本記事は、杉山卓也氏の著書『タクヤ先生のメンタル不調相談室』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
Q 他者と自分をすぐに比較しては落ち込んでしまいます。
自分なりに毎日頑張っているつもりではいます。
でも、いつもその後に、「あの人だったらもっとできるのでは…」とか、「あの人と比べたら私のしていることなんて意味の無いことなのかもしれない」などという思いが、出てきてしまいます。
こうなると、自分のやっていることがとても価値の無いもののように思えてしまい、場合によっては、「私の存在価値なんて無いんじゃないか」という気にすらなってしまいます。
人と比べることで辛くなるなら、比べるのを止めた方が良い、と周りの人も私を心配して言ってくれます。
実際、私もそのとおりだと思いますし、何度も人と比べるのを止めようと試みてきましたが、どうしてもうまく行きません。
自分のことがもともとあまり好きではない、というのもあるのでしょうか。
どうしてこういう思いが常に頭を支配してしまうのか、自分の中ですっきり理解できればいいのかもしれません。
自分のやっていることに価値を感じたいですし、自分がここで生きていてもいいんだ、と思いたいです。
こんな私はどういう考え方で生きればいいのでしょうか。良い方法があればぜひお伺いしたいと思います。
先生、教えて下さい。
A 他人と比較しない意識が幸せを作ります。
理屈では理解していても、実際にはなかなか思うようには行かないことってありますよね。今回のご相談もその一つだと思います。
こういう時には、「目線を変えること」が大事です。
「比べない方がいいのはわかっている」、でもできないのであれば、「比べてもいいこと」を自分の中で定義すると良いでしょう。
比べることを全て封じるのではなく、比べてもいいこと(こころの余地)を作るとうまく行きます。
具体的な方法を解説させていただきますね。
●ちょっと詳しく解説
どうしても他人と自分を比較してしまうという場合は、まず「比較することが悪い」という認識を改めると良いでしょう。
「比較しない方が良い」ということがわかっていたとしても、すぐに比較するクセを治すのは至難の業です。
その際には、「比較して良いこと」と「比較しない方が良いこと」をきちんと分類しておくことが大切です。
まず、比較しても良いことですが、これは、例えば他者との「切磋琢磨」という意識のもとに行うものです。
他者との競争で落ち込んだり嫉妬の感情を持ったりするのではなく、相手をリスペクトし、その人と肩を並べて同じことを行ったりする。
こういう状況下では、「切磋琢磨してより良いものを作るぞ!」という前向きな気持ちが働き、やる気も起こりやすくなるので、メンタルがマイナスに働くことはあまりありません。
反対に、比較しない方が良いことというのは、比較のしようがないものです。
例えば、まるで別の仕事をしていたり、全く異なる環境にいたりするのに、「あいつの方が待遇が良い」とか「収入が良い」とか「幸せそうだ」という比較を行うこと。
これには全く生産性がありません。
働いたり生活したりするフィールドが違えば、得られるものが違うのは当然ですよね。
ここに対して比較を行うのは、野球選手が将棋の棋士を羨むようなものです。
なにより、人間が何を幸せに思うのか、というのは個々に全く違います。
だから、あなたの求めている幸せをあなたの目線で見て、自分よりも多く持っていそうな人に対して嫉妬や劣等感を感じたところで、それはあくまでもあなた目線のものでしかなく、一方的なものであるはずです。
そして、あなたにとって嫉妬の対象になっているような、「自分より優れている」と見ている人も、必ずその人なりの悩みを持っているものです。
仮にあなたがもし誰かと比較して、「○○さんになりたい」と思ったとして、実際にその人になったとしましょう。
でも、そうなったらほぼ確実に、あなたはあなたがなりたいと熱望していた○○さんの生活にも何らかの悩みを見つけ、そしてまた違う誰かと比較を始めることでしょう。
ただ単に羨んだり、自分と他者に優劣をつけるだけの「比較」には、終わりがありません。
だから、他者との比較を続けている限り、あなたは決して満足することはなく、常に何かしらの不安やストレスを抱え続けて生きることになります。
それなら、比較を許された「前向きに誰かに『負けないぞ!』と思う気持ち」を持って切磋琢磨することを、やはりオススメしたいと思います。
僕自身、何を隠そう、昔はすぐに自分と他人を比較し、「あんな人になれたら幸せだろうな」という思いに囚われていました。
でも、ある時に「そんなことを考えているくらいなら、あの人のようになれるためにはどうしたら良いかを考えた方がいいな」と、どうやったら毎日を楽しく、幸せに暮らすために自分を磨いていけるのか、という方向に思考転換を行いました。
その結果、今では他者と自分を比較することは、ほぼ0になっています。
あなたも今日の自分が幸せでいるために、上手に比較すべきこととすべきでないことを分けてみて下さい。
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