負担率は今後上がる?下がる?
少子高齢化が進む日本では、国民負担率は今後上がることが容易に予想できる。たとえば、国が税金で整備する社会インフラや公共施設などは、利用者が少なくなればなるほど1人当たりの負担は増える。高齢者が増えれば当然、現役世代の負担も増える。
もちろん、インフラや社会保障の充実度を今より下げれば国民負担率の上昇が抑えられるが、今よりこうした水準を落とすことには反対する国民も多そうだ。
国民負担率の国際ランキング
このように日本の国民負担率は年々上がっているが、先進諸国と比べて高いのだろうか、低いのだろうか。2020年度(一部の国は2017年度もしくは2019年度)の数字を使い、経済協力開発機構(OECD)加盟36ヵ国を対象に以下の通りランキング化してみた。
1位はルクセンブルクで84.6%、2位はフランスで69.9%、3位はデンマークで65.9%であり、トップ3はいずれも欧州の国がランクインしている。最下位の36位となったのがチリで23.9%だ。
日本の順位は22位(47.9%)で、21位のアイルランド(48.7%)と23位のエストニア(47.3%)に挟まれている。アメリカは32.3%で日本よりはるかに国民負担率が低く、お隣の韓国も27位と日本よりは低い状況だ。
ヨーロッパ諸国では高い税金を支払うかわりに、医療や教育が無償化されている国が少なくない。
日本は重税国家ではないものの…
このように見ると、日本は決して税金の負担が大きい国というわけではない。消費税も先進諸国と比べると低い。では今後についてはどうだろうか。
残念ながら、あまり良い見通しは立っていない。少子高齢化がさらに加速することによって社会保障負担率はもっと上がっていき、それに比例して国民負担率も高まっていく。
一方、「潜在的国民負担率」という概念でも考えてみよう。潜在的国民負担率とは、国民負担率に将来世代の税負担になる財政赤字の比率を加えた比率を加えたものだ。
財務省によると、2022年度の潜在的国民負担率は実績見込みで61.1%、2023年度は53.9%となる見通しだという。日本は先進諸国に比べて国民負担率と潜在的国民負担率の差が大きく、財政赤字が将来世代への大きなツケとなっている状況である。
ちなみに潜在的国民負担率は、この10年、以下のように推移している。
税金の高い低いだけではなく、「使われ方」も重要な視点
この記事では国民負担率の高さについて論じてきたが、税金が高い低いかだけではなく、税金が国民のために効率的に使われているかどうか、という視点も重要だ。では日本の場合、国民負担率は低めだが、税金は国民のために効率的に使われているのだろうか。あなたはどう思うだろうか。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)