本記事は、藤本壱氏の著書『株初心者も資産が増やせる高配当株投資』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。

チャート,疑問
(画像=takasu/stock.adobe.com)

高配当株とはどんな銘柄のこと?

高配当株とはどのような銘柄でしょうか? この点についてまとめてみます。

「高配当株」とは?

「高配当株」という用語には、厳密な定義はありません。一般的には「配当利回りが高い銘柄」のことです。配当利回りについてはこの後で解説しますが、平たくいえば「株価の割に配当が高く、配当でも売却益でも利益を狙える銘柄」を指します。

ただ、単に配当利回りが高ければ良いわけではなく、以下のような条件を極力満たすような銘柄を高配当株と考えます。詳細については、この後で順に解説していきます。


(1)現状の配当利回り(今期予想値)が高い(3%以上)か、今後配当が増えて将来的に配当利回りが高くなりそうである
(2)業績(売上や利益)が順調に伸びていて、配当だけでなく値上がり益も狙える
(3)業績・財務面から見て割安である(PERやPBRが市場平均より低い)
(4)長期的に増配傾向である、または長期的に減配していない
(5)自社株買いや株主優待など株主還元に積極的である
(6)内部留保や現預金が多く、業績予想の進捗率が高いなど、増配の可能性が高い

■ 金利とよく似た「配当利回り」を見る

高配当株は、大まかにいえば「配当利回りが高い銘柄」のことです。

「利回り」とは、金融商品を保有し続けたときに、一定の期間で元本に対してどの程度の利益が得られるかを表す値(投資利回り)のことです。通常は年単位で利回りを計算し、単位はパーセントで表します。

例えば「年利回りが1%」の金融商品の場合、それを1年間保有していると、元本の1%分の利益が得られます。100万円を投資したとすれば、1年間で100万円×1%=1万円を得られることになります。

株の場合、保有し続けると定期的に配当をもらえます。株式投資の場合の元本は株価にあたるので、株の配当利回りは、1株あたりの配当を現在の株価で割って求めます。

例えば、ある銘柄の現在の株価が500円で、配当が10円だとします。その銘柄を1年間保有すると、この銘柄の配当利回りは以下のようになります。

配当利回り=10円÷500円=0.02=2%

なお、配当利回りで投資先を選ぶ際には「予想配当利回り」を使います。予想配当利回りは、今後もらえる予定の配当を現在の株価で割って求めます。特に断りのない限り、配当利回りは「今期の予想配当利回り」のことをさします。すでに確定した(支払い済みの)配当から求められる配当利回りは、「実績配当利回り」と呼びます。

■ 配当利回りが高い銘柄を探す

配当利回りが高い銘柄を選んで、それらに投資していくというのが、基本的な投資スタイルになります。

ネット証券などの投資情報サービスを使って配当利回りのランキングを見れば、高配当株を簡単に探せます。例えば、Yahoo!ファイナンスで高配当株のランキングを見るには、次のようになります(図1-2)。

提供:ゴールデン・チャート社
(画像=株初心者も資産が増やせる高配当株投資)

①Yahoo!ファイナンスの「株式」のページに接続

②ページ上端のメニューで「株式ランキング」をクリック

③ページ左端のメニューで「配当利回り(会社予想)」をクリック

■ 配当性向も重要指標

配当の原資は利益(厳密にいえば、税引き後当期純利益)です。ただ、通常の企業は、利益をすべて配当に回すことはありません。

利益の一部を株主に配当し、それ以外の部分は将来に向けて設備投資をしたり、不測の事態に対する備えとして内部留保するのが一般的です。

利益から配当にどれだけ回したかを表す指標として、配当性向があります。以下の式で求められます。

配当性向=1株あたり配当÷1株あたり当期純利益

例えば、1株あたり配当が5円で、1株あたり当期純利益が10円の銘柄の場合、配当性向は、5円÷10円=0.5=50%となります。

個々の銘柄の配当性向は、その企業の方針によって異なり、高いところもあれば低いところもあります。基本的に、成長中の企業は利益をあまり配当しないで(=配当性向が低い)将来への投資に回す方が良いとされ、逆に、成熟企業であまり成長が望めないのであれば、配当性向を高めて株主に利益を還元すべきです。

ちなみに、日本の上場企業の配当性向は、平均すると30%台半ば程度です(図1-3)。

提供:ゴールデン・チャート社
(画像=株初心者も資産が増やせる高配当株投資)

