カーボンニュートラルの国内事例
ここからは、カーボンニュートラルの国内事例を3つ紹介する。
【事例1】国内発となるカーボンニュートラルステーション/阪急電鉄
阪急電鉄の摂津市駅は、太陽光発電やLED照明の活用によってカーボンニュートラルを実現した(※国内の駅としては初)。以前の二酸化炭素排出量は年間約70トンだったが、これらの施策によって約36トンの削減を達成している。
残りの排出量である約34トンについては、二酸化炭素排出枠の購入によって相殺した形だ。
【事例2】サプライチェーンの徹底した見直し/ミサワホーム
大手ハウスメーカーであるミサワホームは、サプライチェーン排出量の算定・削減に取り組んでいる。環境にやさしい製品の開発をはじめ、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)の推進、省エネルギー住宅の提供など、サプライヤーと協力しながら温室効果ガスの排出量を減らしてきた。
その成果は着実に表れており、2013年度に全体の90%を超えていたScope3の排出量は、2019年度の時点で約75%にまで減少した。
【事例3】カーボンリサイクルの実証実験/クールジェン
広島県に本社を構えるクールジェン(※)は、二酸化炭素のリサイクルに取り組んでいる。現時点ではプロジェクトの段階ではあるが、同社のカーボンリサイクルが実現すれば、発電所や工場から排出されるCO2を90%ほど削減できる見込みだ。
(※)中国電力とJパワーの共同出資会社。
大手電力会社が出資している本格的なプロジェクトであるため、業界内外から広く注目されている。
カーボンニュートラルの海外事例
次は、カーボンニュートラルの有名な海外事例を紹介しよう。
【事例1】有機肥料によるCO2の固定化/パタゴニア
米国のアウトドア用品メーカーであるパタゴニアは、環境再生型有機農業によるカーボンニュートラルに取り組んでいる。具体的には、有機肥料によってCO2を土壌に固定化させるプロジェクトを進めており、同社はミッションとして「故郷である地球を救う」を掲げている。
ソーラー・シェアリングやサプライチェーンの改善にも取り組んでいるため、国内企業も参考にできるポイントが多いはずだ。
【事例2】カーボンニュートラル専用の新工場/ダノン
フランスの大手食品メーカーであるダノンは、約3億円をかけてカーボンニュートラル実現のための新工場を設立している。この新工場では再生素材を利用できるのに加えて、敷地内にサプライチェーンを改善する鉄道駅も設けられた。
さらに同社は廃棄物の92%をリサイクル、残りの8%をエネルギー原料にすることで、廃棄物ゼロの製造環境を実現している。
【事例3】燃料電池搭載の大型トラック(FCV)を開発/ダイムラー
ドイツの自動車メーカーであるダイムラーは、燃料電池を搭載した長距離用の大型トラックを開発している。FCV(燃料電池自動車)の課題は水素ステーションの少なさと言われるが、同社が開発するトラックは継続して1,000km以上を走行できる見込みだ。
2023年にはテスト走行が始まる予定なので、すでに実用化や量産化が多方面から期待されている。