本記事は、毛利英昭氏の著書『だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ミッションを最上位に掲げるマネジメント

マネジメントサイクルで経営を効率化 うまく回すための5つのポイント
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ミッションに込められた思い

ハワード・シュルツは、「ミッションステートメントは、オフィスの壁を飾る記念品でも、単に希望を書き連ねたリストでもない。それはわれわれの信条を具体的な形で示したものであり、われわれが共有すべき指導理念の基礎となるものである」と語っています。スターバックスは、このミッションステートメントに刻まれた理念と価値観を最上位に掲げ、経営戦略や組織目標を定め、それを実現するための短期的な目標やアクションプランへと展開し、体系的に組織全体をマネジメントしています。すなわち、ミッション・マネジメントを実践する企業なのです。

実際、ミッションステートメントは、人材マネジメントや日常の仕事の中にも必要不可欠な存在としてパートナーの心にしっかりと刻み込まれています。

ミッションステートメントの中で特筆すべきは、(1)と(2)が「人」、それも従業員のために書かれた項目になっていることです。スターバックスの経営姿勢を最も端的に表現していて、「まず人がいてそれからビジネスが始まるんだ」ということをはっきりさせているのです。

続いてミッションステートメントは(3)「提供する商品」を語り、ハワード・シュルツがイタリアのエスプレッソバーで受けた感動を自分たちのビジネスで表現するために、品質に対して徹底的にこだわり、常に最高品質のレベルを目指し維持することを宣言しています。

そして、(4)「顧客の満足」と(5)「地域社会と環境への貢献」をうたい、最後に(6)「収益性」に言及しています。

もう少し詳しく見てみましょう。

(1)「お互いに尊敬と威厳を持って接し、働きやすい環境をつくる」という言葉によって、スターバックスは「ピープルビジネス」なんだということを明確にしています。

つまり、お客様に価値を提供する前に、まず生き生きと働くことのできる環境がなければ、最高のコーヒーを提供できないし、お客様に喜びや感動を与えることもできないことをはっきりとさせ、〝人が大切なんだ、働く環境が大切なんだ〟ということを明確に打ち出しています。

(2)の「多様性を受け入れる」とは、多民族国家であるアメリカならではの発想です。お客様は多様な考えや習慣を持っており、それを当たり前のこととして受け入れ、顧客や従業員の多様性や変化に対応できるように、柔軟性を大切にしようということです。

スターバックスには、接客サービスに関するマニュアルがありません。このことも、多様性や変化へ柔軟に対処する方法の1つの表れです。

ちなみに、多様性をダイバーシティといいますが、最近日本の多くの企業でもダイバーシティプログラムを作り多様性を受け入れ対応していこうとする動きが進んでいます。顧客に対してだけでなく、多様な考え方や意識を持つ従業員を尊重し、その個人の主義主張を積極的に受け入れ対応していこうと考え始めているのですが、スターバックスでは早くからそれを取り入れています。

次に、(3)「コーヒーの品質」について、ハワード・シュルツは著書『スターバックス成功物語』の中で「顧客の要求するものを提供するだけでは駄目なのだ。顧客の知らない物や最高級品を提供すれば、顧客の味覚が磨かれるまで多少時間がかかるかもしれない。だが、顧客に発見の喜びと興奮を与え、ロイヤルティを確立することができるのだ。優れた商品を提供しさえすれば、たとえ時間はかかっても顧客は必ずそれを選択するようになる」と語っています。

また、「スターバックスの使命は、最高級のコーヒーの世界一の供給者になること」とも述べていますが、それだけでは食料品雑貨店となんら変わらないとして、(4)にあるように、「顧客サービス」について言及しています。それも単にサービスということではなく、〝顧客との絆〟を作ることが大事なんだということをうたっています。

さて、ここまでできる会社になって初めて、スターバックスは社会への貢献ということを考えられるようになると、(5)「地域社会や環境への取り組み」を積極的に行っていこうと宣言しています。

そして最後に初めて(6)「会社の利益」について語り、企業は永続していく社会的責任があり、永遠に続いていく存在でなくてはならないというゴーイングコンサーン(Going Concern)という考え方を示しているのです。

だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書
毛利英昭
株式会社アール・アイ・シー 代表取締役
ITコーディネータ/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー。
東芝グループのコンサルティング会社で業務改革やシステム構築支援、社員教育などの分野で16年間勤務したのち独立。
株式会社アール・アイ・シーを設立。小売、外食業界や中小製造業、ITベンダーのコンサルティングと社員教育などの分野で活動。現在は小売・外食業界の専門誌も発行している。

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