本記事は、武田拓也氏の著書『金融機関で学んだFPが正しく伝える 投資でお金が増える基本の仕組み』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
証券会社の選び方と売買のタイミング
銀行で株を購入することはできません。買いたい銘柄が決まったら、証券会社を選びましょう。基本的にはどの証券会社でも問題ありませんが、いくつかポイントがあります。また、ここでは実際に株を買う際の手順と運用の注意点についてもお話しします。
(1)証券会社の選び方
証券会社は取り扱い銘柄と手数料によって決めるのが良いでしょう。
日本国内の株はどの会社でも買うことができますが、海外の銘柄は証券会社によって少し異なります。外国の株を購入したい方は、自分が気になっている銘柄が取り扱われているか、確認してみてください。
株式投資も投資信託と同様、有人の窓口はもちろん、インターネット上でも口座を開設することができます。手数料を安く抑えたい方や短期売買をしたい方はネット証券が最適です。株の売買手数料は、対面の場合は3,000〜5,000円、オンラインなら100円前後です。
口座開設に関しては、投資信託とそれほど流れは変わりません。口座には、購入する予定金額より少し多めに入金しておきましょう。株価が多少前後することがあるのと、手数料が必要になるためです。
Check 手数料がオンラインより対面形式が高いのは、人件費がかかるためです。人に相談しながら投資をしたい場合は、対面がお勧めです。自分で情報収集ができ、売買の判断が可能な人は手数料が安いオンライン形式を選びましょう。 また、証券口座は銀行口座と同様に、口座自体に手数料などの費用はかかりません。面倒でなければ対面口座とオンライン口座の両方を開設し、状況に応じて使い分けることも可能です。最初は対面で株式の仕組みや市場の動向を教えてもらいながら取引し、慣れたら自分で判断して手数料の安いオンラインで取引するといった具合です。
(2)知っておきたい「成行」と「指値」
株式を取引する際には、「成行」と「指値」という2つの方法で売買を行います。2つの違いは「注文の際に価格を指定するかどうか」という点です。
新しく株を購入する場合で考えてみましょう。
「成り行きに任せる」という言葉があるように、「成行」はその時点で取引されている株価の中で最も安い売り注文を、その場で購入することができます。手持ちの株を売る場合には、購買希望価格の中の最も高い価格で買い取られます。ただし、必ずしも思っている価格で売買できるとは限りません。
「指値」は、あらかじめ自分で値段を指定するので、その値段で売買する人が現れない限り取引は成立しません。その日のうちに売買が成立しないこともあります。購入価格や売却価格を重視したいときは「指値」で、早く取引を成立させたい場合には「成行」でというように使い分けましょう。
Check ある銘柄に関して、売りたい人、買いたい人がどれくらい存在しているのかは、「板」で確認することができます。板とは、株式投資における売買価格の一覧表で、証券会社のオンライン上の注文画面で確認できます。買い希望株数や売り希望株数、気配値(=希望売買価格の目安)がひと目でわかるように整理されています。
(3)株を売るベストなタイミングは?
