本記事は、藤本壱氏の著書『株初心者も資産が増やせる高配当株投資』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
連続増配銘柄は長期保有に最適
高配当株投資をする上で、今の配当利回りの高さだけでなく、「株主還元に熱心な銘柄を買う」という点もポイントです。
■ 連続増配を続ける花王
株主還元への熱心さの指標の1つとして、「増配を続けているかどうか」という点があります。日本の株式市場には多数の銘柄がありますが、連続増配を続けている企業が多いかというと、残念ながらそうではありません。逆にいえば、そのような企業は大変優良で、株主還元に熱心だと考えられます。
日本の上場企業の中で、連続増配を最も続けている企業は、花王(4452)です。執筆時点では、1990年から2020年まで31期連続増配を達成し、2021年12月期も増配の予想を出しています。1990年の配当は1株あたり7.1円でしたが、2020年では140円になっていて、19倍以上に増えました(図1-13)。
花王は売上が伸びてきていますが、それとともにコストの削減も進んでいて、売上の伸び以上に利益が伸びています。2020年はコロナ禍の影響で減益となりましたが、連続配当を続けることに成功しています。
■ 連続増配銘柄は利回りが長期で上昇
増配を続けている銘柄を長期保有すると、購入時の株価と比較した際の配当利回りが長期的に上がっていくことになります。
例えば、今の株価が1,000円で、年10円の配当を出している銘柄があるとします。この銘柄の現時点での配当利回りは、10円÷1,000円=0.01=1%で、さほど高いとはいえません。
しかし、この銘柄が増配を続けて、ある年に50円の配当を出したとします。この場合、購入時の株価で配当利回りを求めれば、50円÷1,000円=0.05=5%で、かなり高くなります。
このように、増配を続けている銘柄では、今の配当利回りがさほど高くなくても、長期保有することで配当利回りが上がっていきます。また、それだけ増配できるのであれば、業績も長期的に好調で株価も上がり、値上がり益も得られるはずです。
ちなみに、先ほどの花王は、1990年当時の株価は1,000円~1,200円程度で、配当利回りは1%に満たない状態でした。しかし、2020年12月期の配当は140円で、1990年に買って保有し続けていたとすれば、執筆時点の配当利回りは11%を超えています。株価も一時9,000円を超え、9~10倍程度に値上がりしています。
2020年はコロナ禍の影響により、6月から下落基調で約3,000円程下がりましたが、そう遠くないうちには回復してくるものと思われます。
■ 長期にわたって連続増配している銘柄を選ぶ
花王を筆頭に、連続増配のランキングは、表1-3のようになっています。23期連続増配のSPK(7466)と21期連続増配のユー・エス・エス(4732)は、どちらも財務的に良い企業です。SPKは利益の割に株価がさほど高くなく、執筆時点の配当利回りが2%を超えています。一方、ユー・エス・エスは売上に対する営業利益の率が50%に近く、非常に高収益です。
また、19期連続増配のKDDI(9433)は、執筆時点で配当利回りが約3.6%あります。今の調子で増配を続ければ、現時点の株価と比較したときの配当利回りが、数年後には5%程度に届くと思われます。
■ 「長期にわたって減配していない銘柄」も投資対象
増配を続ける銘柄は理想的ですが、数が限られています。そこで、「長期にわたって減配していない銘柄」にも投資対象を広げることが考えられます。
日本の上場企業では、利益の増減に関係なく、毎年安定した配当を出すところもあります。また、毎年ではないものの、徐々に配当を増やしているような企業もあります。
例えば、伊藤忠商事のグループ企業で、LPガスなど各種のガス製品や石油製品を手掛けるエネルギー商社の伊藤忠エネクス(8133)は、2021年まで8期連続で増配しており、徐々に配当を増やしてきています(図1-14)。コロナ禍の影響により、2020年・2021年3月期の売上高は大きく下がったものの、利益は減らすことなく微増しています。今期配当は減配予想ではあるものの、大きな減配とはなっておらず、配当利回りも執筆時点で4.6%と高めです。
株価も、アベノミクスに乗って大きく上昇した2015年以降は、700円台前半~1,200円直下で上下する動きになっています(図1-15)。
このように、株価の動きが安定し、配当を徐々に引き上げていて、かつ配当利回りが高い銘柄であれば、長期的に保有して配当で地道に稼いでいくのに適しているといえます。
そのような銘柄の例として、表1-4のようなものがあります。
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