本記事は、大橋高広氏の著書『リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています
コンセプト共有法
●「なぜそれをやるのか」を理解していない
職場の問題を、いったいどのようにすれば把握できるのか。
現在、クラウドシステムを導入して対応しようとする企業が増えています。しかし、本書ですでにお話しした通り、それでは表面的な問題しか抽出できません。
そこで、この章では管理職や上司が、職場の問題を聞き出すための具体的なテクニックを一つひとつ紹介していきたいと思います。
まず1つ目が、「コンセプト共有法」です。
そもそも、部下が会社から提案されるあらゆる施策に消極的な理由は、「なぜそれをやるのかを理解していない」ところにあります。
理解していないから、「忙しいのになぜやらなければいけないのか」「必要性を感じないからやる気が出ない」という反発が生じてしまうわけです。
代表的なのが1on1ミーティングの導入です。部下が実施の意義を理解していない状況で、会社の指示で個別面談を始めたところ、「何も話すことがない」無為な時間を繰り返してしまう、というケースがよくあります。
事前に目的とゴールを伝えておく
面談だけでなく、ミーティングや研修でも、事前に目的とゴールを伝えておくことが重要です。特に、普段からコミュニケーションに乏しい上司と部下であれば、なおさらコンセプトの共有は必須です。
面談をする場合は、冒頭で目的とゴールを伝えるのではなく、数時間前、数日前などに伝えるのがポイントです。「面談の目的は○○で、ゴールは□□だから、それについて事前に考えておいてほしい」と伝えておきます。
その際、口頭+メールで伝えておくのがベストです。というのもメールだけで伝えると、細かなニュアンスを共有できないことから相互理解が不足し、目的やゴールについての認識がズレてしまう可能性があります。
また、口頭だけだと、「そんな話は聞いていない」「いや、事前に伝えたはずだ」の水掛け論に陥ります。そのため、口頭とメールの両方で伝えておくと、そういったリスクを低減できます。
●正しく目的を伝えれば協力してもらえる
具体例をもとに考えてみましょう。
職場で残業が多いことが問題になっているとします。残業は単に「早く帰れ」とアナウンスするだけでは、基本的にほぼ減りません。
「なぜ残業が増えてしまうのか」という原因にさかのぼり、しっかり分析・改善する必要があります。
そこで、上司が職場のメンバーと個別に面談しようと考え、次のように声をかけました。
「残業を減らすために、面談をしていきたいと思う」
すると、ほとんどのメンバーからこんな反応が返ってきました。
「業務が山積みで忙しいので、改善の余地なんてないですよ。それとも、お願いすれば人員を増やしてくれるんですか?」
このように残業を減らす相談を持ちかけると、忙しさをアピールする人が目立ちます。忙しさをアピールしておかないと、自分だけ楽をしているのではないかと疑われるかもしれないと警戒している可能性があります。
このため、このようなケースでは、事前に目的が人事評価ではないことを明言しておく必要があります。
「あくまで残業削減のために業務量を把握するのが目的だから、人事評価の対象にはならない。だから、面談の前に平均的な1日の行動を分刻みで書き出しておいてほしい」
あらかじめこのように正しく目的を伝えた上で、面談に移行していきましょう。
POINT 会社が良かれと思ってやっている人事評価や面談や研修などの施策も、スタッフには何の目的があるのか伝わっていないことがほとんど。しかも、集合して全員に伝えても、理解していないことばかり。本当に重要なことは1対1で伝えなければ、深く理解させることはできない。逆に目的を本当に理解すれば、積極的に動いてくれるスタッフは多い。
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