株式投資の大きな魅力の1つが「株主優待」です。とりわけ、高配当と優待を兼ね備えた銘柄は、実質利回りで有利になる場合も少なくありません。高配当の株主優待株には、どんなものがあるのでしょうか。本記事では、3月、9月に株主優待の権利が確定する銘柄を中心に、実質利回りのランキングとあわせて、解説します。
配当と優待のもつ意味
上場企業には株主に利益を積極的に還元する企業も少なくなく、高配当と株主優待を実現させているところもあります。
市場低迷時に心強いインカムゲイン
投資による利益には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2つがあります。株式の売買などで、買値よりも高く売れた場合に得られる売却益をキャピタルゲイン、保有しているだけで得られる配当金や株主優待などはインカムゲインといいます。高配当の銘柄は、市場が低迷して値上がりが見込めない時期もインカムゲインをもたらしてくれます。
株主優待も市場の動向からの影響を受けませんが、その企業が販売する商品・サービスの割引優待や、商品やノベルティなどのモノを配当する場合は、受け取る人のライフスタイルや趣味嗜好によってその価値は変わってきます。現金で分配される配当は、銘柄を長期保有する有力な要因となりえます。
どこからが「高配当」?
では、どの程度の利回りが高配当に該当するのでしょうか。第四北越証券の調べによると、2020年11月16日現在の東証一部予想平均配当利回りは、加重平均(時価総額に占める配当金総額の率)で2.01%となっています。ここでは予想配当利回り3%以上を高配当に分類します。
高配当でなおかつ株主優待を実施している銘柄は、インカムゲインを狙うには最適な投資先となります。配当利回りと優待利回りを合わせた数値を「実質利回り」または「総合利回り」といいます。配当利回り3%以上と条件を決めて優待株を探せば、実質利回りはさらに向上します。
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配当・優待の注意点
配当利回りが高い、優待利回りが高いというだけで、すぐに飛びつくのはリスクがあります。業績に比して無理な配当を出していたり、株主還元とは別の目的で優待を実施していたりする場合があるからです。
配当は「配当性向」をチェック
配当利回りが高いのは魅力ですが、会社の業績と比べて高すぎる場合は注意が必要です。配当を続けられる財務体質かどうかは、「配当性向」という指標をみれば判断できます。たとえば1株当たり純利益が9円しかないのに、10円の配当を実施していたら、配当性向は111%になります。100%を超える配当性向は、会社の内部留保を食いつぶしていることを意味し、この状態が続けば財務状況は悪化します。
株主優待は「目的」と「必要」で判断しよう
株主優待狙いの投資で安定したインカムゲインを得るには、継続性が重要です。会社によっては、東証一部への昇格のために必要な株主数を満たす目的で、一時的に優待を実施する場合があります。このような場合、一部に昇格したとたんに廃止されることもあり、注意が必要です。優待が廃止されると、優待目的で保有していた株主の多くが売却するため、株価も下落する可能性が高まります。
また、そもそも優待内容が自分に合っていなければ、どれだけ優待利回りが高くても無価値に等しくなります。見た目の優待利回りではなく、内容をよく調べることが大切です。
高配当の株主優待銘柄【3月】
配当や優待を受けるには、「権利確定日」までその銘柄を保有していることが条件となります。多くの企業は決算期の前に権利確定日を設定しているので、3月と9月に権利確定する銘柄が多くなっています。
まず、3月権利確定の株主優待のなかから、配当利回りが3%以上、優待利回りが計算可能という条件で選出した実質利回りランキングをみてみましょう。数値は株主優待と配当の専門サイト「楽しい株主優待&配当」のものを参考にしています。利回りや株価はいずれも2020年12月11日現在の数値です。利回りは最小単元株数で得られる優待分の数値となります。
(1)日神グループホールディングス(8881):実質利回り13.69%
【データ】権利確定3月、配当金16円、配当利回り3.91%、優待利回り9.78%、株価409円
【優待内容】優待利回りの基準=4,000円
- 100株以上 日神不動産が売主となる新築マンション購入契約時に1%割引、平川カントリークラブ平日プレー割引券2000円分2枚
- 500株以上:日神グループホールディングスプレミアム優待倶楽部ポイント3,000ポイント(保有期間2年目以降は10%ポイント増量。以下同)
- 600株以上:同4,000ポイント
- 700株以上:同5,000ポイント
- 800株以上:同6,000ポイント
- 900株以上:同7,000ポイント
- 1,000株以上:同8,000ポイント
- 2,000株以上:同1万5,000ポイント
(2)大成建設(1801):実質利回り12.65%
【データ】権利確定3月、配当金130円、配当利回り3.50%、優待利回り9.15%、株価3,715円
【優待内容】優待利回りの基準=3万4,000円
- 100株以上:軽井沢高原ゴルフ倶楽部プレークーポン券2,000円相当2枚
