リスキリングに取り組む際の2つの注意点
リスキリングの教育プログラムを決めて実行したとしても、その効果を高めるために注意すべき点がある。ここでは、リスキリングに取り組む際の注意点2つについて解説する。
1.リスキリングに取り組みやすい環境を整える
まず、リスキリングに社員全員が不安なく取り組めるように、環境を整えることが肝要だ。
リスキリングの対象となる社員が在籍する部署では、研修などの参加により一時的に人手不足となりがちだ。他の社員の業務負荷が増えたり他部署との連携が取りにくくなったりして、社内では不平不満が出るかもしれない。周囲の理解がない状況では、リスキリング対象者の学びにも悪影響を与える恐れがある。
リスキリングを始める際にはプロジェクトチームを作って制度設計を行い、社内全体に目的や制度内容を共有した上で、全社共通のテーマとして取り組めるような環境整備が必要だ。
2.社員の自己啓発のサポートが重要
リスキリングを行う際には、社員の自主性やモチベーションの維持が欠かせない。特に社員の自主性は重要であり、自分から積極的に学びたいと考えている社員の自己啓発をサポートすることはもちろん、処遇に反映することでモチベーションを向上していけるだろう。
内閣府の『働き方・教育訓練等に関する企業の意識調査』によると、「自己啓発を支援する制度がない」「制度が活用されていない」企業が半数近くに上っており、処遇に関しても4割ほどが反映されていないという現状がある。
リスキリングを機に、社員の自己啓発に対する支援や評価に関する制度を見直すことも重要だ。
リスキリングについてのQ&A
リスキリングとは何なのか?
リスキリングとは、技術革新が進んで産業構造の大きな変化が起こったとしても、変化に適応して価値を創出し続けられるように、新しい知識やスキルを修得することだ。
IT技術の進歩や価値観の多様化など、事業を取り巻く環境の変化は激しいため、既存のノウハウや技術だけでは生き残れない企業も多い。リスキリングによってこれまで自社になかった新しい知識やスキルを修得して導入することは、事業革新による持続的な成長にも欠かせないものである。
リスキリングでは何を学ぶ?
リスキリングで学ぶ内容は、自社の経営戦略やビジョンによって異なるため、必要なスキルを可視化することが重要である。
ただ、IT技術の進歩に伴ってDXの推進が世界的なトレンドとなっており、日本ではIT人材の不足が慢性化しているため、特にプログラミングスキルやDX、AIといったデジタル技術、データ分析といったスキルの修得が必要とされている。
それ以外にも、自社の収益性を左右するマーケティング戦略に関わるものとして、SNSやYouTube、自社Webサイトなどのメディアを活用したデジタルマーケティング関連のスキルの修得などが重要視されている。
リスキリングはなぜ行われるのか?
リスキリングによって新しいスキルを修得した人材が育成できなければ、技術革新による市場や業界自体の変化に対応できない可能性がある。DXの推進などによって、他社に対する優位性の確保ができなければ市場から淘汰されてしまう恐れもあるだろう。
また、リスキリングによって自社人材の育成ができなければ、外部のリソースに頼らざるを得ず、コストの増大はもちろん自社ノウハウの蓄積ができないといったデメリットもある。
リスキリングのメリットは?
リスキリングによって新しいスキルを修得した人材を育成できれば、DXのような経営革新につながるシステムの導入や、これまで技術的にも不可能だった新しい製品やサービスのアイデアを実現できる可能性が高まる。
社員にとっても、新しいスキルを身につけてキャリアアップするチャンスであり、エンゲージメントが高まることで、組織への貢献意欲の向上や定着率アップといったメリットが得られる。