非上場株式に係る相続税の納税猶予制度
非上場の同族会社などで常に問題になる事業承継について、有利になる税制がある。2008年10月1日以降の相続に適用開始された、非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例だ。2013年度の税制改正で見直しが行われ、以下で紹介する制度は2015年1月1日以降に発生する贈与に関して適用される。
後継者である相続人などが、相続により先代経営者である被相続人から非上場会社の株式等を取得し、その会社の経営を引き続き行う場合には、その株式等の相続に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予される。
中小企業の事業承継においては相続財産の大半が換金性の乏しい自社株式であるケースが多い。納税資金の準備などで企業の資金繰りが悪化する弊害がおこるため、事業承継の円滑化を図る観点からこの制度は導入された。中小企業者の事業承継対策としては非常に有効な制度だが、適用要件などが非常に複雑だ。以下で細かく確認してみよう。
適用要件
対象となる会社や相続人、被相続人にはそれぞれ適用要件がある。対象会社は、上場していない従業員のいる中小企業者であり、風俗営業を営んでいない会社であることが主な用件だ。ここでの中小企業者とは中小企業基本法の中小企業で、おもに資本金などが3億円以下、従業員数300人以下の製造業等の会社が該当する。また、相続人については以下の2点要件がある。
相続開始から5カ月後において会社の代表者であること。相続開始時において、相続人および相続人と同族関係があり、総議決権の50%超を保有し、そのなかでも相続人が最も多く議決権数を保有していること。つまり、先代経営者が亡くなった5カ月後に社長などの代表に就任しており、相続人と直系血族等で議決権の過半数を持ち、なかでも相続人の議決権が一番多ければ適用されるということだ。
被相続人の用件は、会社の代表権を有していたことと、亡くなる直前に被相続人とその同族関係にあるもので議決権総数の50%超を保有、相続人を除いて最も多く議決権を保有していたことが要件となる。