長引く新型コロナウイルスの流行は、さまざまな業界に影響を及ぼしている。生活密着度の高いコンビニやスーパーも例外ではない。この記事では、大手のコンビニとスーパーの売上の推移を追い、小売業に与えている影響を数字で読み解いていく。

スーパー2社とコンビニ2社の売上高の推移を比較

ファミマは164億の赤字? コロナで大打撃のコンビニ、スーパーの現状を徹底解説
(画像=RobbinLee/stock.adobe.com)

では、イオン(イオンリテール)とイトーヨーカ堂のスーパー2社、ファミリーマートとローソンのコンビニ2社をピックアップし、2021年2月期(2020年3月~2021年2月)の売上高の推移を見ていこう。各社とも数値は前年同月比(%)を表す。

企業名2020年3月4月5月6月7月8月
イオンリテール87.479.589.695.692.091.2
イトーヨーカ堂90.570.183.210198.899.9
ファミリーマート92.584.886.291.789.791.9
ローソン93.388.089.690.191.289.5
企業名9月10月11月12月2021年1月2月
イオンリテール80.7100.594.994.092.190.8
イトーヨーカ堂89.0106.9100.798.998.994.6
ファミリーマート94.5103.210196.895.591.6
ローソン91.294.097.393.993.392.7

各社とも、傾向はおおむね同じようだ。新型コロナウイルスの影響が本格化し始めた2020年3月に数字を落とし、1回目の緊急事態宣言が発された4月に底を見せている。その後緩やかに回復し、秋ごろにはほぼ前年同期並みとなったものの、第3波が到来した年末ごろから再び悪化した。

なお、最新の2021年3月については、イオンリテールが102.5%、イトーヨーカ堂が102.2%、ファミリーマートが101.8%、ローソンが101.3%と、コロナ初年度の3月に比べ各社とも持ち直している。

スーパー・コンビニ各社の業績は?

次に、各社の2021年2月期決算を見ていこう。

イオンは連結で営業収益8兆6,039億円と前年並みを計上したものの、リーマンショック以来12年ぶりとなる710億円の赤字となった。ただし、内⾷需要の獲得でスーパーマーケット事業単体では、営業利益506億円(前期比135.7%増)の黒字となっている。

一方、イトーヨーカ堂を擁するセブン&アイ・ホールディングスは、連結で営業収益5兆7,667億円(同13.2%減)、当期純利益1,793億円(同17.8%減)となった。このうちスーパーストア事業は、営業収益1兆8,109億円(同2.1%減)、営業利益296億円(同39.3%増)の減収増益だ。イトーヨーカ堂単体の営業利益は77億円となっている。

ファミリーマートは、2020年11月に上場廃止したため決算資料ではなく業績概況を参照するが、営業収益は4,733億円(同8.5%減)、当期利益は164億円の赤字決算となった。なお、事業利益は人員数適正化をはじめとした販売管理費減少により、712億円(同10.4%増)となっている。

ローソンは、連結で営業総収入6,660億円(同8.8%減)、当期純利益は86億円(同56.8%減)と減収減益となった。なお、セグメント別の経常利益は、コンビニ事業のローソンが261億円(同42%減)、スーパーマーケット事業の成城石井は111億円(同22%増)と前年を上回ったようだ。

どうコロナ禍を戦い抜く戦略を立てているのか

さらに、各社の戦略ビジョンを見ていこう。

イオン:ネットスーパーの受け取りサービスの実施店舗を拡大

イオンは、コロナ対策として「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」を策定したほか、需要が急増したネットスーパーの受け取りサービスの実施店舗を拡大したり、フルセルフレジ・セミセルフレジの導入を進めたりした。2021年度は、新たな中期経営計画のもとデジタルシフトなどを進め、200~300億円の黒字化を目指すとしている。

イトーヨーカ堂:店舗の構造改革やDXの推進

イトーヨーカ堂は、コロナ禍による消費行動の変化に伴って「ワンストップショッピング」のニーズが高まっていることを受け、店舗の構造改革を進めている。

グループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、配送効率の最適解の追求に向け、ECプラットフォームと連動する「ラストワンマイルDXプラットフォーム」の開発も進めているようだ。

ファミリーマート:在宅需要に対応した商品を拡充

ファミリーマートは、惣菜や冷食といった在宅需要に対応した商品を拡充するなど、消費動向の変化に対応しながら収益力を強化していく方針だ。2021年度計画では、営業収益を微減に留めつつ経営効率化を図り、当期利益810億円の黒字を目指すとしている。

ローソン:フードデリバリーサービスを強化

ローソンは、巣ごもり消費や買いだめ需要に対応した取り組みとして、強みのデザートや「まちかど厨房」の商品強化を図るとともに、需要が高まった生鮮品・冷凍食品・日配食品・酒類・常温和洋菓子の5つのカテゴリーで商品拡充を進めている。

また、コロナ禍でニーズが高まるフードデリバリーサービスを強化する。従来から展開してきた「Uber Eats(ウーバーイーツ)」に加え、2020年11月からは「foodpanda(フードパンダ)」の導入も開始しており、サービス導入店舗数は2021年2月末時点で1,472店舗にまで拡大している。

好調なスーパーに対し、減益目立つコンビニ

全体的には、コンビニ・スーパーともに内食需要の取り込みなどで客単価を高め、収益力を高めている印象だ。コンビニ・スーパーの比較では、コンビニの減益が目立つ。多店舗展開しているコンビニは、スーパーに比べ経営効率化・合理化を図りづらい面がありそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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