M&Aにおける会社法と商法

M&Aにおいては、商売を譲渡する場合は商法が適用される余地があると考えられる。景気が好調・低調時のどちらにおいてもM&Aが活発に行われているのが現状だ。M&A専門で事業活動を行うコンサルタント会社も多くM&Aは、現在ビジネスとなっている。しかしM&Aは事業を譲渡する側も買収する側も会社であることが多い。

また、株式取得や株式交換、株式移転、合併、会社分割などさまざまな方法がある。会社に関係するM&Aは、すべて会社法の手続きに則って行い、会社法に抵触しない方法で行う必要がある。そのためほとんどの場合、会社法を使用することになるだろう。

直近の会社法改正の内容

主に対応する企業は、大企業が中心になると思われる。しかし近年の株価の上昇は、日本経済に大きな影響を与えるだろう。中小企業のなかには、大企業の下請け業務を行う企業が多いため、中小企業であってもまったく関係ないとはいえない。そこで、商法と関連性の深い会社法の改正内容について簡潔に紹介しておこう。

会社法は、たびたび改正が行われているが、その一部を改正する法律が2019年12月4日に成立している。ここでの法改正は、2021年3月から施行されたものと2022年9月に施行されたものの2つだ。2021年3月からは「取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備」「監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け等」が代表的なものとしてあげられる。

・取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備

取締役に対する報酬内容の決定手続きなどで、透明性を向上させ、業績に連動した報酬を適正に取締役に付与することを目的に会社法の規定が整備されている。これによって定款や株主総会の決議で取締役の個人の報酬内容が具体的に定められない場合、取締役会でその内容の決定方針を定めなければならなくなった。

報酬を株式や新株予約権で付与する場合には、定款や株主総会の決議に株式や新株予約権の数の上限を定めることが求められる。また上場会社が取締役の報酬をその企業の株式の発行で支払う場合には、金銭の払い込みを必要としないこととしている。そのほか、会社補償や役員のために締結される保険契約に関する規律も整備されている。

・監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け等

上場会社等が社外取締役を置かなければならなくなったことは、上場企業に大きな影響を与えるだろう。また取締役と株式会社の利益が相反するケースでは、その取締役が業務執行を行うことによって株主の利益を損なう可能性がある。そのため株式会社は、その都度取締役会の決議によって社外取締役の資格を失わせることなく業務の執行を社外取締役に委託できるようになった。

2022年9月からは「株主総会資料の電子提供制度の創設」が施行された。上場企業は、ウェブサイトなどによって株主総会の資料を掲載するなど株主総会の資料を電子で提供する方法に対応しなければならなくなった。また会社の支店の所在地における登記も廃止されている。

・株主総会資料の電子提供制度の創設

株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会資料を自社のホームページのウェブサイトに掲載して提供する制度である。この制度を利用するには、ウェブサイトのアドレスを株主に書面で通知することが必要だ。これによって振替株式を発行する上場企業は、電子提供制度を利用しなければならないこととなった。

2023年3月1日以降に開催される株主総会から株主総会資料の電子提供制度を利用することになる。振替株式を発行しない非上場会社は、2022年9月1日以降、定款変更により株主総会資料の電子提供制度の利用が可能だ。株主がウェブサイト上で株主総会資料を閲覧できるようになれば、企業としては印刷や郵送のコスト削減が可能となり、大きなメリットがある。

株主にも早期に株主総会資料が提供されるメリットがもたらされる。

・会社の支店の所在地における登記の廃止

インターネットによる情報発信がしやすくなった現代においては、会社の支店登記の意味や必要性が薄れている。そのため2022年9月以降、会社の支店登記が不要になった。これによって企業負担は、軽減されることになる。