本記事は、和田秀樹氏の著書『科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

やる気を起こさせる工夫

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

勉強のやる気を高める具体的な方法を、3つご紹介しましょう。

スモールステップ

人間は、達成できそうな目標であればやる気になりますが、困難に見えるものに対しては行動意欲がわかないものです。マラソン選手でも、先を走るランナーが視界に入っていれば、それに追いつこうと気合を入れて走ることができますが、先行のランナーが視界から消えた途端に失速します。

そこで、長期的な目標とは別に、たとえば「今週中にこの問題集をあと3ページやろう」というふうに、すぐ先に小さい目標を設定し、それをクリアしていくようにします。

動機づけのために、達成できた場合の報酬、つまり「アメ」を用意しておくことは有効ですが、どれほど魅力的なアメであっても、それがあまりにも高いハードルの先に用意されていたら、得ようという気にはなれません。

毎回テストで60点をとるのがやっとの子どもに、「100点をとったらヨーロッパ旅行に連れて行ってあげる」と言っても、「そんなのは無理」と思うだけでしょう。でも、「65点とれたら、好きな漫画を買ってあげる」と言ったら、やる気になるかもしれません。

「この問題集を、ここまでやったら、好きなお酒を飲もう」とか、「次の試験で10点上がったら、欲しかったDVDを買おう」というふうに、小さな目標の先に、ささやかでもいいので報酬を用意しておくようにすると、やる気が持続しやすくなります。

簡単な入門書を買う

あまりにも高い壁は登る気がしない、ということからもうひとつ言えるのは、理解不能なことを勉強する気にはならないということです。

理解不能なものを勉強しようと思うなら、まずはそれを理解可能なレベルまで落とし込む必要があります。

たとえば、2017年のノーベル経済学賞受賞で注目されている、行動経済学を勉強しようと専門書を読んでみたところチンプンカンプンだったとしたら、行動経済学のわかりやすい解説書を手に取ってみます。

入門書やわかりやすく書かれた本をバカにする人は多いのですが、いくら難解な本を必死に読んでも、理解できなければ意味がありませんし、内容も覚えられません。

見栄を張らずに、入門書で基礎的な理解を固めてから次に進むほうが合理的です。

中学、高校の参考書や、漫画で解説されている入門書など、わかりやすく伝えようとする工夫が行き届いている本は役に立ちます。いろいろなテーマについて、それぞれの専門家がわかりやすく解説した本が揃っている新書も、入口の一冊としておすすめです。

勉強友達をつくる

勉強は、できればひとりで行うより、友達に声をかけて一緒にやるほうがやる気が出ます。

わからないことを教え合ったり、勉強法について相談したりと、お互いに支え合うこともできます。

勉強していることを周囲に隠しておきたがる人も多いのですが、それで得をすることはあまりないと思います。勉強していることを周囲の人に知られると、妨害される心配があるという人もいるかもしれませんが、飲みに誘われる程度の妨害であれば、断れば済むことです。むしろ、勉強していることを知って、力になろうとしてくれる人のほうが多いと思います。

また、勉強していることを人に話すと、公言した手前、あとには引けなくなるという効用もあります。禁煙や英会話なども、周囲に始めたと言ってしまったら、やり遂げたり成果を上げないとカッコ悪いという気持ちが生まれるものです。やらざるを得ない状況に自分を追い込むために、あえて公表するという手もあります。

すでに勉強している人たちのコミュニティに加わるのもいいでしょう。勉強のコツや参考書の選び方などは、うまくいっている人に尋ねるのが一番です。すでに勉強が進んでいる人たちと交流を持てば、そのような情報を得られる機会も多くなります。

勉強習慣を持続する

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(画像=PIXTA)

勉強せずにはいられなくなる「習慣化」

理由なしにそれをするようになるよい方法が「習慣化」です。

たとえば、大半の人は理由を意識して歯磨きをしているわけではないと思います。

もちろん、歯をきれいに保っておくためとか、虫歯にならないようにするためなど、歯磨きをする理由は存在しますが、それ以前に、毎日歯磨きをする時間に磨かないでいると、何となく気持ち悪く感じるはずです。

それは、歯磨きが習慣化されているということです。あることが習慣化されると、理由なしに体が動いてそれをやってしまうとか、やらないと落ち着かなかったり、不快感を覚えたりするようになります。

勉強も習慣化してしまえば、毎日やらずにはいられなくなります。それでは、どうすれば習慣化できるかというと、習慣化するように仕向けていくことが必要になります。

歯磨きも、最初から習慣として身についていたわけではなく、教育によって習慣化されてきたのです。子どものうちは、歯磨きをしたがらない子どもがほとんどですが、一定期間、根気強く決まった時間に歯磨きをさせているうちに、歯を磨かないと不快に感じて、自分から磨くようになっていきます。

習慣化するという意識を持たない限り、習慣化させることはできません。毎日、何時から何時までは勉強すると決めて実行し、体内リズムに埋め込んでいきます。

たとえば睡眠についても、何時から何時まで眠るということを習慣化することで、生活パターンを朝型にしたり、昼寝を取り入れるといったことができるようになります。

大変そうに見えることでも、習慣化してしまえば苦痛ではなくなります。たとえば「イスラム教徒は1日に5回も礼拝をする」と聞くと、相当な負担のように感じられますが、彼ら自身は、礼拝をしないとそわそわしてくると言います。勉強も習慣化させることができれば、勉強そのものを苦痛だと感じることはなくなるはずです。

スランプと休養

どうしても勉強をする気になれないという、スランプ状態に陥ることは誰にでもあります。たいていは周期的に訪れるもので、ある程度時間が過ぎればやる気を取り戻せます。

とはいえ、気分が乗らない日が2週間以上続くようなら、うつ病の可能性も考えられますから、早めに医師の診察を受けたほうがいいでしょう。

スランプに陥る大きな原因のひとつは休養不足です。しっかり休みをとってリフレッシュすると回復する場合もあります。

私は「よくそんなに働けますね」と驚かれることがありますが、それは休むと決めた日にはしっかり休むようにしているからです。日本国内にいると、休みの日でも仕事関係の連絡が入ったりして、完全に仕事から離れるのは難しいのですが、3カ月に1回、アメリカで精神分析を勉強してきたので(現在はコロナ禍で中断していますが)、そのときにはほかの予定をなるべく入れずに、現地で休みをとるようにしていました。

長期の計画を立てる際に、先に休みの予定を決めておくと、そこを目標地点にして仕事や勉強を進めることができます。自分の休みを優先するということも、無理なく勉強を続けるためには大切です。

=科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法
和田 秀樹
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長、日本映画監督協会理事。

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