富裕層はどんな生活をしているのか、関心がある人は多いだろう。仕事で富裕層といい関係を築きたい人や、富裕層の仲間入りをしたい人は、彼らがどんな思考をし、どんな行動をしているのかを知れば、リアルな富裕層の姿を理解でき、自身の行動に役立てていけるはずだ。

筆者は、かつては野村證券の営業マンとして、今はファイナンシャル・プランナー(FP)として、のべ1,000名を超える富裕層と接してきた。また、私生活では、幼少期から大学卒業までをずっと学習院という私立学校で過ごした。学習院では、特に幼稚園や初等科(小学校)には、東京圏の富裕層の子息子女が集まるため、長年、数多くの富裕層ファミリーを友人という立場から見てきた経験もある。

本稿では、多くの富裕層と関わってきた筆者の見解や経験を踏まえつつ、富裕層の最大公約数的な特徴を解説したい。

目次

  1. 1. 富裕層とは「純金融資産1億円以上」
  2. 2. 富裕層の生活の特徴:金銭感覚の5つの特徴
  3. 3. 富裕層の生活の特徴:人間関係の3つの特徴
  4. 4. 富裕層の生活の特徴:家族・家に関する3つの特徴
  5. まとめ:富裕層の生活の特徴には、彼らを理解する手がかりがある

1. 富裕層とは「純金融資産1億円以上」

富裕層はどんな生活をしている? 金銭感覚や人間関係など11の特徴
(画像=PIXTA)

まずは、富裕層とはどのような人なのかを確認しよう。

富裕層の定義に関して、富裕層関連業界でよく引用されるのは、野村総合研究所の「NRI富裕層アンケート調査」だ。

【参考】NRIニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計」

同調査では、純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、純金融資産5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義している。

一般的に富裕層というときは、同調査における富裕層と超富裕層の両方を指すことが多い。本稿においても、特段の注訳がない限り、「富裕層」と記載したときは、超富裕層も含めた広義の富裕層(純金融資産1億円以上)を指すこととする。

▽純金融資産の保有額による広義の富裕層

2. 富裕層の生活の特徴:金銭感覚の5つの特徴

ここからは、富裕層の生活の特徴について、11の特徴を解説する。

ただ、富裕層とひと口に言っても、資産額や収入、属性が異なれば、生活スタイルは大きく異なる。「富裕層ならこのような生活をしている」と、一概には言えない。

極端な例では、「資産100億円で年収1億円の上場会社オーナー」と「資産3億円で年金生活のリタイアメント層」では生活が大きく異なることは、想像に難くないだろう。本稿で取り上げる特徴が、あくまで最大公約数的な内容であることは、ご容赦いただきたい。

まず、富裕層の金銭感覚に関する5つの特徴を見てみよう。

2.1. 富裕層の生活の特徴1:ROI(費用対効果)を重視する

「富裕層はケチ」と言われることがあるが、それは何ごともROI(Return on investment:費用対効果)を重視するためだろう。富裕層は、いくら資産があっても、ROIが見合わないものには一銭も出さない。

よく例に挙がるのが、飛行機のファーストクラスとビジネスクラスの選択だ。海外出張で飛行機を利用する場合、富裕層はROIの観点からビジネスクラスを選ぶケースが多い。なぜなら、「価格差の分の効果を回収できるか」という視点を持っているからだ。

ファーストクラスとビジネスクラスのサービスの質を比べたとき、たしかに質が高いのは前者だが、両者の質の差は、価格差ほどは大きくない。仮に値段が2倍違ったとしても、ファーストクラスだからといって、半分の時間で目的地に着くわけではないし、搭乗中の仕事の効率が2倍になるわけでもない。

一方、富裕層はROIが見合うものには高額であっても気持ちよく支払う。「富裕層はケチ」と言われやすいのは、富裕層のお眼鏡にかなわず、一銭も出されなかった商品やサービスが多かったからだろう。

2.2. 富裕層の生活の特徴2:売却価格を意識する

富裕層がROIとともに意識しているのは、将来、売却するときの価格だ。特に、車や時計、美術品といった高額商品を購入するときは、「セカンダリーマーケット(中古市場)でいくら売れるか」を重視する。

売却価格を意識すると、より高額な商品を選んだほうが、結果的にお得な買い物となるケースもある。たとえば、富裕層のなかには、高級スポーツカーのフェラーリを、売却価格の観点から購入する人も多い。

