リカーリングのデメリット

リカーリングには、メリットだけでなく以下のような3つのデメリットもある。

売り上げ予測を立てにくい

頻繁、かつ継続的に収益が望めるとはいえ、顧客の利用状況によって次回までの売り上げの時期や数量は変わり、見込みを立てにくい場合がある。このことは、売り切り型のビジネスと同様だが、サブスクに比べると売り上げ予測がしにくい点はデメリットだ。またある程度の売り上げを見込んでいても顧客が競合他社や競合製品に移ってしまい、業績の下方修正を余儀なくされる可能性も考えられる。

このような事態を避けるためには、売り上げ状況を細かく分析し、販促活動や商品・サービスの定期的なリニューアルなどに努めることが大切だ。

損益分岐点に到達しないリスクがある

先に紹介した顧客に対するメリットの裏返しになるが、あらかじめ収益見込みを分散し、低価格で顧客に提供することは投資を回収しきれないリスクにつながりかねない。リカーリングでも売り切り型でも、製品を製造・生産し、販売するには相当の初期投資が求められる。しかしあらかじめ収益見込みを分散するということは、投資の回収期間を長めに設定することになる。

またリカーリングの種類によっては、定期的な梱包・配送費用、製品管理やメンテナンスに伴う人件費など継続的な費用も必要だ。そのため「投資回収期間の壁」は、売り切り型よりもリカーリングのほうが高めになってしまう。回収しきらないうちに顧客が離れてしまうと黒字化は難しい。場合によっては、財務体質が弱まりリカーリングサービス自体を止めなければならなくなる可能性も考えられる。

そうなると継続して利用してくれていた顧客にもダメージを与えることになり、大きな顧客損失リスクとなるだろう。顧客が製品そのもの以外の付加価値を感じてくれるようサービス向上に努め、顧客離れを防ぐ対策が必要だ。

売り上げ管理が煩雑

リカーリングビジネスで従量制の料金体系にしている場合、毎月の請求額の計算や入金管理などが煩雑となる。加えて料金体系・プランが複数あると売り上げ請求にかかる事務は、大きな負荷となるだろう。売り上げ管理が人件費の増加につながるようではデメリットとなりかねないため、売り上げ管理のシステム化やアウトソーシングなど、コスト削減対策も検討が必要だろう。

リカーリングビジネスの事例

冒頭でリカーリングの代表例として古くからある置き薬のビジネスモデルを紹介した。近年でもさまざまな業界でリカーリングビジネスを導入する企業も増えてきている。以下でリカーリングビジネス導入事例をいくつか紹介しよう。

キリン「ホームタップ」

「ホームタップ」は、キリンビールが提供するリカーリングサービスである。専用ビールサーバーを無料でレンタルし、定期的に工場からビールを直送するものだ。専用ビールサーバーを使うことで、自宅にいながらレストランで注文したようなまろやか、かつ心地よい口当たりの生ビールを楽しめる。

料金は月額固定。直送するビールのボトル数や頻度は決まっているため、サブスクのシステムに似ているが、配送をスキップしたり、追加したりできるなど自由度が高い。

メニコン「メルスプラン」

「メルスプラン」は、コンタクトレンズ大手のメニコンが提供している会員制・定額制のコンタクトサービスだ。「まだ使えそう」「もったいない」という理由で決められた使用期間を過ぎた使用や「コンタクトが高い」という理由で低質・低価のコンタクト使用による目への障害を防ぐ目的でリカーリングビジネスモデルとして導入された。

料金は、使用するレンズの種類によって異なるが、いずれも入会金を支払い、その後は定期的に定額料金を支払うシステムだ。なおライフスタイルや視力の変化に応じて、眼科医の判断のもと違うタイプのレンズに交換することも可能。それに伴い月額料金が変更となる場合がある。

パナソニック「ニコボ」

「ニコボ」は、特に何もしてくれないが、一緒にいるだけでちょっとした笑顔にしてくれるというロボットだ。ニコボと「一緒に暮らす」というのが製品コンセプトであり、購入者は本体を購入したあともニコボを成長させるための費用を継続的に支払い続ける。継続費用は、プランごとに定額となっているが、別途ニコボの調子が悪いときの治療費やニコボドッグ費用なども設定。

継続的な収益と不定期の収益をうまく組み合わせている例だ。