また、株主を重視する流れが強まっている影響で、「配当性向は○○%を基準とする」など、明確に宣言する企業が増えつつあります。

■ 配当に株主優待も加味してみる

高配当株に投資する際に、配当だけでなく「株主優待」も加味することが考えられます。

● 個人株主を増やしたい

日本の企業では、1980年代ごろまでは「株式の持ち合い」がよく行われていて、関連企業同士、あるいは企業と銀行の間で株を持ち合ったりして、他人から経営に口出しされるのを防いだりしていました。

しかし、1990年代以降のバブル崩壊による企業の業績の悪化や、2001年の「銀行等の株式等の保有の制限に関する法律」の公布などにより、持ち合い解消が進みました。

また、株式持ち合いは資金を無駄に眠らせることにつながります。外国人投資家が増えたことなどによって、企業は資金の有効活用をより求められるようになり、これも持ち合い解消につながりました。

ただ、外国人投資家が多すぎると、企業買収のリスクが高まったり、経営に口出しされるなど、不都合が生じることもあります。そこで、企業は個人株主を増やす流れになっています。

● 株主優待で個人投資家を誘引する

配当を増やすのも個人投資家を増やす策の1つですが、他にも株主優待を導入する企業が増えてきました。株主優待は、株主に対して商品やサービスなどを提供するものです。

消費者向けの事業を営む企業では、自社の製品やサービスを株主優待にすることが多く、例えば食品メーカーだと、自社の商品などを株主優待品として提供しています。一方、企業向けの事業が中心の企業の場合は、一般的な商品券などの場合が多いです(表1-1)。

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(画像=株初心者も資産が増やせる高配当株投資)

● 株主優待を現金換算した場合の利回り(株主優待利回り)も考慮に入れる

例えば、株主優待が1年あたり3,000円分の商品券で、株主優待を得るための最低投資金額が10万円だとします。この場合、株主優待の利回りは以下の通り3%になります。

株主優待利回り=3,000円÷10万円=0.03=3%

株主優待を含めた利回りが高い銘柄もあります。例えば、ビックカメラ(3048)は、100株保有で、2月末に2,000円分、8月末に1,000円分の株主優待券がもらえます。さらに、2月末/8月末の基準日に3回以上連続して株主であり続けると、8月末の株主優待が1,000円追加されます。

2021年11月12日時点の株価で計算すると、予想配当利回りは年1.48%です。しかし株主優待を加味すると、保有期間による優待追加がない場合(3,000円相当)で年4.44%、保有期間による優待(1.000円相当)を加味すると、年5.42%になります。

また、株主優待によっては、ネットオークションで転売し現金化できるものもあります。

● 株主優待は配当のおまけと割り切る

銘柄によっては、株主優待の利回りがかなり高いものがあります。ただ、そのような銘柄の中には、業績や財務があまり良くないような銘柄も見られます。そういった銘柄の場合、業績や財務がさらに悪くなると、株主優待が縮小(あるいは廃止)されることもあり得ます。そうなると、株主優待目当てに買っていた個人投資家が一斉に売りに回り、株価が急落する恐れがあります。

また、配当は持ち株数に比例しますが、株主優待は持ち株数には比例しませんので、同じ銘柄を2単元以上保有した場合、株主優待の利回りが下がることが出てきます。

したがって、株主優待は配当のプラスアルファ程度にとらえて、あまり期待しすぎない方が良いでしょう。

株初心者も資産が増やせる高配当株投資
藤本壱
1969年兵庫県伊丹市生まれ。神戸大学工学部電子工学科を卒業後、パッケージソフトメーカーの開発職を経て、現在はパソコンおよびマネー関係の執筆活動のほか、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)としても活動している。個人投資家としては、早くからパソコンとデータを駆使した詳細な分析で株式投資を実践している。
【最近の投資・マネー関連の著書】
「手堅く短期で効率よく稼ぐ 株カラ売り5つの戦術」「高配当・連続増配株投資の教科書」「実戦相場で勝つ! 株価チャート攻略ガイド」「実戦相場で勝つ! FXチャート攻略ガイド」(以上、自由国民社)、「Excelでここまでできる! 株式投資の分析&シミュレーション完全入門」(技術評論社)、「プロが教える! 金融商品の数値・計算メカニズム」(近代セールス社)などがある。

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