本記事は、内藤誼人氏の著書『億万長者のすごい!習慣』(廣済堂出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ごく普通に「給料を上げてほしい」とお願いしてみろ
「給料を上げてほしいな」と心の中でいくら念じていても、相手には伝わらない。上司は、占い師や読心術師ではないからである。
給料を上げてほしいのなら、きちんと声に出してお願いをしなければならない。声に出して自分の願いを伝えるからこそ、相手には伝わるのだ。
もちろん、給料を上げてもらえるかどうかは、みなさんの普段の仕事ぶりによる。仕事ぶりがきちんと評価されていれば、給料は上げてもらえる。お願いしなければ、給料を上げてもらえる確率は、「絶対にゼロ」だが、お願いしてみれば、少なくともゼロではない。
米国ヴァージニア州にあるジョージ・メイソン大学のミッシェル・マークスは、さまざまな職業で働く3年以内の新卒社員を対象にして、給与交渉をするかどうかについて調べてみた。
調査したのは149名の新卒社員だったのだが、会社側と給与交渉したのは110人。しなかったのは39人だ。調べてみると、給料が上がったのは、「交渉した人だけ」であり、昇給の平均は4,913ドルであった。興味深いのは、交渉しなかったのに昇給したというのは「ゼロ」であったことである。
「給料を上げてほしい」とお願いしなければ、給料が上がらないのは当たり前である。なぜなら、「今の給料でも大丈夫なのかな」と会社側が思うに決まっているからである。
相手にしてもらいたいことは、どんどん口に出して伝えなければダメだ。
伝えもしないで、心の中で、 悶々 としていても仕方がない。相手には、みなさんが何を考えているかなどわかるわけがないのだから、いくら心の中で思っていてもダメなのである。察してくれない相手が悪いのではなく、伝えないこちらのほうが悪いのだ。
米国国立老化研究所のアンジェリーナ・サッシンも、性格テストを受けてもらった731名のうち、前年度の年収を教えてくれた631名分のデータを分析したところ、年 収の高い人ほど、「自己主張が強い」という結果を得た。
自分が何を望んでいるのかをきちんと自己主張できる人ほど、年収は高くなるようである。やはり、多くを望んでいるのなら、それを相手にも伝えなければダメなのであろう。
夫に対して、不満を感じている妻がいるとしよう。夫は、帰宅するなり洋服は脱ぎ散らかすし、食器を洗うこともせず、ゴミ出しもしてくれないとする。
けれども、それは不満を伝えない妻のほうにも少しは問題があるのではないだろうか。夫だって、妻に嫌がらせをしようとしているわけではなく、ただ「お願いされていない」から、いつもの行動をとりつづけているという可能性は非常に高い。
「ねえ、洋服は脱いでもいいけどソファの上に投げ出すんじゃなくて、そのまま洗濯機に放り込んでくれないかしら」とお願いしてみれば、夫のほうも、「そうか。じゃ、これからそうするよ」と答えてくれるかもしれない。「出かけるときに、手に持てるだけでいいから、ゴミ袋も1つ、2つ収集所まで持って行ってよ」とお願いすれば、「わかったよ」と気軽にOKしてくれるかもしれない。ただお願いするだけで、拍子抜けするほどあっさり夫がOKしてくれて、問題が解決してしまうことも少なくないのだ。
給料に不満を感じているときも同じだ。お願いしないから、いつまでも心に 鬱憤 やらストレスが溜まるのであって、率直にお願いしてみれば、意外にどうということもなく給料を上げてもらえることもあるのである。
お金持ちは「メンター」によって、力を引き出してもらっている
お金持ちになりたいといっても、自分だけの力でそれを達成するのはとても難しい。お金持ちになるような人は、たいてい「自分を引っ張り上げてくれる」ようなお客さまや取引先、先輩や上司がいるものである。
アメリカの画家ウォルター・ラッセルは、少年時代にホテルでボーイの仕事をしていた。ラッセルは仕事が大好きだったので、とても精力的に働いていた。そんなラッセルを見て宿泊客たちはチップを渡そうとするのだが、ラッセルはだれからもチップを受け取らなかった。
