IT技術で仕事はどう変わっている?業界別の具体例

AIやIoTなどの活用で、世の中の仕事はどう変わっているのだろうか。ここからは話題やトレンドになっているものを中心に、IT技術の具体例を業界別に紹介しよう。

飲食業界/非接触オーダー・非接触決済がトレンドに

飲食業界では、非接触オーダー・非接触決済に関するツールが注目されている。具体例としては、席からセルフオーダーができる専用端末や、キャッシュレス決済に対応したレジが分かりやすい。

また、新型コロナウイルスが蔓延した影響で、ウェブ上で受注するフードデリバリーサービスを採用する店舗も増えている。飲食業界では「フードロス削減」も注目のテーマであり、AIによる来客予測システムや、仕入れコストを管理するツールなどの導入例が見られる。

製造業界/生産プロセスに加えて、管理業務や製品テストもデジタル化

大手の自動車メーカーをはじめ、製造業界では世界的にデジタル化が進められている。生産を代行するロボットの他、生産管理や倉庫管理のシステムなど、さまざまな工程にデジタル技術が導入されている。

また、最近ではシミュレーションの精度やコストを改善するために、バーチャル空間でテストを行うような事例も増えてきた。

医療業界/遠隔診療やIoMTで医療サービスを拡充

医療業界ではビデオチャット機能などを活用し、遠隔診療をするケースが増えている。他にもオンライン予約や決済システムなど、ウェブ上で問診から支払いまでを完結できるような仕組みが整いつつある。

また、ITシステムと医療機器をつなぐ「IoMT(Internet of Medical Things)」も、医療業界で注目されているテーマだ。IoMTが実現すると、医療データをリアルタイムで収集・分析・共有できるため、医療サービスのさらなる拡充が予想される。

建設業界/現場以外のIT化も進んでいる

建設業界と聞くと、現場のIT化をイメージするだろう。確かにロボットやドローンなどはあるが、実は社内での申請・稟議をデジタル化する「ワークフローシステム」も注目されている。

また、図面を立体的な3Dデータにするための「BIM」や「CIM」も、建設業界で活用されているツールだ。現場だけではなく、社内全体でのIT化に取り組むことで、経営体質は大きく改善すると考えられる。

中小企業のIT化では人材教育やコストが課題に

IT化は業務効率化や生産性アップに役立つが、人材やコスト面の問題で施策が進まない企業も多いだろう。特にITリテラシーが乏しい企業は、はっきりとした導入効果が分からない影響で、デジタル技術を敬遠することもある。

正しい方向性でIT化を進めるには、まずは現状を理解することが重要だ。ここからは「人材不足」と「導入コスト」の観点から、中小企業が直面しやすい課題や現状を解説する。

IT化に求められる人材と現状

経済産業省の「IT人材育成の状況等について」では、IT人材の供給は2019年から減少傾向に転じ、2030年には最大で79万人が不足すると予想されている。中でも人材不足が深刻な分野は、「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」の3つだ。

IT人材育成の状況等について
(引用:経済産業省「IT人材育成の状況等について」)

導入されるデジタル技術が進化する一方で、採用市場ではより高度な知識・スキルを備えたIT人材が求められるようになった。供給が限られている現状を踏まえると、人材獲得競争はさらに激化する可能性が高いため、中小企業は苦境に立たされるかもしれない。

コストを抑えながら高度なIT人材を獲得するには、自社で育成環境を整えるといった工夫が必要になる。

初期コストがかかる一方、コスト削減にもつながるIT化

デジタル技術を導入すると、中小企業でも数百万円単位のコストがかかることもある。さらにシステムの運用コストも生じるため、IT化に踏み切れない経営者は多いはずだ。

ただし、業務効率化によってコスト削減を実現すれば、初期コスト・運用コストは回収できる可能性がある。デジタル技術でどのようなコストを抑えられるのか、いくつか具体例を紹介しよう。

<コスト削減につながるIT化の例>
・ビデオチャットを導入し、会議の交通費や接待費を削減する
・紙の資料をデータ化し、印刷コストを削減する
・単純作業をロボットなどで自動化し、人件費を削減する
・生産管理システムを導入し、適切な在庫調整を行う

上記のような施策に取り組むと、数年後には投資したコストを回収できるかもしれない。また、無料のビデオチャットやクラウドのように、低予算で導入できるITツールもある。

初期コストは気になるかもしれないが、将来的に削減できるコストも加味して計画を考えてみよう。