「ん? ポッドキャスト?」「そう、ポッドキャスト。ロックダウン中にはまっちゃったの」そんな友人の言葉に刺激され、筆者も今更ながらSpotify(スポティファイ)でポッドキャストを聴くようになった。欧州は新型コロナの感染「第2波」の渦中にあるが、家族との巣ごもり生活が続く中、炊事、洗濯、掃除、そして原稿の執筆を効率的にこなすのは中々大変である。もともと集中力に欠ける筆者であるが、その時の気分に合った情報や音楽を「ながら聴き」できるのは大きな魅力だ。

さて、Spotifyといえば、スウェーデン発の世界最大の音楽ストリーミングサービスだ。2018年には「DPO(直接公開)」という当時としては珍しい手法でニューヨーク証券取引所に上場し、話題を呼んだことは記憶に新しい。翌年には米ビジネス向けチャットツールのSlack(スラック)も同様の手法で上場し、DPOの知名度が一気に高まった印象を受ける。

そして現在、一般的なIPO(新規公開株)やDPOに続く手段として急拡大しているのが「SPAC (特別買収目的企業)」によるIPO(以下、SPAC IPO)だ。後段で述べるように、今年7月には著名なヘッジファンド・マネージャーで、ビリオネア投資家としても知られるビル・アックマン氏が設立した「パーシング・スクエア・トンティーン・ホールディングス」がSPAC IPO史上最大の40億ドル(約4177億1094万円)を調達して話題を呼んでいる。今回は米資本市場に新風を吹き込む、SPAC IPOについてリポートしたい。

「SPAC IPO」って何だ? IPO、DPOとの違いは?

SPAC,上場
(画像=metamorworks / pixta, ZUU online)

まず、IPOとDPO、SPACの違いを簡単に見てみよう。

IPO(新規公開株)

IPOは未上場企業が自社の株式を証券取引所に上場し、株式市場での売買を可能にすることである。投資家サイドから見ると、IPO投資は初値が「公募価格」よりも高くなるケースが多いこともあって人気が高い。投資家はブックビルディング期間(申し込み期間)に、IPO割り当てのある証券会社等から申し込んで抽選を待つ。そして、抽選に当選した場合にのみ「公募価格」で購入することができる。一方、上場する企業にとっては、(上場することで)直接金融市場から広く資金調達することが可能となるほか、社会的信用や知名度を高めるといったメリットがある。IPOは、上場に向けた審査基準をクリアするための手間やコストがかかるほか、大株主に一定期間の売却を禁じる「ロックアップ期間」が設けられる。

DPO(直接公開株)