- 1,000株以上:同5,000円相当2枚
- 100株以上:工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券1万円券3枚(3年以上継続保有は3万円券3枚)
- 1,000株以上:同3万円券3枚(3年以上継続保有は5万円券3枚)、簡易地震リスク診断申込書1枚
(3)一蔵(6186):実質利回り12.16%
【データ】権利確定3月、配当金14円、配当利回り3.87%、優待利回り8.29%、株価362円
【優待内容】優待利回りの基準=3,000円
- 100株以上:下記A-Cのなかから1点選択
A:和装店舗での割引券(10万円以上購入の場合は1万円割引、10万円未満購入の場合は5,000円割引)
B:結婚式場でのコンサート&ディナー、ランチの3,000円割引券(1枚で2名利用可)
C:レストランでの飲食代金3,000円割引券(1枚で2名利用可)
(4)SANKYO(6417):実質利回り9.33%
【データ】権利確定3月・9月、配当金150円、配当利回り5.60%、優待利回り3.73%、株価2,679円
【優待内容】優待利回り基準=1万円(5,000円×年2回)
- 100株以上:吉井カントリークラブプレー割引券土・日・祝日5,000円相当、平日1万円相当
- 1,000株以上:同全日プレーフィー無料券1,000株につき1枚
- 1万株以上:同全日プレーフィー無料券一律10枚
(5)第一交通産業(9035):実質利回り9.31%
【データ】権利確定3月・9月、配当金25円、配当利回り4.23%、優待利回り5.08%、株価591円
【優待内容】優待利回り基準=3,000円(1,500円×年2回)
- 100株以上:株主優待クーポン券1冊(タクシークーポン券1,000円相当、分譲マンション販売価格2%割引券、戸建て住宅販売価格2%割引、リフォーム請負価格の3%割引、自動車整備工場の整備工賃・アクセサリー販売価格10%割引、高齢者施設の体験宿泊料金50%割引、DAIICHIダイナミックゴルフ利用券500円分)※マイホーム割引は1,000株以上の株主本人のみ利用可
- 600株以上:同2冊
- 1,000株以上:同3冊(3年以上保有は1冊追加)
- 2,000株以上:同5冊(同3冊追加)
- 3,000株以上:同8冊(同4冊追加)
- 4,000株以上:同10冊(同5冊追加)
- 5,000株以上:同13冊(同7冊追加)
- 6,000株以上:同15冊(同8冊追加)
- 7,000株以上:同18冊(同9冊追加)
- 8,000株以上:同20冊(同10冊追加)
- 9,000株以上:同25冊(同13冊追加)
- 1万1株以上:同30冊(同15冊追加)
(6)アビスト(6087):実質利回り7.45%
【データ】権利確定3月、配当金102円、配当利回り3.33%、優待利回り4.12%、株価3,060円
【優待内容】優待利回り基準=1万2,600円
- 100株以上:浸みわたる水素水1カ月分(500ml 30本、定価1万2,600円)
- 200株以上:同2カ月分
- 1,000株以上:同5カ月分
(7)サックスバーホールディングス(9990):実質利回り7.35%
【データ】権利確定3月、配当金30円、配当利回り5.51%、優待利回り1.84%、株価544円
【優待内容】優待利回り基準=1,000円
- 100株以上:1,000円相当のオリジナル商品(トートポーチ)
- 1,000株以上:1万円相当のオリジナル商品(ショルダーバッグなど4点から選択)
(8)ワールド(3612):実質利回り6.95%
【データ】権利確定3月・9月、配当金59円、配当利回り4.61%、優待利回り2.34%、株価1,280円
【優待内容】優待利回り基準=3,000円(1,500円×年2回)
- 100株以上:公式ECサイトで使用できる優待券1,500円相当
- 300株以上:同5,000円相当
(9)エクセディ(7278):実質利回り6.90%
【データ】権利確定3月、配当金60円、配当利回り4.60%、優待利回り2.30%、株価1,303円
【優待内容】優待利回り基準=3,000円
- 100株以上:カタログギフト3,000円相当
(10)めぶきフィナンシャルグループ(7167) 実質利回り6.62%
【データ】権利確定3月、配当金11円、配当利回り5.39%、優待利回り1.23%、株価204円
【優待内容】優待利回り基準=2,500円(1,000株のため、投資額は20万4,000円)
- 1,000株以上:2,500円相当の茨城県・栃木県特産品
- 5,000株以上:同4,000円相当
- 1万株以上:同6,000円相当
高配当の株主優待銘柄【9月】
続いて9月権利確定の銘柄(3月と重複する銘柄は除く)から、実質利回りランキングをみてみましょう。
(1)サカイホールディングス(9446):実質利回り7.94%
【データ】権利確定9月、配当金25円、配当利回り4.41%、優待利回り3.53%、株価567円
【優待内容】優待利回り基準=2,000円分
- 500株以上:オリジナルカタログギフト2,000円相当
(2)第一興商(7458):実質利回り5.81%