仮に、3,000万円のフェラーリと600万円の車を購入し、ともに3年後に売却する場合で比較しよう。フェラーリは供給量が限られているため価値が下がりにくく、3年後でも2,700万円で売れる一方、後者は型落ちして値下がりし、200万円で下取りされるとする。

この場合、3年間の実質的なコストは、前者は300万円、後者は400万円となる。つまり、高級車のフェラーリのほうが、安く乗れるという結果になるのだ。

ランニングコストはフェラーリのほうが高いと考えられるため、実際は売買価格だけで単純に比較することはできないが、富裕層が高級商品を購入する時に商品を手放す時まで見通していることを示す例だ。

2.3. 富裕層の生活の特徴3:消費の派手さはタイプによって異なる

前述の2つの特徴は、富裕層の買い物シーンでの思考について述べたが、消費の傾向や派手さは、富裕層のタイプによって大きく異なる。たとえば、一代で資産を築いた「セルフメイドリッチ」と、親からの資産を引き継いだ「バトンタッチリッチ」では、次のような違いがある。

セルフメイドリッチ型の富裕層の代表格は、創業社長だ。程度の差こそあれ、お金を持った段階で消費スタイルや生活様式が派手になるが、段々と落ち着いていく人が多い。

一方、バトンタッチリッチ型の富裕層の代表格は、2代目社長や3代目社長だ。幼少期から豊かな生活を送っていることが多いため、消費スタイルや生活様式は比較的落ち着いている人が多い。

2.4. 富裕層の生活の特徴4:「時間を買う」意識が強い

富裕層は、収入が比較的高い人が多い。言い換えれば、時間価値(時給)が高いということだ。富裕層の多くは、自身の時間価値の高さを理解しているため、時間を捻出するための工夫や出費は惜しまない。「時間を買う」という考え方が顕著に影響するのが、住まいや移動手段の選択だ。

バリバリ働く富裕層は、オフィスの近くに住む「職住接近」を実践する人が多い。一般的に、オフィスは都心部に構えることが多いため、その近くに住むとなると住居費がかさみやすい。しかし、職住接近では移動時間を短縮できるため、自分の時間価値を考えれば割に合うと考える富裕層は多いのだ。

たとえば、六本木ヒルズにオフィスを構える経営者が六本木ヒルズレジデンスに住んだり、東京ミッドタウンにオフィスを構える経営者がリッツカールトン東京(ザ・パーク・レジデンシィズ・アット・ザ・リッツ・カールトン東京)に住んだりするイメージだ。なかには、オフィスが入っているビルの違う階に住むという、究極の職住接近を選ぶ人もいる。

移動手段にも、富裕層の考え方が如実に現れる。運転が好きだから自らハンドルを握るという富裕層もいるが、一般的にはタクシーを利用したり、運転手を雇ったりするケースが多い。移動時間を後部座席で過ごせれば、ゆっくり仕事ができたり、休息したり、食事を取れたりするためだ。

このほか、高価な時短家電を購入したり、家事代行サービスを利用したりすることも、「時間を買う」意識の表れと言える。特徴1の「ROI(費用対効果)を重視する」とも関連する特徴だ。

なお、富裕層は自分の時間価値を理解しているため、待たされることを大変嫌う。富裕層を相手にする場合は、時間厳守を心がけたい。

2.5. 富裕層の生活の特徴5:健康や見た目にお金をかける

富裕層は、健康や見た目にお金をかけることが多い。パーソナルトレーナーの指導を受けてトレーニングに励んだり、洋服や靴、時計などのファッションアイテムにこだわったりしている。なぜなら、健康や見た目は収入を維持するために重要な要素だからだ。

まず健康は、時間価値と直結する。不労所得が大きいタイプの富裕層でない限り、働き続けないと高収入を維持できないが、健康が損なわれるとそれが難しくなる。特に、組織の重要なポストに就いている富裕層は、自身の健康を保って、適切な判断をどんどん下していかないと、自身の資産が毀損していくおそれもある。

次に、見た目にお金をかける理由はなんだろうか。「人の印象は最初の◯秒で決まる」といった話を聞いたことがある人も多いだろう。一般論として、ビジネスシーンにおいて第一印象は重要だ。第一印象を決める大きな要素が見た目であるため、見た目を磨くことにお金をかける富裕層は多い。単に贅沢をしているわけではないのだ。

