紙に欠かれた文字
(画像=Ystudio / PIXTA(ピクスタ))

SBI社長 北尾氏、新生銀の経営陣を痛烈に批判

2021年10月28日に開かれたSBIホールディングス(HD)の決算説明会。その席上で、SBIの北尾吉孝社長は新生銀行の経営陣を痛烈に批判した。

「これは建設的なTOBなんです。“ぼんくら”経営者には退場していただかなくてはならない」

北尾社長が「ぼんくら」という強い言葉を使ってまで新生銀行を批判するのには理由がある。SBIは9月9日から新生銀行に対しTOB(株式公開買い付け)を開始、新生銀行側が10月21日に反対意見を表明したことで、銀行業界初の「敵対的TOB」に発展したからだ。

TOBに突入するまでSBIは「純投資」として市場で断続的に新生銀行株を取得、議決権ベースで19%超まで保有していた。それを今回、約1100億円を投じて最大48%まで出資比率を引き上げることを目指すとしている。さらに今後、元金融庁長官の五味広文氏を会長候補に、SBIインベストメントの川島克哉社長(SBIHDの最高執行責任者=COO)を社長候補とするなど経営陣の刷新を求める方針だ。

そもそもSBIは2019年9月、新生銀行に資本提携を打診していた。「経営資源を有機的に結合し、総合金融グループを目指すこと」などを目的に、48%を上限に新生銀の株式を買い付けることを提案したという。事情に詳しい関係者によれば、SBIが進めている「第4のメガバンク」構想の中核に新生銀行を据えたいという思いがあって、資本提携を打診していたわけだ。

ライバルのマネックスとの提携がきっかけ

ところがだ。新生銀行は反旗を翻す。2021年1月にSBIと競合するマネックス証券と金融商品仲介業務で包括提携すると発表したのだ。新生銀行関係者によれば、「マネックスを選んだのは、経済合理性と協業の柔軟性」とするが、(新生銀行と)友好的な関係を築こうとしていた北尾社長はこの発表に怒り狂ったという。これをきっかけにSBIは対立姿勢を鮮明化。新生銀行が6月に開いた株主総会では、工藤英之社長など複数の取締役選任議案に反対票を投じている。

8月には、金融庁に対し、新生銀行の「主要株主」としての認可を申請。銀行法では、事業会社が銀行の株式の20%以上を取得するなど主要株主になる場合、政府の認可が必要と定められており、「株を買い増し、TOBに突き進む意思を鮮明にした」(新生銀行関係者)。これに対し、預金保険機構などを通じて(新生銀行)株を保有する金融庁は、TOBに応募せず、中立を貫くことを前提として、SBIの申請を認可する。

こうして始まったTOBだが、事前の協議がなかったとして、新生銀行は反発する。TOBに応じるよう株主に要請するかどうかの判断材料が不足している、としてTOBへの賛否を「留保」したうえで、TOB期間を12月8日まで延長するよう要請。さらにSBIの保有比率を下げて影響力を抑えるため、大量買い付け者、つまりSBI以外の株主に新株を配布するという買収防衛策を11月25日に開く臨時株主総会に諮ると発表するなど、両社の対立は鮮明になっている。

金融庁との“蜜月関係”でSBIのTOBは成功か

今回の買収騒動では、“場外乱闘”もにわかに騒がしくなってきている。