1Gから5Gへの進化史
1Gから5Gに至るまでの歴史を振り返る。
1G(1979年~)
1G(第1世代移動通信システム)の始まりは1979年と考えられている。1979年に日本電信電話公社(NTTの前身)が世界で初めてセルラー方式の電話サービスを開始した。
当初のモバイル端末は車載式の「自動車電話」で、重量は約7キロもあった。自動車電話の次に登場したのが「ショルダーフォン」と呼ばれる肩からかけるタイプだ。ショルダーフォンも重さは約3キロあった。
2G(1993年~)
通信方式がアナログだった1Gとは異なり、1993年からの2Gは通信方式がデジタルに変わった。2Gに入ると電子部品の小型化が進み、端末はコンパクトになった。
サービス面に関しては、1Gは基本的に音声通話のみだったが、2Gからはデータ通信サービスが始まり、インターネットメールなどが利用できるようになった。
3G(2001年~)
2Gまでは国や地域ごとで異なる移動通信システムが採用されていたが、2001年の3Gからは「全世界で同じ端末を使えること」を目標に、システムの標準化が進んだ。
携帯電話端末は多機能化が一層進み、カメラ付き携帯の登場や赤外線通信など日本独自の発展を遂げた。スマートフォンが登場する前の日本の携帯を「ガラケー」と呼ぶが、これは独自の進化を遂げた日本の携帯を「ガラパゴス携帯」と呼んだことにちなむ。
4G(2010年~)
米Appleが2007年に「iPhone」を発売し、2008年には「iPhone 3G」が日本でも発売された。また、Googleが開発したAndroidを搭載したスマホが登場するのが2009年で、移動通信システムが2010年から4Gに入ると、本格的なスマホ時代が到来した。
5Gで実現できることは?
5Gが本格的に普及すると、何が実現するのか。
安全な自動運転
5Gの普及により、進展が期待されているのが自動運転だ。
自動運転にはレベル0からレベル5まであり、最終段階のレベル5に至ると、すべての運転操作が自動化される。
自動運転がこのようなレベルに到達するには、5Gの「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」が欠かせない。システムが車の運転を操作するためには、膨大な量のデータを送受信し続けなければならないからだ。
また、通信のタイムラグは事故の原因になり、5Gレベルの通信の低遅延化は必須だ。都市部など交通量の多いエリアで自動運転車が走行するには、1つの基地局が多数の端末に接続できる環境も必要になる。
高画質動画の視聴
5Gへの移行で、動画をめぐる環境も変わるだろう。
超高画質の4K・8K映像は解像度が高いだけにデータ容量も大きい。4Gではこのような動画を視聴するのに時間を要してしまうが、5Gになれば超高画質動画の視聴もスムーズになる。
動画広告をはじめとする動画市場へのインパクトは大きいだろう。
遠隔手術が可能に
遠隔医療も5Gの普及で進展することが期待されている。
地域によっては過疎化が進み、医師が不足しているなど地域医療が抱えている課題は少なくない。遠隔手術を含む遠隔医療が可能になれば、そのような地域医療が抱えている課題も解決に向かう可能性がある。遠隔手術などは5Gの低遅延特性が活用できる有望分野だ。
遠隔音楽ライブなどが可能に
5Gを活用した取り組みとして注目されているものに、遠隔音楽ライブもある。
これは離れた場所にいるプレーヤーが同時にパフォーマンスし、それを5Gネットワークでつないであたかも一緒にいるような臨場感をつくり出す試みだ。
遠隔音楽ライブも5Gならではの取り組みといえ、今後、さらに進化する可能性もある。
スマートファクトリー
IoT(Internet of Things: モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用し、製造プロセスを遠隔で管理して作業の効率化、自動化を実現するスマートファクトリーも、5Gの普及に伴い増加すると予測される。
このようなスマートファクトリーを運営するために、企業などが一定の敷地内に5Gネットワークを構築することをローカル5Gといい、ローカル5Gの導入も今後、加速するだろう。
スマート農業
農業のスマート化も、5Gの進展とともに普及が期待されている。例えば、無人トラクターや農薬・肥料を散布するドローンなどを活用することで、農作業の省力化が図られる。そのほか、センサーやカメラなどを使って生育状況を把握し、農作物にとって最適な環境をつくり出すためのAI診断などもスマート農業では可能になる。
このような農業のスマート化も、地方に5Gネットワークが普及するのを待たずとも、ローカル5Gを構築できれば実現可能で、注目テーマの1つだ。
eスポーツ
5Gとの関連で成長分野の1つと有望視されているのがeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)である。
eスポーツも高速・大容量や低遅延といった通信環境を必要とする。すでにローカル5Gを活用したeスポーツ大会が開催されており、eスポーツ市場は今後、さらに成長する可能性がある。