3. 富裕層の生活の特徴:人間関係の3つの特徴

富裕層は、資産を守り、さらに増やしていくために、どのような人と付き合うかを重視している。富裕層の人間関係における3つの特徴を解説しよう。

3.1. 富裕層の生活の特徴6:初対面の人を信用しない

富裕層は、初対面の人をあまり信用しない傾向が強い。自分の資産を守るためだ。

富裕層になれば、自分に関する情報が、否が応でも多くの人に届くことになる。会社名が有名になれば、代表者(社長)も有名になり、その住所は会社の登記簿謄本は誰でも取得できるため、比較的簡単に調べられてしまう。

このため富裕層は、常に多くの営業を受けている。なかには、富裕層から高い手数料を取ろう、お金を騙し取ろうという魂胆がある人物も少なからず存在する。

筆者は、野村證券時代に、資産数十億円の富裕層から聞いた言葉が忘れられない。それは「人は簡単に信用できん。あいつらは、俺が必死で築きあげた金を、むしり取っていこうとするのだ」というものだ。富裕層から厚い信頼を得るためには、長い時間をかけて、真摯に関係を築いていく必要がある。

3.2. 富裕層の生活の特徴7:各分野で信頼できる専門家を見つけて任せる

富裕層は、前述のように初対面の相手には慎重になる一方で、各分野で相談できる専門家を求めてもいる。たとえば、富裕層は、資産管理をプライベートバンカーやFP、税理士といった専門家に任せる。最終判断は自身で下すことが多いが、戦略立案やアドバイスに専門家を活用しているのだ。

資産管理の専門家として多くの富裕層と接してきた筆者の印象では、富裕層は数字に強く、論理的思考が優れている人が多い。複雑な資産運用の提案でも、短時間で商品性やスキームの内容を理解する様子を、何度も見てきた。それなりに時間をかけて学べば、自分自身で資産管理ができるレベルに達する富裕層は多いはずだ。

しかし、富裕層は自分の時間価値を理解しているため、その分野に関して初歩から学んで実践するよりも、信頼できる一流の専門家に任せたほうが、効率がいいと判断している。また、人に任せることで時間の余裕ができ、自分の得意な領域に集中できるというメリットもある。筆者の経験では、富裕層の信頼を得たあとは、比較的自由にやらせてくれることが多かった。

資産管理以外にも、たとえば子供の教育は家庭教師に、専門領域ではない新規事業は信頼できるパートナーに任せるケースが多い。

3.3. 富裕層の生活の特徴8:富裕層コミュニティで交流する

「類は友を呼ぶ」という言葉がある。富裕層は富裕層どうし(特に経営者は経営者どうし)で、集まったり、連れ立って行動したりすることが多い。

その理由は、単純に価値観や金銭感覚が似ていて居心地がいいこともあるだろうが、富裕層ならでの悩みを相談できたり、新しい情報や刺激を得られたりすることも大きい。

実は、世の中には多くの富裕層コミュニティが存在する。高級会員制クラブの老舗であるアークヒルズクラブや、若い富裕層に人気の会員制コミュニティの六本木ヒルズクラブなどは、その典型例だ。東京ベイコート倶楽部といった、完全会員制高級ホテルも存在する。

【参考】アークヒルズクラブ
【参考】六本木ヒルズクラブ
【参考】東京ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート

地域レベルでは、経営者が集まる法人会やロータリークラブも多い。珍しいものでは、「フェラーリの会」など、特定の高級車を所有している人だけが加入できる組織も存在する。富裕層はこのような場でネットワークを広げ、新たなビジネスや投資につなげているのだ。

【参考】全国法人会総連合「全国の法人会について」
【参考】国際ロータリー「ロータリークラブ」

4. 富裕層の生活の特徴:家族・家に関する3つの特徴

富裕層の生活について、最後は家族や家に関する3つの特徴を見ていこう。なぜ教育や家にお金をかけるのか、その背景には、富裕層特有の考え方や事情があることがわかるだろう。

4.1. 富裕層の生活の特徴9:子供の教育に熱心

富裕層は、子供の教育に熱心であることが多い。これには2つの意味がある。

ひとつは、子供の人的資本(無形資産)を大きくすることで、一族が繁栄する確率を上げるためだ。人は誰しも、知識やスキル、資格、人脈、ブランド、健康、信用といった資本を有しており、この人的資本が収入を生むことになる。子供を熱心に教育して、人的資本を大きくしてあげれば、一族がますます繁栄する確率は高まるというわけだ。

