「老眼ですね。いえ、冗談ではなく。いやいや、近視の人は老眼にならないっていうのは嘘ですよ。間違いありません。あなたは正真正銘の老眼です。ふふふっ」メガネ屋の店員がそう言った。筆者は近視なのだが、最近メガネやコンタクトレンズを着けると、スマホの画面やお店のメニューが見えない。で、メガネ屋に相談に行ったところ、その店員に老眼と宣告されたのだった。それまで、近視の人は老眼にならないと思い込んでいただけに、軽い衝撃で一瞬意識が遠のくような思いだった。それにしてもこの店員、どことなく楽しそうである。客に老眼を宣告する際はいつも「ふふふっ」と笑っているのだろうか。
憮然としていると、その店員は遠方と近方の焦点を調節してくれる多焦点レンズなるものを勧めてくれた。さらにその店員、フレームを選ぶ段になって「サステイナブル(持続可能な)な素材のものがよいですか」と聞いてきた。「ん? どうゆう意味?」と聞き返すと、「リサイクルのプラスチックを使ったフレームとかパッケージがリサイクル素材のものとか、今は色々あるんですよ。ふふふっ」と説明してくれた。英国からオランダに引っ越して1年あまり、この国ではメガネ屋にまでサステイナビリティが浸透しているとは、まったく驚きである。
だが、よくよく考えてみると、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが活発化している現在、社会の至る所で「サステイナビリティ」という言葉を耳にするようになっても何ら不思議ではない。ESGを推進するためには、企業はもちろんのこと、消費者や投資家の意識の変化も求められるが、近年は個人資産10億ドル以上の「ビリオネア」によるESG投資も活発化している。そこで、今回は富裕層や超富裕層、そしてビリオネアも含めた「ESGアプローチ(ESG Approach)」の話題をお届けしたい。