この記事は2023年5月26日に「第一生命経済研究所」で公開された「都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2023/5)」を一部編集し、転載したものです。


世界的なインフレが続く時代!インフレに強い資産運用とその理由とは?
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5月も基調的インフレ率は加速方向

以前のレポート(*1) で試算した東京都区部版の基調的インフレ率3指標について、本日公表の5月都区部CPIを用いて計算した。刈込平均値(全国ウェイト換算)は4月:+3.0%→5月:+3.0%、加重中央値(全国ウェイト換算)は4月:+0.8%→5月:+1.1%、最頻値は4月:+3.5%→5月:+3.8%となった(いずれも前年比)。総合指数(4月:+3.5%→5月:+3.2%)やコア指数(4月:+3.5%→5月:+3.2%)の上昇率は縮小したが、物価上昇の裾野の広がりから筆者試算値の上昇率は加速する方向にある。

植田日銀総裁は先行きのインフレ率は鈍化する見込みである点から、経済好循環実現のために緩和を継続する姿勢を示している。一方で、基調的なインフレ率、GDPギャップ・賃金・インフレ期待などを重視する姿勢を示しつつ、「見通しの修正が必要になれば速やかに行動したい」とも述べている(5/25のインタビュー)。基調的物価上昇率の加速を受けて政策修正に傾くリスクに目配せが必要な状況と考えられる。

第一生命経済研究所
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*1: Economic Trends「東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算」(2023年5月1日)

【参考文献】

川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 — 景気変動との関係を中心に —」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11 白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12


第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 星野 卓也