もうひとつは、実質的な資産の移転につながるということだ。日本の税制上、富裕層に対する相続税負担は重く、相続財産が6億円超となれば税率は最高レベルの55%におよぶ。そのため、生前からの計画的な資産の移転が重要だ。

資産の移転には、生前贈与などさまざまな制度を活用できるが、資産が多いほど、制度の非課税枠を超える額も大きくなり、課税対象となる。だが、資産を子供の教育に使えば、課税されることはない。このため、親が子供の教育にお金を投じることは、実質的に親子間の非課税での資産移転になるのだ。

4.2. 富裕層の生活の特徴10:子供の代や孫の代まで考えて資産を管理する

富裕層は、基本的に子供の代や孫の代といった数十年先まで考えて資産を管理する。なかには100年後を見据える人もいる。

ただし、富裕層(純金融資産1億円以上)といっても、資産3億円の人と、資産100億円の人では、資産管理の考え方が異なる。本稿で資産管理について詳しく解説することはできないが、ひとつ言えることは、資産規模が大きくなればなるほど、遠い未来を見るようになるということだ。

たとえば、資産規模が非常に大きく、相続税の最高税率(55%)が適用されるような富裕層の間では、節税のために「一代飛ばし」という方法がとられることがある。相続時の課税回数を1回減らすことで、節税効果を狙うものだ。

具体的には、資産家の祖父(被相続人)が、自分の孫を養子にして、自分の子供だけでなく、孫にも資産を相続させるケースなどがある。

資産規模と見据える時間軸の関係性は、展望台に似ている。資産が増えれば増えるほど、高い展望台の上に立つことができ、遠い場所(未来)まで見えるようになるイメージだ。

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4.3. 富裕層の生活の特徴11:複数の家を所有する

富裕層は、複数の家(拠点)を所有することが多い。これは、軽井沢や伊豆といった別荘地に、休日を過ごす家を持つケースだけを指すのではない。

実は、普段過ごしている地域に、家族と過ごす家とは別に自分専用の家を持っている(借りている)人も多いのだ。たとえば、東京が主な活動エリアであれば、都内に家族と暮らす一戸建てを所有するとともに、都心部に自分専用のマンションを持つイメージだ。

複数の家を持つ理由は、さまざまだ。前述のように、法人オーナー系の富裕層は、法人登記簿謄本に住所が載ってしまうため、プライバシーを守るために法人登記謄本には別邸を登録する人もいる。また、資産管理会社を保有している富裕層も多く、会社の事務所や社宅として拠点を構えるケースもある。

家族と暮らす本邸が職場から比較的遠い場合は、職場の近くにもうひとつの拠点として別邸を構え、平日は別邸、休日は本邸で家族と過ごすパターンもあるだろう。

また、富裕層のなかには、家庭の外に「もうひとつの家庭」を持つ人もいる。いわゆる愛人だ。実際に筆者は野村證券時代、愛人を囲う富裕層と、その社長の愛人の2つの口座の管理を担当したことがある。「もうひとつの家庭」のために複数の家を持つ富裕層も、少なからず存在すると言える。

まとめ:富裕層の生活の特徴には、彼らを理解する手がかりがある

今回は、富裕層の生活について11の特徴を紹介した。

金銭感覚においては、商品・サービスの価格だけを見て判断するのではなく、ROI(費用対効果)が見合うか、売却価格はいくらになるか、購入することで自分の時間を増やせるか、といったことを考えている。どんな価値を買えるかを重視しているのだ。

人間関係では、相手を信用できるか時間をかけて見極めようとする一方、専門家の活用や富裕層どうしの交流には積極的だ。家族や家の所有に関しても、富裕層特有の考え方や事情がある。

富裕層とひと口に言っても、資産額や収入、属性が異なれば生活スタイルは大きく異なる。本稿で挙げた特徴は、あくまで最大公約数的なものであることはご容赦いただきたい。

ただ、最大公約数的な富裕層の生活を理解すれば、富裕層と接するときに大きな間違いを犯す可能性は減るだろう。また、富裕層になりたい人も、彼らがどのような思考回路を持ち、どのような行動をしているのか学ぶことで、富裕層になるためのヒントを得ることができるはずだ。