初心者の方は優良企業の株を長期で保有しながら、少しずつ利益を積み上げていくのが良いでしょう。
売買差益を狙う場合、手放すタイミングの基準としては、「状況が変わったとき」です。
購入時には、何かしらの「買った理由」があったはずです。たとえば「コロナ禍でマスク需要が高まっているので、マスクを作っている会社が伸びるだろう」という理由で買ったとします。そこから、「コロナ禍が落ち着いてくると、マスクは次第に売れなくなる」と予想できます。であれば、株価が下がる前に手放すべきです。
また、売買を始めたばかりの人は、5%の値上がりを目安に売ってしまってもいいでしょう。だいたいの場合1カ月の間に5%程度は増減します。「まだ上がるのではないか」と躊躇するようであれば、半分だけ売却して残りの株で値上がりを待つという方法もあります。
(4)ファンダメンタル分析
世の中には、株式の値動きを読み解く分析法がたくさんあります。ただ、勉強しようとするとキリがありません。基本的なものだけをピックアップしたので、判断材料のひとつとして、悩んだときの参考にしてみてください。
「ファンダメンタル分析」は、「どの企業の株を買うか」を選ぶ際に便利な分析方法です。
企業の価値をPER(=株価収益率)、PBR(=株価純資産倍率)、ROE(=自己資本利益率)という指標をベースにして分析します。PERとPBRは、現在の株価を企業の経営成績や財政状況と比べて、その株が割高なのか、割安なのかがわかる数値です。ROEは投資家から集めた資本(お金)に対して、どのくらいの利益を出せたかを示す指標です。
日本株の場合、PERは14〜16倍、PBRは1倍が基準となります。ROEは8%以上あると良いといわれています。これらと比較して、PERとPBRが基準よりも高ければ「グロース投資」、低ければ「バリュー投資」と呼びます。
人気の成長株を買うのがグロース投資で、本来の株価より割安で買って元の値段に戻ることを狙うのがバリュー投資です。ショッピングにたとえれば、グロース投資は人気のブランド品を買う、バリュー投資はセール品をおトクに買うイメージです。
買おうと思っている株はどちらなのか、その株は本当に自分に合っているのか、判断に迷ったときの参考にしてください。これらの指標は、証券会社のサイトの銘柄ページなどにも掲載されています。
(5)テクニカル分析
「テクニカル分析」は、「いつ、この企業の株を売買するか」を考える際に有効な分析方法です。
過去の値動きを「チャート」と呼ばれるグラフで表示して現在に至るまでの傾向や値動きのパターンなどを把握し、今後の株価を予想するものです。チャートは、口座開設を行った証券会社のサイトやアプリ上で確認できます。
下の図表8の、細くなだらかな線を「移動平均線」といいます。移動平均線とは、一定期間の株価の終値(=1日の最後に取引された株価)の「平均値」を線で結び、グラフ化したものです。
太くジグザグ状に描かれた線は企業の株価を表しています。
この2つの数値が交わるところを「ゴールデンクロス」あるいは「デッドクロス」と呼びます。これらは、ここから株価が上がる、もしくは下がるといった、「転換期」を暗示します。
ゴールデンクロスは、株価が移動平均線を下から上方向へ突き抜けるときを言います((1))。これは「買い」のタイミングです。
逆にデッドクロスは、株価が移動平均線を上から下方向に抜けるときを指します((4))。これは「売り」のタイミングを意味します。
必ずしも線が交差したときだけが売り買いの時機ではありません。移動平均線が右肩上がりの上昇トレンド(=株価が上昇していく状態)の最中に(3)のようなタイミングもあります。株価の下の移動平均線が下支え(サポート)してくれるイメージで、株価が下がりにくい状態です。もっと伸びることが予想できれば、このタイミングで株を購入しても利益が出ます。
反対に、移動平均線が右肩下がりの下降トレンド(=株価が下降していく状態)では、(5)のように移動平均線から大きく下離れしたときに「これ以上は下がらないだろう」と予想して買うこともあります。ただし、思ったほど株価が上がらなかったり、株が下がり続けたりする可能性もあります。初心者はあまり手を出さないほうが良いでしょう。
ちなみに、会社の業績が良く株価も上昇傾向であったにもかかわらず、一時的に価格が下がるときがあります。これが(2)の「押し目買い」です。いったん利益を確定させようとたくさんの人が株を売りに出したことにより、少しの間だけ株価が下落する現象です。もし、この流れを見抜いて買うことができれば、再び訪れる株価の上昇を享受できます。ただ、これも(5)と同様の理由で初心者の方にはお勧めしません。
この辺りについても、最初は判断が難しいと思います。テクニカル分析については、まずゴールデンクロスとデッドクロスを意識してチャートを見るようにしましょう。これらは株価と移動平均線の組み合わせでしたが、移動平均線同士の組み合わせで分析する方法もあります。
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