この記事は2022年10月24日に「第一生命経済研究所」で公開された「2023年・夏のボーナス予測」を一部編集し、転載したものです。
民間企業の2023年夏のボーナス支給額を前年比+2.7%と予想する。22年夏の前年比+2.4%に続いて2年連続で高い伸びになるだろう。
22年度の経常利益は前年比+7.9%と増益見込みとなっている(日銀短観ベース)。原材料価格の高騰は下押し要因となったものの、価格転嫁が進んだこともあって企業業績は底堅く推移している。利益の水準も高く、従業員への還元余力は存在する。加えて、歴史的な物価高への配慮もボーナスの引き上げに寄与したものと思われる。物価高を理由に春闘賃上げ率は高い伸びになったとみられるが、ボーナスについてもこうした配慮が働いた可能性が高い。実際、春闘においては、月例給与の引き上げのみならず、同時に交渉される一時金においても増額回答が目立っており、その理由として物価高を挙げる企業も多かった。月例給与の増加が支給月数の増加と相まってボーナス増に繋がる面もあり、23年のボーナスも高い伸びになる可能性が高い。
23年春闘では賃上げ率が3.70%(連合調査、第3回)と、ベア2%に迫る高い伸びとなっている。元々、春闘賃上げ率は改善が予想されていたものの、事前の予想を大きく上回る賃上げが実現したとみられる。こうした賃上げを受け、今後、所定内給与の伸びが高まることが予想されることに加え、ボーナスの増加も賃金の押し上げに寄与することになる。足元でも物価上昇圧力は強い状態が続いており、23年前半も消費者物価指数は前年比+3%程度での高止まりが予想されるが、こうした賃金上昇が物価高による負担増を和らげることが期待される。物価高のなかでも消費の失速は避けられる可能性が高まっている。
今後の注目は賃金上昇の持続性だ。23年春闘では高い賃上げが実現し、ボーナスも増加が見込まれるものの、この理由としては社会問題化した物価高へ配慮という要因も大きかった。もっとも、24年の春闘交渉時には物価高もある程度の落ち着きを見せている可能性が高く、24年春闘では物価高への配慮による押し上げは期待薄だろう。また、海外経済の減速や円安修正が予想されるなか、23年の収益環境は22年対比で厳しいものになるとみられ、業績改善による賃上げ圧力が高まることも見込み難い。持続的な賃金上昇に向けてのハードルは未だ高い。