Countless particles and a portrait of man
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こんにちは、ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社の山口です。

みなさんは、「5億円以上の資産を一代で築いた富裕層」といえば、どのような方を想像するでしょうか。私は長年、富裕層の資産運用サポートという仕事に携わってきましたが、実際の富裕層は、テレビで見かけるようなお金持ちとは少し違うように思います。私が知っている富裕層は、どちらかといえば控えめで、資産家であることを目立たないように、しかし仕事や人生を楽しむことにはこだわりを持っている方ばかりという印象です。資産を築くため、というよりもむしろ、人生の過ごし方にこだわった結果、資産家になった、という方が多い。仕事を通じて接している富裕層の方々に私はそんな印象を持っています。今回はそのようなユニークな資産家の方々の素顔と、その資産運用の方法についてご紹介してみたいと思います。

東証プライム上場で数十億円以上のキャッシュを得た起業家

まずお1人目は、一代で不動産証券化の会社を東証プライムに上場させた起業家のA氏です。A氏は有名な大手ディベロッパー出身。投資用マンションや分譲マンションの販売をしながら業務経験を積み、30歳ごろに不動産の証券化を手掛ける会社の役員を経て、独立しました。優秀な幹部にも恵まれ、事業は順調に拡大、創業15年ほどでジャスダック上場を果たすと、その5年後に当時の東証一部上場に至りました。その成功の要因としては、なんといってもA氏の強いカリスマ性が指摘できます。彼の仕事の進め方には一切の妥協がありませんでした。クライアントへの細かい気配り、トラブルが発生した時の対応の早さなど、質の高い仕事に対する強い意思を全身から発するような方でした。また、徹底的な現場主義で、自ら頻繁に現地を視察したり、社員たちと一緒に仕事をしたりする姿勢も人を惹きつけたのだと思います。

A氏は徹底的な合理主義者でもありました。ミーティングにおいては、結論に至った理由の説明に無駄がありません。このことははご自身の資産運用においても同様で、資産運用が本業に役に立つという点を重視し、情報を得るために各金融機関の担当者と付き合っていました。具体的な運用については、経済状況や景気動向の肌感覚を磨くために株式市場をチェックし、不動産投資の利回りと比較して、分散投資の観点から自分が投資する経済的合理性があるかどうか、という判断を重視していました。

ただ、A氏には悩みもありました。それは、忙しすぎて自分で資産運用の方針をじっくり考える余裕がなかったことです。上場企業の社長でもあるA氏のもとには、日々、取引金融機関の営業担当者がひっきりなしにアポイントを取ってやってきます。厳しい中にも誰に対しても礼を失しないA氏は、時間の許す限り、営業担当者とのミーティングに応じていました。

そんなA氏は、資産運用においては主に為替、日米株価、REIT(不動産投資信託)の3つに関心をお持ちでした。そこで各取引金融機関の担当者は、それぞれ提案したいもの、具体的には、外資系金融機関の担当者は為替系の仕組み預金やファンドラップを、国内証券会社の担当者は海外株式に投資する投資信託を提案していました。

A氏の悩みは、金融機関からの提案に関心があっても、多忙ゆえに、自分では精査できず、結果的に(金融機関に)任せるしかなかったということです。金融機関から提供されるそれぞれの情報は、どうしても個別の金融商品に関わる内容であるため、A氏の資産運用の全体の中でどのような位置づけにあるのかわかりずらかったようです。また、そのことが経営者として携わる本業とも結び付けられないジレンマを感じていたとのことです。

そこで私は、日本のREITをあえてメインにして、その他は日本と米国の株式や債券のインデックスで金融資産のポートフォリオ案作成し、A氏に提案してみました。意図としては、REITの中でも業種別に分けて動向が把握しやすいよう保有銘柄を選択して、A氏の本業に直接情報が生かせるようにすることと、世界の金融市場の動向については市場の動きを反映させるインデックスファンドを活用することで、分かりやすく低コストなポートフォリオに仕立てることです。こうすることで定期的なレポートの機会が必要となり、時間軸に沿って情報のアップデートがしていけるようになりました。

また、為替については仕組み預金といった相場の動きを重視する運用手法よりも、計画的なインカムゲインを得る運用手法を重視して、ドル建て債券のポートフォリオを提案しました。具体的には、多忙なA氏が関与しなくても毎年のドル建てリスクが自動的に入ってくるように、満期までの期間を短いものから長めのものまで、おおよそ均等に債券の銘柄を組む「ラダー型戦略」を採用しました。こうすることで毎年一定水準のリスク収入が確保でき、満期がくればまた再投資することで、債券ポートフォリオの利回りと平均残存年数をある程度一定に保つことができます。

合理的な方ほど資産運用においては、市場動向や運用状況における透明性を重視します。また、運用成果を分かりやすく数字で把握できる「利回りの概念」に関心を持つと言えるのではないでしょうか。

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