本記事は、杉山卓也氏の著書『タクヤ先生のメンタル不調相談室』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
Q 朝起きた時からだるさが続き、体を動かせません。
2年ほど前から、朝起きた時からずっとだるく、起き上がるのにものすごく体力を使うほどです。
最初は一過性のものかな…と思っていたのですが、いつまでたっても改善する気配がなく、朝、出勤するまでがどんどん辛くなっていきました。
かかりつけの内科にかかっても特に異常は見つからず、紹介された心療内科に行ったところ、「軽度うつ」という診断を受けました。
2種類のお薬をいただき、飲み始めたところ、幾分良くなった気はしますが、やはり朝のだるさはとれません。
会社に行って仕事を始めると、午後にかけて次第に元気が出る傾向にあり、夜に家に帰る頃には、逆に「寝たくない」という気持ちになり、ついつい夜ふかししてしまいます。
そうなると、翌日にはまた、だるさでいっぱいの朝を迎えることになり…
眠れないわけではないのですが、まるで夜行性の動物のように、夜にかけて元気になってしまうというのは、何か原因があるのでしょうか。
もともと夜型で、眠るのは1時か2時位になっているのですが、この生活が悪いのでしょうか。
できればお薬を飲まずに、朝スッキリと目覚められるようになりたいな、と思っています。
先生、教えて下さい。
A 自分にとって最適な生活リズムを見つけることで、解決できます!
人間は本来他の多くの動物と同じく、陽の光を浴びて活動し、日が暮れるとともに睡眠に入る、というリズムを持っています。
ただ、近年の社会構造の変化により、遺伝構造の変異した「夜型人間」さんが現れている、という話もあります。
しかし、朝のだるさに襲われてしまうというのは、やはり今の生活がご相談者様に合っていないのだと思います。
自分に合ったリズムの見つけ方をお教えしたいと思います。
●ちょっと詳しく解説
朝起きられず、起きられたとしても強いだるさが続いてしまうようなタイプの多くは、起立性調節障害や昼夜逆転、睡眠障害などを原因としています。
これは、生活リズムの乱れに起因する場合もありますし、病気が潜んでいるケースもあります。
病気でないとしても、体質として「病態」である場合もあります。
いずれにせよ、こうした朝が辛いトラブルが長期で続いたり、次第にひどくなっていく場合には、まず病院での検査をオススメします。
ここで内臓や脳の異常が見つかれば、それに対しての治療を行う必要があります。
ただ、病院で異常が見つからない場合も多々あります。
例えば、学業についていけない、仕事のプレッシャーや対人関係に悩んでいる、など心身にプレッシャーがかかっている場合でも、こうした症状が起きます。
会社や学校に行こうとすると、腹痛、頭痛、吐き気などが起こるのがこのタイプです。
この場合は、こうした原因と向き合い、環境を変えるなど対策を講じる必要があります。
真面目で神経を使いやすい人に多いので、この場合は「行かなくてもいいよ」くらいの気持ちでいると改善することがあります。
同様に、生活リズムが狂っている場合は、夜早く寝て朝も早く起きる、陽の光を浴びて起きる、夜の強い光源(スマホやPC)は寝る1時間前には遠ざける、など、体内時計のリセットを行う生活リズム作りが有効です。
しかしながら、メンタルストレスや生活リズムには該当する問題が無いのにもかかわらず、こうした悩みが起こる場合があります。
これは、東洋医学では「フクロウ型体質」と呼ばれる特殊な病態の場合があります。
フクロウ型体質というのは、特に体の代謝に問題があるもので、朝が非常に苦手ですが、日中、特に午後三時以降になるとだんだん元気になってくる、というのが特徴です。
代謝を改善する漢方薬の服用が非常に有効な場合があります(この漢方薬は固有の体質を見る必要がありますので、専門家にご相談下さいね)。
西洋医学的な解析では、鉄欠乏性貧血や起立性調節障害がこのフクロウ型体質とリンクする場合があり、鉄剤の服用や良質なタンパク質の摂取などで改善する場合もあります。
いずれの場合でも知っておいて欲しいのは、「だるいのはいつもあなたが悪いわけではない」ということ。
もちろん生活習慣の乱れなど、ご自身の生活リズムに起因している場合は直せばいいのですが、体質的なことで自分の気合いだけではどうにもできないことが、世の中には多々あります。
なんらかの病態がある場合は、きちんと専門家が見れば対策が取れます。
でもそれを「気合いが足りない」とか「もうちょっとしっかりしなさい」などという、誰かの精神論で片付けようとしてしまえば苦しいだけです。
物事には必ず原因があり、それを改善すれば解決できるものばかりです。
今回の「フクロウ型体質」などというのも、知らない人がほとんどですよね。
でも専門家に相談すれば、原因があることに気づけるし、自分を責める必要もなくなる。
大切なのは、一人で抱え込んだり、精神論を押し付けてくる人に流されて「自分のせい」だと思い込んだりしないこと。
だから迷わず、専門家や専門機関に相談するようにして欲しいと思います。
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