本記事は、杉山卓也氏の著書『タクヤ先生のメンタル不調相談室』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

Q 毎晩スマホでどうすれば眠れるのかを調べています。

不眠
(画像=PIXTA)

長く、慢性的な不眠に悩んでいます。

いつも「今日も眠れなかったらどうしよう」という不安に怯えており、どうすれば眠れるのか、という情報を寝る直前まで調べています。

毎日のようにネットで調べた「眠れる方法」を試しているのですが、どの方法を試しても、一時的には良くなる場合もあるのですが、継続して眠れるようにはならないので、本当に辛いです。

「夜が来るのが怖い」という思いで毎日過ごしています。

そうなるとベッドに入るのすら怖くなってしまい、できるだけ夜ふかしをして、明け方近くになってようやくベッドに向かう…ということも増えてきました。

もちろん、こうなると睡眠不足になってしまい、今度は日中に眠気と戦うことになり、仕事にも支障をきたしている状態です。

どのような調べ方をすれば、よく眠れるための情報を見つけることができるのでしょうか?

どこかに私がきちんと眠れるような情報はあるのでしょうか?

先生、教えて下さい。

A 情報過多が不眠を作りますよ。

今は情報社会ですよね。

本当に簡単にいつでも誰もが地球のあらゆるところにある情報にアクセスし、瞬時に膨大な情報を手に入れることができます。

でもね、だからこその弊害もたくさんあると思います。

典型的な例が今回のお悩みのようなケースです。

「どうすれば眠れるのか」

ご相談者様はこの解答を探し続けていますが、実はこの行為自体が、不眠を生み出しているのです。

●ちょっと詳しく解説

自分自身で解決方法がわからないものというのは、どうしても誰かの知識や知恵を借りたくなりますよね。すごくよくわかります。

でも、世の中には正しい情報、誤った情報が混在している上に、「ある人にとっては正しいけれど別の人にとっては誤った情報」というものもたくさんあるわけです。

専門知識の無い方が、そうした膨大な情報の中から自分に合ったものを正しく選び、活用していくというのは、極めて難しいことですよね。

そうなると多くの人は、「正しいと思える情報」を選んでは、片っ端から試していくことになります。

でもね、これはとても精神的な消耗につながってしまう行為なのです。

試しても試してもうまくいかない、でも情報は次から次へと見つかる。

これを繰り返していくうちに、こころも体も疲弊してしまいます。

そして更に良くないのが、答えの出ないものを検索し続けることにより、ますます眠状態が頑固になってしまう、ということ。

残念ながらこれは間違いなく起こります。

なぜでしょうか?

質の良い睡眠を得ようと思った時には、夜の時間にしっかりと副交感神経が優位になっている必要があります。

「自律神経」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、自律神経というのは、「交感神経」と「副交感神経」と呼ばれる二つの神経から成るもので、僕らが日頃、無意識のうちに行っている生理活動のバランスコントロールを担ってくれています。

日中の活動時間には交感神経が優位になることで、体は常に適度な興奮状態を保ち、外的なストレスに向き合うことができます。

反対に、夜の時間になれば交感神経の代わりに副交感神経が優位になることで、体をリラックスさせたり、睡眠に誘ったりしてくれます。

交感神経と副交感神経のバランス、スイッチングが滞りなく機能していることが、僕らのこころと体の健康を保つ上で、欠かせない条件なのです。

ところが、夜の時間になっても情報をスマホで検索し続けてしまえば、副交感神経が優位になることができず、ずっと交感神経による興奮状態が続いてしまうことになります。

眠るための情報を検索する行為自体が睡眠を阻害する、という、なんとも皮肉な結果につながってしまうのです。

夜の時間は考え事をしないこと。ゆっくりと湯船に浸かったり、静かに音楽を聴いたり、気持ちの落ち着くアロマを炊いたり、ホットミルクやココアを飲んだり…

部屋をきちんと暗くして、ゆっくりと目を閉じて深い呼吸を意識する。

こうやって副交感神経が自然に優位になる環境を整えてあげることが、何よりも不眠の解消につながります。

不安な気持ち、イライラする気持ちは、常に交感神経を優位にしています。

「副交感神経さん、あとはよろしくね」とつぶやいて考え事をやめ、静かにベッドに体を預ける。

スマホは就寝1時間前には閉じておくと良いですね。

タクヤ先生のメンタル不調相談室
杉山卓也(すぎやま・たくや)
薬剤師/漢方アドバイザー。神奈川県座間市にある「漢方のスギヤマ薬局」にて「あらゆる人生相談に乗れる漢方薬剤師」をモットーに、メンタル、子宝、子ども、ペットなど、ひとりひとりに寄り添った漢方相談を受けるかたわら、講師として年100回を超えるセミナー・講座を開催。また、漢方専門店「成城漢方たまり」、中医学や薬膳、経済学まで1年間で学べる「tamari 中医学養生学院」の経営や、漢方薬局経営者向けのコンサルティングも積極的に行う。中医学界初のオンラインサロンである「タクヤ先生の中医学オンラインサロン」も爆発的な人気を博している。『不調が消える食べ物事典』(あさ出版)、『漢方でわかる上手な「こころ」の休ませ方』(三笠書房)、『タクヤ先生、漢方でこころを元気にする方法、教えて下さい!』(ワニブックス)など著書多数。神奈川中医薬研究会会長、星薬科大学非常勤講師、合同会社Takuya kanpo consulting代表。

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