本記事は、和田秀樹氏の著書『科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ネットワーク,メディア,影響力
(画像=takasu/stock.adobe.com)

「バカな人」ほど搾取される

国民の大多数がテレビの信者になっている

残念ながら、この国は頭の悪い人、テレビが流す情報を考えなしに信用するような「情報弱者」はひどい目に遭う国です。

テレビというのはスポンサー、つまり金持ちに握られているメディアです。当然、金持ちの味方をしています。

売上の出どころは100%税金で、なおかつ社長が異様なほど羽振りのいい生活をしている建設・土木業の会社が、地方にはたくさん存在します。そんな生活ができるのは、税金から不当に利益を得ているからにほかならないのですが、テレビがそれを追及することはありません。その一方で、公務員の給与や生活保護の受給者が増えることについては、「税金泥棒」と言わんばかりの勢いで糾弾します。

企業がこれほど多額の内部留保を抱えている状況でありながら、テレビは消費税を上げるより法人税を上げるべきだとは言いません。「法人税を上げると国際競争力が低下する」という論理でそれを正当化していますが、あのトランプ大統領によって2018年に法人税が引き下げられるまでは、アメリカは欧米でもっとも法人税が高く、消費税が10%を超える州もないのに、世界でもっとも国際競争力の高い国だったという事実は、そこでは無視されています。

さらに言えば、テレビは東京偏重で、「地方いじめ」を平気で行います。

たとえば「高齢者から自動車の運転免許を取り上げるべき」とか「飲酒運転を厳罰化すべき」といった論調を後押ししていますが、そもそも東京と地方では交通事情がまったく異なります。

交通量や歩行者の多い首都圏で、高齢者の運転や飲酒運転の危険性が高いのは当然のことでしょう。しかし、道に人がほとんど歩いていない地方の道路で、それらの運転を同じ基準で取り締まり、そこに住む人たちの唯一の移動手段を事実上奪うことが、絶対的に正しいことと言えるでしょうか。

ワインの産地として名高いアメリカのナパ・バレーでは、誰もが車でワイナリーを巡ってテイスティングをしています。当然飲酒運転です。1回のテイスティングで6グラスを飲めばハーフボトルになります。それを何軒も回るのです。地域事情に合わせてそれを取り締まらないことが可能になっているわけです。逆にニューヨークのマンハッタンでは、飲酒運転で車が没収されることもありました。それが地方自治というものなのに、日本ではそれを一切認めようとしません。

根が深いのは、当事者である地方の住民自身が、テレビの洗脳によって「高齢者の運転や飲酒運転は悪」だと思い込んでいることです。

飲酒運転を厳罰化するなら、飲酒運転を誘発したり、アルコール依存症(こういう人はお酒をやめられないので、飲酒運転の常習犯です)の人に悪影響を与える可能性のある酒類のCMを流すことをやめるべきだと思いますが、日本のテレビ局はスポンサーのために、世界保健機関(WHO)による再三の勧告さえも無視して酒を美味しそうに飲むシーンを含む酒類のCMを流し続けています。

国民の大多数がテレビの信者になって、消費税は上げて法人税は下げるべきと言い、生活保護受給者は叩いても悪徳な土建屋は叩かず、高齢のドライバーや飲酒運転者は人非人にんぴにんのごとく責め立てて、貧乏人いじめや地方いじめに加担する。それがこの国の現状です。

徳のない日本の金持ち

しかもこの国には、社会的上位者が義務として弱者を救おうとするという、いわゆる「ノブレス・オブリージュ」の精神も根付いていません。

道徳教育の必要性が叫ばれていますが、そこで言われる道徳教育とは、往々にして一般社会人が守るべき人の道、つまり「道」の教育であって、「徳」の教育は欠けています。

「徳」とはすなわちノブレス・オブリージュのことであり、社会的上位者になったときにその有無が問われるものです。それを備えている人を「徳のある人」と呼ぶのです。私がもし道徳の教科書をつくるとしたら、1ページ目にアメリカと日本それぞれの資産家の資産額と寄付額の一覧表を並べ、どちらの国の金持ちに「徳」があるかひと目でわかるようにします。

日本人はどれほど大金持ちになっても、自家用ジェットを買うといった贅沢ぜいたくをする人はほとんどいません。桁外れの金持ちでもあたりまえのように保険診療の病院にかかるのは、世界的に見ても日本ぐらいのものです。

日本の金持ちの多くが、この世でもっとも金のかかる趣味に熱中しています。彼らが持てるお金のすべてを注ぎ込もうとする、その趣味があると、たとえばどんなに金があっても、高いワインも買おうとしません。

その趣味とは「貯金」です。

この趣味を持つと、ありとあらゆることにケチになります。貯金通帳の桁を増やすためなら何でもします。必然的に、貧乏人に寄付をするどころか、貧乏人から搾取することに熱心になります。

欧米では対照的に、金持ちになるほど寄付を趣味にする人が多くなります。

ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグも、ほぼ全額に近い資産を寄付する意向を示しています。

富豪やそれを目指す人の多くが、貧しい人や立場の弱い人を救うこと、その喜ぶ顔を見ることこそが幸せという価値観を持っている。そういう国であれば、格差が拡大しても貧乏人は救済されますが、この国では金持ちによって搾取される一方です。

=科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法
和田 秀樹
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長、日本映画監督協会理事。

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