「ちゃんとお給料はいただいていますし、仕事が大好きですから」というのがチップを受け取らない理由である。そんなラッセルに、どのお客も好感を抱いた。
そのうちお客は、ラッセルが空き時間にやっているスケッチに関心を示すようになった。そして、チップを渡す代わりに、「あなたの描いている絵を売ってくれ」とお願いするようになったのである。こうしてホテルのお客たちがラッセルのパトロンになってくれて、ラッセルは画家としてやっていくことができるようになったという。
「私は、だれの力も借りずに、自分ひとりでやっていくんだ!」というのは殊勝な心がけではあるが、現実的には、成功する可能性はきわめて低い。お客さまにかわいがってもらい、上司や先輩たちからも好かれるような人でなければ、なかなか上にあがっていけないのではないかと思う。
オクラホマ大学のウィリアム・ホワイトリーは、大学のMBAクラスの卒業生404名を調査し、昇進が早く、高収入を得ている人は、みな上司や先輩からかわいがられる存在であることを確認している。
お金持ちになった人の本を読むと、たいてい「メンター」についての記述がなされている。メンターというのは自分に仕事を教えてくれたり、精神的な支えをしてくれる先輩や上司や師匠のことを指す。
お金持ちは、メンターたちによって「力を引き出してもらっている」のであり、自分ひとりの努力だけで伸びていくわけではない。お金持ちには、必ずといってよいほど、メンターがいるものだ。
私自身、こうして出版のお仕事をさせていただくようになったきっかけは、大学院時代の先輩のおかげである。現在、執筆だけでなくセミナーや講演などで活躍されている心理学者の伊東明さんは、私の先輩にあたる人であるが、伊東さんから「一緒に本を書いてみようよ」と持ちかけられたのが、私が作家になれた理由である。
出版社にコネもなく、原稿を持ち込むだけの勇気もない私には、伊東さんというメンターがいてくれたことが、本当に幸いであった。伊東さんが企画書を書いてくれたり、いくつもの出版社に持ち込んだりしてくれたおかげで今の私がある。いくら感謝してもしたりないほど、伊東さんには感謝している。
自分ひとりでどうにかしようというのは、やはり現実的にムリがある。だれかに引っ張り上げてもらうことは、別にズルいことでも何でもないし、それが普通のやり方なのであるから、どんどん人の助けを借りよう。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。アンギルド代表取締役。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。
主な著書に、『モテる! 心理戦術』『好きな人のホンネがわかる恋愛術』『頭のいい人だけが知っている「ちょっとした成功習慣」』『すごい!ホメ方』『内藤式「ザ・検索術」』『自分偽装術<セルフ・カモフラージュ>』『絶対使える!悪魔の心理テクニック』『もらった名刺は、全部捨てろ!』『賛成と反対の法則』『勝てる! ギャンブル心理作戦』『感動させる技術』『イラッとしたときのとっさの対応術』『合コンで座るべき場所はどこか?』『なぜ、島田紳助は人の心をつかむのが上手いのか?』『女の「終電なくなっちゃった」はウソである』『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』『「最強の男」になる心理術』『「不安」があなたを強くする』『交渉を成功させたいなら、赤いネクタイを身につけろ! 』『気づかれずに相手を動かす心の誘導術』『もっとすごい!ホメ方』『【図解】読心術<プロファイリング>トレーニング』『すごい!モテ方』『なぜ、マツコ・デラックスは言いたい放題でも人に好かれるのか?』『ワンピース超研究!人気キャラクターに学ぶ心理テクニック』『ヤバすぎる心理学』『すぐにヤラせてくれる女、絶対にヤラせてくれない女』『「すぐ他人に流されてしまう自分」がラクになる本』『心理学者しか知らない すごい!営業』『半沢直樹「倍返し」の心理学』(以上、廣済堂出版)など多数。著書は200冊以上、累計400万部を超えている。※画像をクリックするとAmazonに飛びます