料が揃うので、結果としてアウトプットが出るわけです。この一連の仕切りをするのがファシリテーターです。ファシリテーターはリーダー自らが行うのではなく、将来のリーダー候補に指名したり、毎回ローテーションをすることでチーム力を高めることもできます。
そして「意思決定の会議」で重要なのは、決定すべき人が必ず参加して必要最低限の人数で開催することです。まず会議の冒頭で決定方法を定めてから進めていくことで結論が出ます。多数決なのか、投資対効果で決めるのか、実現可能性を優先すべきなのか、それとも最も上級職の人が決めるべきなのか……といったことをはじめに決めてから「意思決定の会議」を進めるのです。そのように進めれば結論が出ます。
リーダーとして求められるのは、不必要な会議を減らすこと。椅子に座っていることが目的の会議は一掃してください。その上で、「意思決定」と「アイディア出しの会議」を同時に行わないこと。「アイディア出しの会議」では、我慢して口を挟はさまず、どんな意見でも受け入れる姿勢でいてください。その上で「意思決定の会議」で、評価軸を明確にしてから結果を出す、これが会議の成功ルールです。
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