本記事は、毛利英昭氏の著書『だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
明確な目標にベクトルを合わせる
向かうゴールをはっきりさせる
シドニー五輪とアテネ五輪で日本女子ソフトボールチームにメダルをもたらした宇津木妙子監督は、「ソフトボールはチームのスポーツである。一人ひとりが勝手なことをやっていては、どんなに個々の能力が高いチームであってもチームとして機能しなくなってしまう。逆に個々の能力はさほど高くなくても、個性をうまく引き出し、絡ませ、チームとしての総合力として昇華させることができれば、個々の能力で上回るチームに勝つことは可能である」と言いました。組織も同じだ思いますが、組織が一丸となって結束し行動するには、チームの一人ひとりを動機付ける目標が明確になっている必要があります。
ジョージ秋山の『浮世雲』というコミックに「富士山に登ろうと心に決めた人だけが富士山に登ったんです。散歩のついでに登った人は1人もいません」という名文句がありますが、仕事には必ず目標があり、常にその目標に向かってアクションを起こすことが大切なのです。そして、目標の達成に喜びや興奮を感じさせることが、チームを動機付け、動かすための原則なのです。
しかし、闇雲に目標だけを与えても人は動きません。その目標を達成することの意義や成果を明らかにし、やるだけの〝値打ち〟、つまり、やりがいを持たせることが大切なのです。また、その目標は具体的なものであり、チームの全員が理解し共有していることが重要です。
そしてまた、各自が将来自分のとる行動を表明し、それを確実に実行することを約束する必要があります。これがチーム全体で共有されて初めて、強いチームになるのです。
組織目標が明確でなく、それぞれが別のゴールを目指しているようなチームは、組織的能力を発揮することはできません。
従って、リーダーとして重要な任務は、目標を高く掲げ、それを達成することの意義や喜びを教えてあげることにほかなりません。
ところが残念ながら、月次損益や日割予算を作り、それを配っただけで目標を共有したと思っている人が多いようです。目標を共有するとは、そういうことではありません。仕事をするチームの全員が、組織目標を自分の目標として受け入れ、その実行を約束し、それを動機付け、要因として仕事に励んで初めて共有された目標となるのです。
方針をはっきり示し、目標を決め計画させる
上司が部下を叱っているとき、「俺はそんなことを言った覚えはない」とか、「もっとよく考えてみろよ」という言葉を口にすることがあります。確かにその通りだと思う反面、上司が方針を明確に示していれば、もっと違った結果になっていたのにと思うことも多いものです。
リーダーが方針を明確にしておくと部下の判断基準がはっきりするので、リーダーも力強く行動できるし、従業員も「こんなことしたら、あんなことしたら」と悩むことなく、その方針に照らして判断できるようになります。すると従業員からも、「うちの上司はしっかり一本筋の通った人だ」と思われるようになり、頼りにされたり尊敬されるようにもなるでしょう。
さて、方針を明確に示したら、今度は具体的な組織目標を設定し、そのために何をどうするかという計画を作ります。
「夢に日付を入れる」という言葉があります。方針を示す人は多いのですが、それを具体的な計画に落とし込める人は意外と少ないものです。目標を達成するためには、夢に日付を入れるように計画し、行動に移さなくてはなりません。
目標と計画とはセットです。どちらが欠けてもいけません。富士山を登るのに、一直線にまっすぐ登って行ける人はまずいないでしょう。その労力や危険度を考えれば得策ではありません。つづら折りの登山道を何度も何度も折り返して、3合目から5合目、5合目から8合目と目標を定めて山頂を目指すはずです。つまり、富士山頂が最終目標で、5合目、8合目が中間目標、そしてつづら折りの折り返し地点もまた、目指す過程での目標となります。
目標ができれば、そこへどうやって到達しようかと考えるはずです。それが計画です。経営も同じで、夢に日付を入れるには、節目節目の目標設定と道筋をいかに作るかが大切になります。リーダーは部下に、いつまでにここまでのことをやろうと具体的な目標を適時与えていかなければならないのです。
ITコーディネータ/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー。
東芝グループのコンサルティング会社で業務改革やシステム構築支援、社員教育などの分野で16年間勤務したのち独立。
株式会社アール・アイ・シーを設立。小売、外食業界や中小製造業、ITベンダーのコンサルティングと社員教育などの分野で活動。現在は小売・外食業界の専門誌も発行している。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。