本記事は、和田秀樹氏の著書『科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

「頭のよさ」は失われる

頭脳
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

多くの人は、「頭のよさ」を固定的なものと考えています。

「あの人は、東大を出ているから頭がいい」というふうに、一度頭がよくなった人はずっと頭がいいと思いがちです。

しかし、いくら東大を出ていても、その後勉強しなければバカになるし、三流大学卒でも継続して勉強していれば頭がよくなっていきます。そして両者が逆転するということも十分あり得るのです。

頭のよさは、一度獲得したらずっと続くものではなく、それを維持、発展させる努力をしなければ失われていくものです。

東大とハーバード大の大学院を出ていても、怒りにまかせて品のない言葉で秘書を罵倒ばとうして地位を失った国会議員もいます。それは、感情をコントロールする知能が低いという意味で「頭の悪い人」になっているということです。

怒りや不安感情にまかせて誤った行動や判断をしないよう対策を立てるなど、頭が悪くなる要素をつぶしていくことも重要になります。

私が東大受験をしたのはいまから40年以上も前の話です。当時は頭がよかったかもしれませんが、それでいまの頭のよさが保証されるわけではありません。

ノーベル賞受賞者でさえ、評価の対象となっているのは多くの場合、数十年も前の業績です。受賞が必ずしもいま現在の「頭のよさ」を示すものではないのです。

知的謙虚であれ

私にとっては、学歴や経歴が立派であることよりも、「いま頭がいいかどうか」のほうが大事です。東大の同窓会にわざわざ出かけて行って、「昔頭がよかった」人と話すより、いま賢い人と話をすることに魅力を感じます。

「いまの自分にはまだまだ知らないことがある」という、「知的謙虚」な姿勢が勉強の原動力になります。机に向かってする勉強だけでなく、日々の経験からも学べることはいくらでもあります。

「いまはこういうものは売れないらしい」「こういうことをすると人に嫌われる」「これは健康によくないようだ」というふうに、本来なら毎日のように学びを得ているはずなのです。

昨日よりも今日の自分のほうが賢いと言える人、学歴などに関係なく「昔の自分はバカだった」と思える人が、真に「頭のいい人」だと言えます。

高学歴な人が、それをひけらかしたり、「東大に入った頃の自分は輝いていた」と、過去の栄光にすがるのは、もっとも情けないパターンです。過去のモテ自慢をする人は、たいていいまはモテていないのと同じで、学歴をひけらかすということは、いまの自分には誇れるものがないと言っているようなものです。

どんなにすごい過去を持つ人よりも、いまがすごい人のほうが立派なのは言うまでもありません。

昨日より今日、今日より明日のほうが賢い自分になる。そのために勉強するということが大切です。それを積み重ねていけば、スタート地点がどこであっても、誰でも「頭のいい人」になれるのです。

試さなければ意味がない

私の本の読者の中には、私が書いた勉強法の本を片っ端から読む、「和田オタク」と呼ばれる人たちがいます。そんな「和田オタク」の子を持つ親御さんから、「うちの子は和田先生の本をたくさん読んでいるのに、成績が上がらないんです」とクレームを受けることがあります。

そこで「もしかしたら、本を読むだけで勉強していないんじゃないですか?」と確認してみると、その通りだった、などということがあります。

勉強法の知識がいくら多くても、それを実行しなければ成績は上がりようがありません。

「和田オタク」の人にはもうひとつ、本で仕入れた勉強法を他人に教えたがるという特徴があります。結果的に、教えられたまわりの人はそれを実行して成績が上がり、教えた本人だけが取り残される、という皮肉な現象が起こります。

私が何より残念だと思うのは、勉強法の本を読んでも、それを実際に試す人がきわめて少ないということです。本に書いてあることをすべて試すのは難しくても、ひとつでも2つでも試してみれば、変わることがあるはずです。

「試さない」ことが、一番の問題です。試して損をすることは基本的にありません。あったとしても多少の時間ぐらいのものです。うまくいかなければ、またそれとは別のやり方を試せばいいのです。

「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」というエジソンの有名な言葉のとおり、試してうまくいかなかったとしても、それを知っただけでも意味があります。このやり方は自分に合わないということがわかれば、その方向でそれ以上無駄な努力をしなくて済みます。

何がうまくいくのか、いかないのか。すべてはやってみなければわからないのです。

「やってみなければわからない」という発想をつねに持っておくことが大事なのです。

=科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法
和田 秀樹
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長、日本映画監督協会理事。

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