本記事は、中野信子氏の著書『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

協力,チームワーク
(画像=wichayada/stock.adobe.com)

嫌いな仕事は他人に振る。
── 他人の適正を見極めて、仕事を上手に分担する

周りから助けてもらえるのがうまい人になろう

私が出会った人の中で、ノーベル賞に一番近いと言われている研究者が、フランスの国立研究所に勤務しているフランス人のDさんと言う男性です。

Dさんは、楽しくない仕事を楽しい仕事に変える名人です。でも、さすがの彼にだってどんなことを試みても、苦手なところや面白くないところから脱せないことは、ありました。Dさんはどうやって、自分の苦手なことをこなしていたのでしょうか?

実はDさん、自分の苦手な部分を、周囲の人たちにフォローしてもらうことがとても上手だったのです。

彼はまず、人を褒めるのがとても上手です。どうしようもないほどダメだと思う人でも、何かしら良い点を見つけて、褒めてしまいます。

褒められた人は、悪い気はしませんよね。その美点をはじめて見出してくれたのがDさんだったりしたら、なおさら、「よし、Dさんのために一肌脱いでやろう!」という気分になります。そして、彼のお手伝いをするのを誇らしく思うようになるのです。

上手に褒めれば人は自分に味方してくれる

でもそこは、プライドの高いフランス人。すべての人がおだてられて良い気分になったりはしません。「褒められて当然だね」と思われるならまだマシなほう。「この人は自分を褒めているけれど、その裏でバカにしているのでは?」などと、疑ってかかる人だってたくさんいるのです。

しかし不思議なことに、そんな人たちでもDさんの雑用を最後まで断ったりはしません。なぜでしょう?

そのカラクリは、Dさんの褒め方にありました。彼は、単に褒めるだけではありません。お手伝いをしてくれた人にはちゃんとお礼をしていたのです。

Dさんの研究論文の多くが、研究者の間で評価の高い雑誌に掲載されます。彼の実験を手伝えば、その共同研究者として自分の業績にしてもらえるのです。

こぼしたコーヒーの後始末をするといった程度のちょっとした雑用でも、彼はきちんと覚えています。お礼として、Dさん行きつけの日本料理店に連れていってくれたりするのです。

他にも、誕生日にピアノで一曲弾くなど、気の利いたプレゼントを用意してくれたり。とてもエレガントに、かといって嫌みにならないように、彼はお礼を欠かしません。

だから周囲の人は皆、良い気分になるし、彼自身もいつも楽しく仕事をしていられるのです。