資産10億円以上の富裕層が実践する一棟不動産投資(前編)
(画像=PIXTA、ZUU online)

保有資産10億円以上の富裕層はドラスティックな資産拡大もしくは相続対策のために、一棟不動産に投資することが多い。マンション一室などの区分不動産は保有資産額に対するインパクトが小さいので、富裕層であればあるほど投資金額が大きくなる一棟不動産に投資するわけだ。

今回は以下のように前編、中編、後編の3回にわけて、富裕層が実践する一棟不動産投資について紹介する。

前編:一棟不動産投資の対象となる物件の収益性、立地、構造、種類、築年数などの選定戦略について
中編:一棟不動産投資成功の鍵である不動産担保ローンの借入戦略と最近の銀行融資事情について
後編:実際の一棟不動産を例にした投資シミュレーションと注意すべきリスク点検の方法について

今回も、日本を始め米国やスイスのプライベートバンクに11年間在籍し、現在は富裕層の資産形成サービスを手掛けている株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口俊介氏に話を聞いた。(聞き手:菅野陽平)

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世古口俊介
世古口俊介(せこぐち・しゅんすけ)
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイス銀行(クレディ・スイス証券)のプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。2017年8月に内藤忍氏と共同で資産デザインソリューションズを設立し、代表に就任。500人以上の富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や日経新聞、東洋経済、ZUUなどメディアへの寄稿を通じて日本人の資産形成に貢献。

物件のソーシング(選定)戦略が重要

まず一棟不動産投資を行うにあたり、「どういった物件に投資するべきか」の条件を決めて物件を探す必要がある。自分が求めている物件のソーシング(選定)の条件を決めることが不動産投資の第一歩だ。

このソーシングをしっかり決めずに不動産投資を進めると、本来の目的に合わない物件の分析に無駄な時間を使うことになってしまう。最悪の場合、そのような物件を購入してしまう可能性もある。

世古口氏に、株式会社ウェルス・パートナーで実際に不動産投資のお手伝いをした投資家の事例を紹介してもらった。選定条件を決める前に、不動産投資を検討している投資家の前提条件を確認しよう。投資家の状況や希望によって、投資すべき物件が異なるからだ。

【状況】
□50代のオーナー経営者Aさん(男性)
□家族構成:配偶者、子ども2名
□保有純資産10億円(自社株式は含まない)
□資産のほとんどが現預金や株式など金融資産
□自宅以外の不動産投資は未経験

【希望】
□借入を活用した不動産投資による効率的な資産形成
□会社引退を見据えた役員報酬以外のインカムゲイン収入の確立
□相続税や自社株式を含めた長期的な資産承継対策

まずは投資目的を設定

上記をもとに、まずは本不動産投資の投資目的を設定する。