本記事は、毛利英昭氏の著書『だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

コーチング技術を学び、人の育成に活かす

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スターバックスでは人と人とのコミュニケーション能力を高めるために、あらゆる場面においてコーチング技術を活用しています。コーチングとは、相手の話をよく聴き、理解することから始め、相手が気付いていない潜在的に備えている能力を引き出し、相手を信じて任せることで、目標の達成に向けて動機付けしていくコミュニケーションスキルのことです。

スターバックスでは、ファシリテーターやピアコーチに早い段階からコーチングの考え方を教え、技術を体験させ、社内でコーチを育成しています。彼らは、理念や価値観に共感する人材を育て、組織へのコミットメントを高めるという大きな役割を担っています。

コミットメントとは、「個人が組織に対して一体化している程度」のことです。スターバックスでは会社が目指すゴールや価値観に共感する人を採用し育て、スターバックスという組織の一員であることを意識させ、目標に対しても深く関与させることでコミットメントを高めています。

ファシリテーターは単に知識やオペレーション技術を教えるのではなく、それぞれの意識に訴えかけ、心に火をともすようにしています。これは非常に難しい仕事ですが、スターバックスではコーチングの考え方を企業文化の1つとして取り入れ、人間同士の信頼関係づくりとコミュニケーションを高めることに成功しています。

人が持っている能力は、われわれが自覚している以上に大きなものです。実際に使っている能力を顕在能力、使っていない能力を潜在能力といいますが、よく氷山に例えられるように8割近くの能力はわれわれの中で眠ったままだといいます。

ところがわれわれは、潜在能力はおろか、顕在能力さえ満足に活かしていません。「彼はやればできるのにもったいない」という言葉をよく耳にするように、本来備えている能力を満足に発揮できずにいる人は実に多いのです。

なぜ潜在能力は使われずに眠ったままなのでしょうか。なぜ自由にこの能力を発揮することができないのでしょうか。

まず、自分自身で「どうせできっこない」とか「やるだけ無駄だ」と決め付けてしまい、チャレンジ精神を失っていることが1つの理由として考えられます。この「できっこない」という先入観が能力開発の妨げとなって、潜在能力は永遠に顕在化することなく眠り続けることになるのです。

例えばこのような話があります。小さい頃からロープで杭につながれて育ってきたサーカスの象がいるとしましょう。小さい頃は、何とかここから逃げようと、杭を引き抜こうとしました。しかし、生まれたばかりの象には、杭を抜いて逃げ出すほどのパワーがありません。おそらく何度も何度もチャンレンジしたでしょうが、それでも抜けない杭を前に、象は逃げることを諦めてしまいました。それから何年も経ち象は大きく育ちましたが、今も同じ杭につながれています。

本当は、象のパワーならば、その杭を抜いて逃げ出すのはたやすいことです。しかし、いくら頑張っても抜けないと思い込んでしまった象は、二度と杭を抜こうとは考えません。

人間は象よりはるかに賢いですが、象と同じように思い込み、潜在意識の中で不可能だという気持ちがインプットされてしまうと、可能なことも不可能にしてしまうといいます。

また、上司や仲間がその人の持ち味や強みに目を向けず、十分相手を理解せずに「あいつはダメだ」「どうせできないに決まってる」と決め付けてしまうこともあります。このようなネガティブな言葉のことをキラーフレーズといいます。これでは持っている力を発揮できるはずもありません。では、どうしたらこの眠った能力を引き出すことができるのでしょう。その1つの答えが、スターバックスが人材育成の要とするコーチング技術にあります。

だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書
毛利英昭
株式会社アール・アイ・シー 代表取締役
ITコーディネータ/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー。
東芝グループのコンサルティング会社で業務改革やシステム構築支援、社員教育などの分野で16年間勤務したのち独立。
株式会社アール・アイ・シーを設立。小売、外食業界や中小製造業、ITベンダーのコンサルティングと社員教育などの分野で活動。現在は小売・外食業界の専門誌も発行している。

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