新年のスタートに相応しく、珍しくすっきりと片付いた部屋で本稿を執筆中だ。筆者が長年続けている日本の習慣「年末の大掃除」の成果である。大掃除の由来である宮中の行事「煤払い(すすはらい)」に従うと、本来は12月13日に行うのが正しいとのことだが、「新しいチャンスを迎えるために不要なものを排除する」という自分なりの解釈に従って、毎年大晦日の行事にしている。ため込み体質の筆者にとっては、絶好の断捨離の機会でもある。
実は投資の世界でもこのような「入れ替え」が定期的に行われている。景気と成長分野の変化を見据えて投資対象(セクター)を入れ替える「セクター・ローテーション(Sector Rotation)」がそれだ。今回はセクター・ローテーションの基本的な考え方と実践方法を紹介しよう。
セクター・ローテーションの基本的な考え方
株式、為替、コモディティ、不動産など資産クラスにかかわらず、市場参加者の関心や競合環境は常に変化し続けている。背景には景気循環と呼ばれる周期的変動が指摘され、たとえば好況・後退・不況・回復の4つの局面の影響を受けているとの考え方もある。一概には言えないが、市場に好まれるセクターは景気循環の各局面で異なり、たとえば景気の拡大局面では設備投資関連、下落局面では景気の影響を受けにくいインフラや医薬品銘柄が好まれやすいとの説もある。
また、ある特定のセクターやテーマに投資マネーが集中し、バブルが発生することも珍しくない。たとえば1990年代後半に米株式市場を中心に起きたドットコム・バブル(ITバブル)だ。当時はIT関連ベンチャーが次々と登場、投資マネーを呼び込み、1996年に1000前後で推移していたナスダック総合指数は2000年3月には5000を超える場面も見られた。その後、ドットコム・バブルは崩壊、関連企業が相次いで破たんし、2002年には1000台まで下落している。米金融アドバイザリー企業モトリーフールのメディア部門のブライアン・ペリー氏は、当時の状況について、ドットコム・バブル崩壊と入れ替わるように金融やエネルギー、不動産セクターが急上昇したと指摘している。
このような景気循環や市場人気などの「変化の兆し」を早期に見極め、有望なセクターを中心にポートフォリオを組み換える投資方法が「セクター・ローテーション」だ。