【データ】権利確定3月・9月、配当金113円、配当利回り3.08%、優待利回り2.73%、株価3,665円
【優待内容】優待利回り基準=1万円(5,000円×年2回)
- 100株以上:株主優待券500円券10枚またはCD1枚
- 1,000株以上:同500円券25枚またはCD2枚
(3)オートバックスセブン(9832):実質利回り5.75%
【データ】権利確定3月・9月、配当金60円、配当利回り4.31%、優待利回り1.44%、株価1,392円
【優待内容】優待利回り基準=2,000円分(1,000円×年2回)
- 100株以上:オートバックスセブンギフトカード1,000円分(1年以上保有)
- 300株以上:同5,000円分(1年以上3年未満保有)、8,000円分(3年以上保有)
- 1,000株以上:同1万円分(1年以上3年未満保有)、1万3,000円分(3年以上保有)
(4)ノエビアホールディングス(4928):実質利回り5.61%
【データ】権利確定3月・9月、配当金205円、配当利回り4.69%、優待利回り0.92%、株価4,370円
【優待内容】優待利回り基準=4,000円(2,000円×年2回)
- 100株以上:ノエビアグループ商品セット2,000円相当
- 1,000株以上:ノエビアグループ商品セットまたはノエビア商品フリーチョイス2万2,000円相当
(5)アサンテ(6073):実質利回り5.51%
【データ】権利確定3月・9月、配当金60円、配当利回り4.13%、優待利回り1.38%、株価1,453円
【優待内容】優待利回り基準=2,000円(1,000円分×年2回)
- 100株以上:三菱UFJニコスギフトカード1,000円分
(6)タナベ経営(9644):実質利回り5.48%
【データ】権利確定9月、配当金43円、配当利回り3.23%、優待利回り2.25%、株価1,333円
【優待内容】優待利回り基準=3,000円
- 100株以上:オリジナル手帳「ブルーダイアリー」(3,000円相当)1冊
(7)大和証券グループ本社(8601) 実質利回り5.47%
【データ】権利確定3月・9月、配当金22円、配当利回り4.63%、優待利回り0.84%、株価476円
【優待内容】優待利回り基準=4,000円(2,000×年2回)
- 1,000株以上:以下のA-CおよびWeb申込限定品から1点選択
A:名産品、雑貨2,000円相当
B:「会社四季報」1冊
C:寄付2,000円相当
- 3,000株以上:同2点選択
- 5,000株以上:・名産品、雑貨5,000円相当/・「会社四季報」2冊/・寄付5,000円相当から1点選択
- 1万株以上:同2点選択かWeb申込限定品(1万円相当)から1点選択
(8)ティーガイア(3738):実質利回り5.23%
【データ】権利確定3月・9月、配当金75円、配当利回り4.13%、優待利回り1.10%、株価1,818円
【優待内容】優待利回り基準=2,000円(1,000円×年2回)
- 100株以上:QUOカード9月1,000円分(1年以上保有は+1,000円分)、3月1,000円分
- 300株以上:同9月2,000円分(1年以上保有は+1,000円分)、3月1,000円分(1年以上保有は+1,000円分)
(9)アイナボホールディングス(7539) 実質利回り4.89%
【データ】権利確定9月、配当金36円、配当利回り3.83%、優待利回り1.06%、株価941円
【優待内容】優待利回り基準=1,000円
- 100株以上:QUOカード1,000円分
(10)パラカ(4809) 実質利回り4.66%
【データ】権利確定9月、配当金55円、配当利回り3.42%、優待利回り1.24%、株価1,610円
【優待内容】優待利回り基準=2,000円
- 100株以上:QUOカード2,000円分
まとめ:高配当の株主優待銘柄で、超低金利時代に着実な運用を
紹介した20銘柄は、超低金利時代に4.54~13.69%の実質利回りとなっており、魅力的といえるでしょう。QUOカードやギフトカードなどの金券優待は、配当と同じ効果がありますし、優待券も使う頻度が高いものであれば、インカムゲインの1つとみなすことができます。
高配当の株主優待銘柄に投資する際は、配当の支払いに無理がないか、優待内容があまりに手厚すぎないかをチェックする必要がありそうです。優待が廃止、もしくは縮小された場合は、株価も急落するリスクをはらんでいるからです。
また、3月優待の1、2、4位は、いずれもゴルフ場プレー割引の優待です。実質利回りは高くなりますが、ゴルフに行かない人にはあまりメリットはないといえます。ただし、これらの銘柄は配当利回りが3~5%あるので、優待を使わなくても実質利回りは高めです。
株式の値下がりリスクが気になる方は、高配当の株主優待株で安定したインカムゲインを狙う戦略も、
一考の価値がありそうです。
※本記事は2020年12月の情報をもとに制作しています。実際の銘柄選びにおいては最新の情報をご確認ください。
文・丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。
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