仮想通貨(暗号資産)に対する認識は「怪しい投資」から「必要な投資」に変わりつつある。富裕層の資産形成や機関投資家の長期投資に活用されるようになったのがその証拠だろう。
今回は、富裕層向けに資産配分コンサルティングを行なっているウェルスパートナー代表の世古口氏に「仮想通貨投資」について説明してもらった。本記事では仮想通貨の現状と今後の見通し、お勧めの投資法、投資の注意点について紹介する(聞き手:菅野陽平)。
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仮想通貨の価格を支える2つの需要
2021年11月現在、仮想通貨の価格は2017年の第一次ブームを超える水準となっている。仮想通貨が現在の価格水準を維持できている理由には、「2つの需要が大きく関係している」(世古口氏)という。1つは「リスクヘッジ資産」としての需要、もう1つは「決済手段」としての需要だ。
第一次ブームの(2017年までの)仮想通貨の価格は、「投機(ギャンブル)」の需要でほとんどが成り立っていた。しかし現在は、この投機にリスクヘッジと決済という「リアルな需要」が加わったことで、底堅い値動きを維持しているわけだ。世古口氏によると、この2つの需要が今後の仮想通貨の命運を占う上で重要になるという。
金に代わるリスクヘッジ資産
富裕層や機関投資家などの長期投資家は、リスクヘッジのために仮想通貨に投資をすることが多い。何のリスクをヘッジ(回避)したいかというと、現状は「国家の財政リスク」である場合が多いだろう。
仮想通貨は、日本円や米ドルなどの通常の通貨のように国が発行していないため、国家の財政と関係なく存在し、独自に値付けされている。国の財政が悪化したり、破綻したりする可能性が高くなると通常の通貨は売却され、仮想通貨に資金が流れることが予想される。つまり、国の財政リスクが高まるほど、仮想通貨の価格は上昇する可能性が高いというわけだ。
「実際に2020年、2021年はコロナに対する経済対策で各国政府の財政支出が増えたことで、米国や日本をはじめとした先進国の借入残高は、第二次世界大戦後で最大の水準となった。それに伴い仮想通貨の価格も2019年から数十倍の水準となっている」と世古口氏は指摘する。国家の破綻も見据えて、資産の一部を仮想通貨に転換する動きが増えたことが予想される。
国家財政のアンチテーゼや地政学リスクに対するリスクヘッジという意味では、「金」と存在が近いが、「時価総額の大きさでは金に軍配が上がる。2021年9月時点で金が約8兆ドルなのに対し、すべての仮想通貨を合計しても約2兆ドルなので、現状では4倍の差がある」(世古口氏)。
しかし、価格上昇の勢いでは仮想通貨に分がある。金との上昇幅を比べると、「2019年から現在まで時価総額が数十倍になった仮想通貨に対して、金は2割上昇した程度」(世古口氏)だ。成長速度を考えると、近い将来、仮想通貨の時価総額が金に追いつく可能性は否定できない。
仮想通貨が法定通貨になる時代
決済手段としての仮想通貨の需要も増えている。中米のエルサルバドルが代表的な仮想通貨であるビットコインを法定通貨に採用したことは記憶に新しい。同国の国民は海外での出稼ぎが多く、海外から同国への送金も多いため、送金コストが安い仮想通貨を採用することで、経済を活性化させるという狙いがあるようだ。
また、「エルサルバドルにとって『米ドル依存』に対するリスクヘッジにもなる」と世古口氏は指摘する。もともと同国は米ドルを法定通貨に採用していた。自国通貨が安定しない新興国では、米ドルを法定通貨にするのはよくあることだが、それは物価変動に対応しづらいリスクや、米国の都合次第で米ドルが使用できなくなるリスクが伴う。
しかし、仮想通貨はマイニング(採掘)をすれば生産が可能だ。つまり、仮想通貨を法定通貨とすることで、同国は法定通貨を自ら発行することが可能になったわけである。実際に同国の大統領は大規模なマイニング計画を公表している。
世古口氏は「エルサルバドルのように仮想通貨を法定通貨に採用する国は今後も増えるだろう」と予想する。そもそも仮想通貨の大きな特徴は、法定通貨の取引に比べて、決済や送金のコストが低いことだ。決済や送金の手段というニーズが、今後も仮想通貨の価格の底堅さを維持する大きな要因となるだろう。
世古口氏お勧めの仮想通貨投資法
では具体的に、どの仮想通貨にどのように投資をしていくべきだろうか。